キャラクターを退場させないので大変になって来ました(笑)
加えて誰が何を言ったかも、回を重ねたのでうろ覚えになってきております。
あと幕間ってのを入れた方が良いのかなぁと考えましたが、
本文自体が幕間みたいな物なのでヤメました。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
フールーダを囲んでの宴は大変な盛り上がりをみせた。
ガゼフとブレイン、クレマンティーヌも加わっての演舞。
セリーシアやアルシェとエルフ三人娘によるマジックショーには飛び入りでフールーダもノリノリでヤンヤの喝采を浴びた。鈴木もたまらず超位魔法で参戦しようとしたが皆に全力で止められブー垂れた。パンドラズアクターなどはネムや妹ズに変身してちびっ子たちのアイドルになった。
上機嫌のフールーダは魔法学院分校計画を快諾し全面バックアップを約束した。
「いや〜、愉快、愉快!こんなに笑ったのは何年振りじゃろう」
「しかし、爺さん。帝国の学院でも教鞭を取ってるんじゃないのか?」鈴木は不思議そうに尋ねた。
「もう名誉職じゃよ。毎日毎日、同じ事の繰り返しじゃ。唯一の楽しみと言えば、昔カッツェで捕らえたデスナイトを支配する事ぐらいですかな。しかしそれもここ数年は進展無しじゃ」
「野生のデスナイト?」
「いかにも。」
「野生は見た事ないなぁ。作った事はあるけど」
フールーダは目を見開き震え出した。
「ど、どうした!?大丈夫か?」驚く鈴木。
「今何と言うた?デスナイトを作る!?」
「うん、そう。召喚も出来るけど時間で消えちゃうからね。死体から作ったのは消えないよ」
「なんと!おお!やはり来て良かった!おお!」
(やっぱジルの言う通り魔法絡むとヤバいな)
「一体作ってくださらんか?年寄りの頼みじゃ」
「いやいやいや、死体ないから無理。こないだ野盗を殺ったらしいけど皆んな焼いたからね」
「なんと勿体ない・・・」
(ナニ考えてんだよ、フツー死体なんか保存しないだろ)
「ま、まぁ。機会があれば、な。」
「う〜む。誰か死なんかのぉ」
(一番可能性あるのオメーだろ!この調子じゃジルも大変だな)
「じゃあそろそろお開きにするか。詳しい打ち合わせは明日からだな!」
「はーい。お疲れ様でしたー」
ーーーーー
ネイア・バラハは悩んでいた。
両親共にローブル聖王国騎士団員で特に父親は聖王国"九色"に数えられる程の弓の名手であった関係上、ネイアの入団は自然の流れだった。
しかし年頃のネイアにとって"国防"とか"正義"などは全く興味は無く厳しい上下関係や訓練には飽き飽きしていた。
(どっかに素敵な人が居ないかな)
ネイアは心の中で呟いた。
(でもなぁ、私のこの"目"なんだよなぁ。お父さん譲りなのは分かるけど女子にはキツいハンデだよ)
そうなのだ、彼女の目は常に誰かを睨んでいる様に見えて子共をあやせば泣かれるしニッコリ笑えば相手は顔を引き攣らせた。
(きっとこれって魔眼よ。何かの呪いに決まってる)
ハンデを背負った少女は厄介な方向へ歪み始めていた。
ーーーーー
ケラルト・カストディオは悩んでいた。
幼い時から天才と呼ばれその美貌も手伝って若くして神官団長になった。女王とも親しく姉と並んで"両翼"とまで言われている。順風満帆な人生だ。だが(カルカはお花畑だし姉さんは脳筋。眉間の皺が増える一方だわ)。当人には波瀾万丈な様だった。事実、カルカは良く言えば平等、言い方を変えれば八方美人な政策で南部貴族だけでなく平民にも不満を持つ者も居た。一方、"両翼"の一翼を担う筈の姉は物事を考えず直感のみに頼り努力と根性さえあれば何事も乗り越えられる絵に描いたような脳筋女子だった。そんな訳で厄介事は自然とケラルトの所に集まり、それらを秘密裏に処理をして行く裏方役に徹していた。
(別に裏方が嫌でないのよ。問題はイメージなのよね)
蘇生魔法も使え"女神"をイメージしていたのに、いつの間にか"闇の女神"と呼ばれる様になってしまったのだ。
(あんまりだわ!あー!もー!面倒臭くなってきた!)
ケラルトはベッドにダイブした。
ーーーーー
レメディオス・カストディオは悩んでいた。
頭の出来が自分とは違う2人の役に立つ為に己を鍛え抜いて来た。そして騎士団の長にまで上り詰め周辺国家でも有名になった。ところがその辺りから周りの様子が違ってきたのだ。この前もそうだ。九色の一人娘が入団したと言うので"特別に"目を掛けて鍛えてやったのに、殺気を帯びた目で睨まれたのだ。カルカには愛が足りないと言われた。
(何で体を鍛えるのに愛が必要なんだ?さっぱり分からん)
そして妹にも言われた、ただ厳しいだけでは駄目。
(訓練を厳しくしないでどうする?実戦では命懸けなんだぞ?)
しかし本当の悩みはそんな事では無かった。
最近は3人で遊ばなくなったのだ。
昔は森に虫取りに行ったり海へ泳ぎに行ったりした。
去年の夏もスイカ割りに誘ったら、2人に揃って「日焼けするからヤダ」と言われたのだ。
(夏に蒼白い肌の方が病気っぽいだろう?なんかノリが悪くなったなぁ)
そう思いながらダンベルの錘を10キロ追加した。
ーーーーー
カルカ・べサーレスは悩んでいた。
自分が厳しい政策を出来ない事は分かっていた。またその事が内部の軋轢の原因になりケラルトやレメディオスに尻拭いをさせているのも知っていた。
(だけど私にはすべき事があるのよ。そう、誰も泣かない国を作るの)
本気でそう考えていた。たとえ周りから、いい加減少女の夢物語は止めてくれだの、もっと現実見ような?などと言われても、だ。
(ハードルは高いから越える価値があるのよ。理想を低く持っちゃダメよ!カルカ!へこたれちゃいけないわ。私はローブル聖王国の女王カルカ・べサーレスなのだから!)
テーブルに飛び乗りポーズをキメる。
そしてボソリと呟いた。
「"ジル"からの返事、遅いわね」
ーーーーー
獣身四足獣の若き長、ヴィジャー・ラージャンダラーは悩んでいた。
父親から引き継ぎ種族長になったが、その実力はまだまだでありその事を本人も理解していた。
(それなのに連合組んで攻め込むなんて早過ぎるよ)
もっと力を付けて自他共に認める長になってから参画したかったのだが、あれ程拗れていた話が纏まってしまったのだ。
そうなると他の種族に遅れは取れない、下にも示しがつかない。だが皮肉にも作戦は大成功で首都奪取は時間の問題になっていた。
(上手く行き過ぎだよ。ゼッタイ何かどんでん返しがある)
やれやれと言う表情でヴィジャーは寝床に入った。
ーーーーー
フールーダから遅れて帝国を立った早馬がカルネ村に着いたのは宴会の翌日夕刻だった。
事情を聞いて早速に会議が始まった。
何故か会議にはドラウやフールーダ、ブレインも出席していた。
「村議会なのに?」鈴木は首を傾げたが。
「村の一大事は我々の一大事」と声を揃えられたので押し切られた。
(こいつら暇つぶしのイベントと思ってるよな)
会議の焦点はローブル聖王国が鈴木に対して良い印象を持っていない点だった。
「皇帝陛下の仰る通りサトル様に悪い印象を持っている様な所には行かなくて良いと思います」
エンリはいつに無く厳しい口調で発言した。
娘たちもその意見に賛同し皆ウンウンと頷く。
「宗教絡むと厄介だからねー」
クレマンティーヌも同調する。
「でも使者が言ってたけど、ラナーが秘策持ってるんだろ?」
「サトル様は優しすぎます!策があるとかないとかじゃなくて、そうまでして助けなくて良いって話ですっ!」
「え、エンリ、なんか今日は怒ってる?」
「当たり前ですよ。見た目だけで人を判断して、、、何様のつもりですかね」
しばらく沈黙が続き、ドラウが挙手した。
「まあまあ村長もそう熱くならんと。フールーダ殿がこの席に居るのも何かの縁、一度話だけでも聞いてみてはどうじゃろう?その上で断るのならそうすれば良いと思うのじゃ」
「儂もジルも早馬を飛ばしたのは話を聞いて貰いたいからじゃと思う。村長殿、決して悪い様にはせぬから、頼む」
フールーダは頭を下げる。
「わ、私は別に意地悪を言っている訳じゃないんですよ」
なんだかバツが悪くなったエンリは困った様に鈴木を見た。
「ハハ、分かっているともエンリ。お前の意見は俺を思い遣ってのもの。ありがとう」
そう言って鈴木は軽く頭を下げた。
「サトル様!もう!なんでサトル様が頭を下げるンですか!
分かりました!話を聞くだけですよ!」
(エンリって村長スゲーな。女王や主席魔法使いを相手に一歩も退かねえ。俺の人を見る目も大した事ねーや)
村の支配者は鈴木でエンリはただの神輿だと思っていたブレインは己の浅慮を恥じた。
「では父上こうしましょう。私と父上、それにフールーダ殿で帝都に行き話を聞く。そして村へ戻る。それからの事は帝都での話次第です」
「まぁ、ゲートを使えば直ぐだからそれで良いよ。エンリもそれなら良いな?」
エンリは渋々ながらも了承の返事をした。
フールーダはゲートと聞いた途端に目を輝かせた。
「おおおおおお!ついに!ついに深淵を体験出来ますな!」
「お爺さん、落ち着いて。血管切れちゃうからね」
鈴木はドン引きでフールーダを宥めた。
ーーーーー
「おーい、来たぞー」
皇帝の執務室に突然現れたゲートから3人が出て来る。
「おお!サトル!来てくれたか!ん?爺は何故泣いている?別れて幾日も経ってないだろう?」
「ああ、そのお爺さんは昨夜からその調子だから」
「そう、なのか。まあ元気そうで何よりだ。今、お茶の用意をさせるから適当に座ってくれ。」
ジルクニフはメイドに例のものをと命じ、合わせてラナー達に部屋まで来る様にと言った。
「例のものって?」
「うん。珍しい珈琲が手に入ってな、サトルが来たら出そうと。」
「それは嬉しいな!楽しみだ!」
4人は近況を報告しあいラナーたちを待った。
「お待たせしました。」
ラナーと薔薇の面々が入って来たのは丁度お茶の用意が出来た頃だった。
「良い香りですねぇ」「ホントだ!」
「出入りの商人が持って来たのだ。気に入ったら言ってくれ、また届けさせよう」
珈琲を楽しみ談笑が進むなか、ラナーが手を挙げた。
「ではそろそろ始めましょうか?」
ーーーーー
「始めはサトル様に幻影を使ってと考えておりましたが村長さんのお話を聞き反省しました。サトル様にはありのままで居て貰います。その上でお力をお貸し下さればと。」
「どうする?ラナー、聞かせてくれ」
「はい。そのブレインと仰る方も相当の剣士だと思いますので今回はサトル様もアクター様はカルネ村へ居て貰います。
その代わりと言っては失礼ですが、ガゼフさんとクレマンティーヌさん、それにそのブレインさんを助太刀に出してはいただけませんでしょうか?後はフールーダ様の魔法部隊と帝都と王国の戦力、私の試算ではそれで十分だと考えられます。」
「言っては何だが亜人軍団は相当な数だぞ?ウチの四騎士やカルネ村の3人に薔薇の面々、それにフールーダの弟子達は頼りになるだろうが、一般の兵はその足元にも及ばん」
「そこでサトル様ですわ」
「俺?」
「はい。以前、サトル様は沢山のマジックアイテムをお持ちと伺いました。それを貸与していただきたいのです」
「成る程、俺達の戦力アップか」
「ガガーランさん、お察しの通りです。ただこれは私の予想ですので、どれ程のアップになるから分かりません」
「サトル、どうだ?イケそうか?」
サトルは隣の息子と相談する。
「今、息子と相談したが、アイテム以外に村で作ったポーションに使える物があるそうだ。治癒系は勿論、強化系も中々らしい」
「それは数があるのか?」
「流石に数千はないが、数百ぐらいならあるらしい」
「数百の兵が戦力が上がるなら文句は無い。薔薇に頼んでいる冒険者の中や兵の中の腕のたつ者に与えよう、その方が効率が良い」
「ただ、なんだ、その、この場で言い難いのだが」
「なんだ?ハッキリ言えよ、仲間だろ?」
「代金が欲しい。村の財源なのでな」
「そんな事か。カルネ村へ負担は掛けんよ。今回の出兵に関しては女王自らの嘆願の書簡もある。費用はローブルに請求するつもりだ」
「それは助かる。私1人が動くのならそんな事は関係無いんだがな、娘たちに迷惑は困るのだ」
「ハハ、相変わらず"良いお父さん"だな」
「ではその線で行きましょう。他に意見のある方は居ますか?」
フールーダが手を挙げる。
「爺。この様な席で珍しいな」
ジルクニフは少し驚いた顔でフールーダを見た。
「そのマジックアイテムは儂にも貸して頂けるのですかな?」
「「「爺さん、前線に出るつもり!?」」」
その場の全員が声を出した。
すると今度はフールーダが驚いた顔になり言った。
「このフールーダパラダイン、まだまだ若い者には遅れを取りませぬ」
ジルクニフはやれやれとした顔で問う。
「爺、マジックアイテムを借りたいんだろ?」
「流石、陛下。我が真意を見抜かれましたか」
「見抜かいでかい!アイテムの話が出た時からバレバレだ!」
「おいジル。大丈夫なのか?」
鈴木は不安そうに聞いた。
「ああ、本人が言うのだから間違いないだろうよ。それに言い出したら聞かん」
フールーダパラダインは満面の笑みを浮かべた。
お疲れ様でした。
そうなのです。
皆んなが戦闘狂じゃなかったらどうだろ?と思ったのです。
若い女性ですから他に悩みがあっても不思議じゃない。
まあ状況的にそっちの方が無理ありますけどね。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。