目つきの悪い正義っ娘の出る幕がありません。
ちょっと焦ってます(笑)。
鈴木さんが現地入りしてないので仕方ありませんね。
と、言う事にしておきます。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「ヴィジャー!後方にも回り込まれてる!退路を断たれた!」
(むう…まさかここまでヤルとは…既に軍の半数は戦闘不能だ。どうする?)
「ヤバいって!特に5人ヤバいのが居る」
「俺も見た、赤服の奴と赤マント子供のコンビ、夫婦者みたいな戦士と空からメモ見ながら魔法ぶっ放して来る爺さんだろ?」
「そうだ、それだ。特に爺さんは激ヤバだ。嬉々として毎回違う魔法ぶっ放しては1人で悦に入ってるんだ。アレは壊れてる。」
亜人たちの本営は大騒ぎだった。
「ヴィジャー!赤服が降伏を呼びかけてます!」
「何!?」
パンドラズアクターは静かに呼びかける。
「代表者、出て来なさい。これ以上の戦闘はあなた方の全滅を意味します。我々はそれを望みません。最期の慈悲として無条件降伏の機会を与えましょう。」
(パン君カコイイ!)キーノはウットリしている。
「圧勝だな」
「これはもう蹂躙だ」
ガゼフとブレインは剣を仕舞い成り行きを見守る。
「団長、よろしいのですか?根絶やしにしないとまた…」
「イサンドロか。私もカルカ様にそう進言したのだが、種の根絶はいかんと仰られた。説明を受けたが難しくてよく分からんかったのだ。」
副団長は(やっぱりな)と言う顔でそれ以上何も言わなかった。
(もはやこれまで…だな)
「私が代表のヴィジャーだ。我が軍は降伏する。」
亜人軍団は糸の切れた人形の様にその場に崩れ落ちた。
ーーーーー
「お姉ちゃん、レンタルしたアイテムのリストが清書出来たから村長さんちに行って来るね」
「ありがとう。だったらコレ、持って行って貰えるかな。エンリさんから頼まれてたニンニクの甘酢漬け、ンフィーさんが好きなんだって」
「こんにちわー。セリーシアでーす。」
セリーシアがドアを開けて中に入ると奥から
青い顔のエリンが出て来た。
「具合、悪いんですか?」
「ん。ちょっとね。でも大丈夫よ病気じゃないから」
「そう…なんですか。あの、清書したリスト持って来たました。ここに置いておきますね」
「ありがとう。お姉さんにもよろしくね」
「はい、じゃあ私はこれで」
セリーシアはエンリの家から出ると走ってツアレの所へ戻った。
「お姉ちゃん!大変だよ!エンリさんが具合悪そうなの」
「え?エンリちゃんが?他に変わった事は無かった?」
「んーと。病気じゃないって言ってたよ。あと…レモンがいっぱい置いてあった!」
ツアレは暫く考えていたが、ある事を思いついたのか椅子から立ち上がった。
「セリー、また用事を頼んで悪いけど出掛けるからお鍋見ていて頂戴な」そう言って出て行った。
「ツアレです。入りますよ」
ツアレがエンリの家に入って行くと奥でエンリが横になっていた。
「いつから?」ツアレは優しく問いかける。
「少し前からなの」
「ンフィー君には言ったの?」
「まだ。誰にも言ってない」
「もう。何で言わないの!」
そう言うと足早に家を出て言った。
「ツアレです。今、よろしいですか?」
「ん?なんだこんな時間に…お茶の時間には早いだろう」
鈴木は読みかけていた書類を置いて椅子を勧めた。
「はい。実はエンリちゃんの事で」
「ん?夫婦喧嘩でもしたか?」
「違います!エンリちゃんがお母さんになるんです!」
「何を言い出すかと思えば…エンリの母ちゃんはちゃんと火葬したからゾンビにはならんよ」
「エンリちゃん"が"ですっ!」
「ハハ!すまんすまん、エンリちゃん"が"か…エンリがお母さんになる……え!?」
ツアレは事情を話した。
「成る程。そんな大事な事をンフィーは気付いてないのか…ったく仕方ない奴だな。分かった、俺が話をしに行く」
そう言って鈴木はンフィーの工房に足を運んだ。
「おーい!居るか?」
「なんじゃ、誰かと思えばサトルさんかい。珍しいのぉ、工房へ来るなんて」
「ああ、婆さんも居たか。丁度いい、ンフィーを呼んでくれちょっと話がある」
リィジーは工房の奥の研究室から孫を連れて来た。
「あれ?義父さん、珍しいですね」
「揃って同じ事を言うな。それよりンフィー。最近エンリに変わった事はないか?」
「エンリ…ですか?いいえ、別に。元気ですよ?」
「やっぱりな。お前、ちゃんと夫婦で会話してるか?」
「なんなんですか、藪から棒に。そりゃあ毎日はしてないけど…」
「サトルさん、どうしたんだい?この子らに何かあったのかい?」リィジーが口を挟む。
「どうしたもこうしたもエンリがオメデタだ」
「「えーーーーっ!」」
「ンフィーや、そりゃ本当かい?」
「いや、おばあちゃん、ボクも知らなかったよ」
「知らなかったって…全く、我が孫ながら情けないねぇ。薬師が女房の体調1つ見抜けないでどうするね!そんな事で良い薬なんぞ出来はしないぞ!」
「そ、そんな事言ったって……そう言えば最近は夜に襲われなくなった…かな?」
「「かな?じゃないっ!」」
「ヒッ!2人して怒鳴らないでよ」
「サトルさんや。聞いての通りだ。ンフィー!直ぐに帰ってエンリちゃんと話しをしな!」
「ハイっ!」
ンフィーアレは慌てて帰って行った。
「ハハ!婆さん、ありがとうな、手間が省けたよ」
「なんのこれしき。ところで誰からの情報だい?」
「バレてたか?」
「アンタもそんな事に気付くタマじゃないだろうよ」
「参ったな。ツアレだ」
「ああ、あの子なら納得だわ。会ったら礼を言っとくよ。それでワシにも何か用があるんじゃろ?」
「察しが良いな。先の話だがエンリの出産の時な」
「それなら心配は要らんて。一通りの医術は学んでおる。産婆の経験で取り上げた赤子の数も両手の指じゃ足らんくらいじゃよ?」
「そうか!なら安心だ。ひょっとしたらエランテルにでも行かないと駄目かなと考えてたんだよ」
「ツアレちゃんを始め女手には事欠かん。こう言う時、男は役に立たんからのぉ」
「そうか…そうだよな。じゃあ後でエンリを診てやってくれ」
「曽孫の顔が見れるんじゃ、万事ワシに任せてくれ。それよりエンリちゃんの村長の仕事じゃ」
「うん。それは皆が遠征から帰ったらまた会議して決めるよ。負担は減らすと約束しよう」
「よろしく頼むの」「こちらこそだ」
2人は笑顔で握手した。
ーーーーー
「あっけなかったな」
ブレインは振り返ってガゼフに言った。
「そりゃああれだけのアイテム持たされてたんだよ?英雄級が軍団になってたんだもん」
代わりにクレマンティーヌが答える。
「だよな。フツーの冒険者でも魔法が使えるんだから階級は2段階は上がってる計算になる」
「爺さんは無双してたし」
「してた。スッゴイ嬉しそうだった。それよりさぁアクター様とあのちびっ子、相当進んでるね」
「そうなのか?」
「うん。戦闘中も息がピッタリだし暇あればイチャついてた」
「よく見てんなぁ〜」
「だって退屈だったし。これはアタシの勘だけど、このままお持ち帰りするんじゃないかな」
「村へか?だってまだ薔薇のメンバーだろう?」
「オンナなんだから好きな人が出来てチーム抜けるのは仕方ないよ、寿退団ってやつ」
「サトルの奴、覚悟あるのかな?息子の嫁だから娘になる」
「サトル様は今でも沢山の娘が居るから1人ぐらい増えても関係ないよ」
「あ、そっか。そう言えばそうだよな」
ガゼフは妙に納得した。
ーーーーー
「カルカ様、終わった様ですね」
「ラナー姫、お陰様で」
「姫はおやめください。どうぞラナーと」
「では私の事もカルカと」
「妾の事もドラウで良いぞ」
「「居たんですか」」
「前線に行きたいと言うたら全力で止められての。折角、特等席で戦闘が見られると思うておったに」
「我が国の未来がかかっていたと言うのになんと不謹慎な」
「カルカ、この人に何を言っても無駄ですよ。そもそもヒトではありませんし」
「え?今なんと?」
「妾には竜族の血が流れておる、とラナーは言ったのじゃ」
「アレは単なる噂話かと…」
「ん?本当の事じゃ。因みにカルネ村から来た赤い服の青年とマントの少女が居ただろう?あれらもヒトではない」
「………まさか」
「本当ですよカルカ。今回ジルクニフ皇帝の話を聞いて助け舟を出したカルネ村の重鎮、赤服の父君ですが、その方に至ってはアンデットです」
カルカは衝撃の事実に言葉が無かった。
「カルカよ。妾も国を救って貰うた時には大層驚いた、じゃがの"その男"の平和を願う気持ちは本物じゃ。保証する」
「そうなのです。開戦前にお約束頂いた亜人を絶滅させずに降伏させる事もその方の意思だったのですわ」
「……そう…だったのですか。その話を聞いた時、正直呆れました。被害者では無いからそんな事が言えるのだと。しかし訳を聞いて納得出来ました。命ある物全てが繋がっている、そう神は創り賜うた。それを力があるからと相手を絶やしてしまっては今回の敵である亜人連合の考え方と何も変わらない。人間の叡智はもっと尊いものだ、と。」
「それでもその方は今回ご自分の出陣は自重されました。不快にさせては申し訳ない、と仰られて」
「そうですか、その様な事まで心配して下さったのですね」
元より博愛主義者のカルカはすっかり魅力されていた。
(上手くいった様じゃの)
(お疲れ様でしたわ)
2人は視線だけで短い会話をした。
ーーーーー
「陛下、ローブルの件は片付いたと連絡が入りました」
「そうか。予想通りだ。よし。ローブルへ行くぞ!用意せよ」
「陛下自ら行かれるので?」
「そうだ、これからが本番だ。南の貴族どもを黙らせ南北を本当の意味で統合し、その上でローブルを連合に迎え入れる。これは私にしか出来ん仕事だ」
「乗りますかね?」
「乗るさ。あれ程の軍事力を見せつけたのだ。必ず南部の連中は提案を飲む」
「ローブルにそれ程の魅力が?」
「海だよ。豊かな海産物もそうだが、軍事的にも海を押さえておくのは有利だ」
「成る程。流石、陛下。そこまで先を見ていらっしゃったとは」
「制空権は既に我が手にある。法国もそうだが評議国や海上都市の事もある。強化出来る内に強化しとくさ。サトルも言っておった、戦いは始まる前に終わっている、とな」
「属国にはしないのですか?」
「無闇に国土を広げると目の届かない所が必ず出てくる。ある程度の統治は任せた方が利口なのだよ。私とてこの身は1つなのでな。カルカの弱い所をこちらで補ってやれば良いのだ。鮮血帝とまで呼ばれたのだ、今更悪名を背負うのに躊躇いは無い」
(バハルス連合国か。かつて誰もなし得なかった大陸の統一、この俺がやってやる)
ジルクニフは固く拳を握りしめた。
お疲れ様でした。
鈴木さんが世界征服しないのでジルくんに
やってもらおうかなと思ってます。
彼ならやってくれると作者は信じています。
頑張れ!ジルクニフ!
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。