やっと今回、青い髪で無精髭の人が活躍します。
書籍では武人として死に、WEBでは吸血鬼の下っ端になり、2次では生存率が高いですね。
私の所でも死ぬ予定はありません。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「おい、今すれ違ったのどう思う?」
「真っ当じゃないわな、どう見ても。」
漆黒の3人はエランテルへの帰路についていた。
「荷車引いた農夫みたいな格好してるが、ありゃ違う。」
「引き返すであるか?」
ペテルは暫く考えていたが口を開く。
「いや、その必要は無いだろう。村にはサトル様父子にガゼフさんやクレマンティーヌさんも居る。一国の軍隊が攻めても大丈夫だろうぜ。」
「違ぇねーな。」
「あの村に手を出す者は地獄を見るのである。」
3人は笑いながら歩き出した。
ーーーーー
「それでサトル様たちはリザードマンの村へ行っちゃったの?」
クレマンティーヌは不満気にエンリに聞いた。
「なんか急いでたみたいだから、詳しくは聞かなかったけどね。」
「チェ!一緒に行きたかったなー」
「ハイハイ、むくれないの。それより留守を頼むって伝言。」
「おーけー。防衛レベルを1つ上げるね。」
「お願いね。それよりガゼフさんとの新婚生活はどう?」
「どうって?」キョトンとするクレマンティーヌ。
「もう!新婚生活でどうって言ったら"夜の生活"に決まってるじゃない。」
「え ええ!?よ、よるのせいかつ!?」
「そうよ、大事な事よ?」
「そ、そうなの?」
「そうよう。地道な努力で村は大きくなるんだから。」
「人口問題!?」
「村長だもん。いつかはツアレさんたちにも良いお婿さんをって思ってるわ。」
「なんかエンリちゃん怖い」
「なに言ってんの、それでどうなのよ?」
「そ、それなり、かな?」
「それなりじゃ、駄目よ。ウチのンフィーもそうだけどガゼフさんも奥手みたいだから。」
「余計なお世話!んじゃ逆に聞くけどさ、何かやってんの?」
「私?そうねぇ、今は肉類があんまり手に入らないからニンニクとか精の付く野菜を食べさせてるかなぁ」
「ンフィー可哀想」
「体調管理は妻の役目よ。頑張ってね♪」
「・・・ハイ」
(後でツアレちゃんにニンニク料理聞こう。てかエンリって見た目より肉食系だよね。)
元肉食系女子は胸の前でグッと拳を握った。
ーーーーー
「父上。これが社会と言うものですか。」
「息子よ。甘い言葉には気を付けるのだ。」
「こらこらこら!そこの2人!妾をまるで詐欺師呼ばわりじゃな!」
「だってそうじゃないか。なぁ?」
「父上の言う通りですよ。一国の女王がどーとか、教養がどーとか魚の養殖なら任せろとか。ねぇ?」
「そんな事を言ってもだな、魚は魚だから同じだと思ったのだから仕方ないだろう。」
「水槽で熱帯魚を飼うのと生簀で養殖するのと同じ訳がないだろう!どんな物差し持ってんだ!?」
「そうですよ、見てくださいよ。あのリザードマンたちの冷たい視線。完全に可哀想な人達になってるじゃないですか。」
「えーい!ウルサイ!ウルサイ!ちゃんと国から養殖のプロを呼んで来る!それで文句はなかろう!?」
「「本当?」」と父子
「「「「「本当?」」」」」とリザードマン
「あー!お前たちまで!おい!サトル!ちょっと国へゲートを繋いでくれ連れて来るから。」
「りょーかい。げーとおーぷん。」
リザードマンたちがかなりビックリしているので
パンドラズアクターが一応説明した。
クルシュと名乗った白い雌のリザードマンは聞いたことも無い魔法だと仲間に補足説明していた。
「ほい、帰ったよ。」
「ヒッ!陛下!ここは何処ですか!?」
「狼狽えるな!ここはリザードマンの集落で、お前は先生になるのだ。」
「ドラウ、それじゃあ断片的過ぎて彼が分からんじゃないか。ただでさえ執務中に急に連れてこられたのだそ?どんなドッキリだよ。よし、私から説明しよう。実はな・・・」
「成る程。街道の進行状況を視察中の陛下が何故か釣りをしていてリザードマンに出会い養殖の手伝いを安請け合いしたけれど手に余ったので私に尻拭いをさせる、と言う訳ですね。」
「飲み込みが早くて助かる。」
「お主、仮にも主君である妾をチクチクと攻撃して何のつもりじゃ?」
「まあまあ、ドラウ。細かい事は抜きにしてさ。」
「あのう。こちらの人が養殖のプロなので?」
ザリュースが恐る恐る尋ねた。
「そうそう。なんかバタバタしたけどもう大丈夫。」
「では早速に現場を見てもらって良いですか?」
「ハイハイ、見てみましょう。」
2人は湖の方へ行った。
「何も御座いませんが、新鮮な魚ならあります。どうぞ、こちらへ。」
クルシュは自宅へ案内した。
初めて見るリザードマンの家に3人は興味津々だった。
「水の中で暮らしてると思ってた。」
「ドラウ、それは無いわ。でも半分は水に浸かってるとは思ってたけどな。」
「しかし父上。白いリザードマンが沢山産まれるなら1匹ペットに持って帰る計画は駄目でしたね。」
「うん。沢山卵を産むんだと思ってからな。トカゲって言うよりヒトに近いよな。」
3人は勝手な事を言い合っていた。
クルシュは手際良く魚を卸し半身は大きめの葉に盛りつけた。そしてもう半身に軽く塩を振り焼き出した。
鈴木は堪らなく懐かしい匂いにテンションが上がる。
「素晴らしい!まさかもう一度焼き魚を焼く匂いを嗅げるとはな!大満足だ!」
「父上!ようございました。」
「そんな感動する程かの?確かに香ばしい匂いじゃがの。しかし煙が凄いの〜」
「はい。脂が乗ってますからね。」
クルシュは笑いながら答えた。
鈴木は十分に焼き魚を堪能し2人はその味を堪能した。
「へぇ〜、山の向こうにドワーフが住んでるのか〜。それでフロストドラゴン?も居る?」
「妾も知らんの〜。」
「はい、なんでもドワーフはルーン文字を武器に彫るとか。」
「何!?」
突然大きな声を鈴木が出したのでクルシュはビックリする。
「ああ、すまない。ルーン文字と聞いて興奮してしまった。その話をもう少し詳しく聞かせてくれないだろうか?」
「それなら私よりゼンベルと言う者が。なにせドワーフの国に住んでましたから。」
「今はちょっと集落を出て居ます。夜には帰る予定ですが。」
「あやつも養殖の伝授にもう少し掛かるだろうし、妾も少し村を見て回りたい。サトル、ここは待つとしようぞ。」
一瞬何か心を過ったが直ぐに返答した。
「そうだな。エンリには一応言ってあるしな。」
ーーーーー
「おいおい、小さい子供を人質に取るとは外道にも程があるぞ?」
背後の草むらから出で来た青い髪の男は呆れて言った。
「お、お前はブレインアングラウス!何故ここに!?」
「酒場で良からぬ相談してただろう?金に成るかも知れないと尾行して来たが、これは見逃せないわ。よう!久しぶりだなガゼフストローノフ!」
「ブレインアングラウス!」
「クーデリカーーーーーっ!!」
アルシェは半狂乱になって叫び飛び込もうとしている。
「今暴れられるとマズイわね。少しの間眠ってて貰うわ。」
クレマンティーヌはエルフに睡眠魔法を頼んだ。
エルフの魔法で眠ったアルシェを横目に見てガゼフに向かい小声で、
「もう大丈夫。これからどうする?」
「ブレインが動く。それを合図にクーレはクーデリカを救い出せ。俺は周りを始末する。いいか、チャンスは一度だ。」
「分かったわ。」
クレマンティーヌは武技を重ねる。
(流水加速、能力向上、能力超向上)
ガゼフはブレインに目で合図を送る。
(領域、瞬閃、神閃)
ブレインも武技を重ねながら少しづつ間合いを詰める。
そして。
「貰ったっ!」
目にも止まらぬ動きでブレインは族に襲いかかる!
と同時にクレマンティーヌもクーデリカ目掛けて走る!
「六光連斬改ダースアタック!」ガゼフが吠える!
刹那の出来事。
クーデリカを抱えた男の両腕は切り落とされ
クレマンティーヌはクーデリカを地面にスレスレでキャッチ。周囲はガゼフに全て倒されてた。
クレマンティーヌは今度は精神安定化の魔法をエルフに頼み、クーデリカを安静させる。
「「腕を上げたな。」」
2人の男は同時に同じ事を呟いた。
ーーーーー
「え〜、ドワーフの国は滅んだってぇ〜!?」
鈴木はガッカリして天を仰いだ。
「そーなんッスよ。何でもモグラみたいな種族に襲われたらしいんですがね。前々から仲は悪かったそうです。」
「生き残りとかも居ないかなぁ?」
「そりゃ何とも言えませんが、サイズは子供だし地下に住んでるしで見つけ出すのは至難の業ですぜ?」
「父上、これは諦めた方が良さそうですね。」
「そうだぞ、サトル。また冒険は出来る。今回はホレ、こうしてリザードマンたちと友好関係が妾のお陰で築けたではないか。それで良しとしようぞ。」
「今何か余計なフレーズ挟まなかった?」
「男は細かい事に囚われてはいかんぞ?それに縁があれば出会う事もあろう、楽しみが出来たと思えば良い。」
「何か良い事言うなぁ。でも、まーそーかもな。じゃあ今回はこれで帰るか!」
「オジサン、また遊びに行ってもいい?」
「勿論だ、ザリューシュ。今度は皆で遊びに来い。ウチにも3人ちっこいのが居てな、友だちになるといい。」
「わーい!」
(変わった人たちね。でもこれで閉鎖的だったこの村も少し変わるかも知れない。この子たちには新しい時代が必要。)
クルシュは微笑みながら我が子の頭を撫でた。
ーーーーー
「元気そうじゃないか」「お前も鈍っちゃいない様だな」
男たちはガッチリ握手した。
「さあさ!後片付けしましょ!子供たちの教育上良くないわ。」エンリが手を叩いて皆んなを急かした。
作業をしながらブレインはガゼフに話しかける。
「戦士長を辞めたって聞いてたけど、まさかこんな辺境の村に居たとはな、どうゆう心境の変化だ?」
「なぁに簡単な事さ。守るべき者がハッキリしたんだよ。」
「守るべき者?」
「うむ。まぁ詳しい話は後でゆっくりだ。お前の事も色々と聞きたいしな。」
総出の片付けは直ぐに終わりツアレがお茶の用意をする。
「アットホームだなここは。」
「ああ、皆んなが家族だ。助け合ってやってる。」
「ところで、さっきの話の続き、いいか?」
「家族の居なかった俺に家族が出来たのさ。それにコイツを妻にした。」
ガゼフは横に居たクレマンティーヌの肩を抱き寄せた。
「お、お前がか!?」
「何も不思議はないだろう?俺だってただの男だ。」
「そりゃそうだが、、、。あのガゼフストローノフが女に惚れるとはねぇ。世の中分からないな。」
「ハハ!えらい言われ様だな。それでお前は?」
「そうだな。もういいか。なんか拍子抜けしちまった。エランテルでアイツらの悪巧みを耳にしてな、助けてやればカネに成ると思ってたんだ。だから褒められた話じゃない。」
照れ臭そうに頭をかくブレイン。
「そうか。しかしお前が居なければクーデリカは助けられなかったぞ?」
「お前を憎んで居た、としてもか?」
「過去は過去だ。大事なのは今。打算で動いたお前が結局は正義に動かされた。それでいいじゃないか。」
「負けたよ。正面から戦っても勝てなかったろうよ。剣技を極めるにはその心だ。さっきのお前の技を見て、そして今のお前の言葉を聞いて合点がいった。」
「ある男の受け売りだよ。」
「男?」
「ああ、俺なんか足元にも及ばない御仁が2人居るんだ、この村にはな。」
「2人もか!?」
「親子だかな。」
「へぇ〜、そいつは一度お目にかかりたいね。」
「おう。どうせ暇なんだろ?ゆっくりしていけや。寝る場所と食う物ぐらいはある。」
「そんだけありゃ上等さ。それと良ければ村の人たちに紹介して貰えねぇかな?」
「スマン!スマン!忘れてたよ。夕食の時に紹介する。お前は恩人だからな、ツアレがご馳走してくれるぞ?」
「ツアレってこのお茶の用意してくれてた娘か?」
「うん。ウチの料理長だ。あのコの飯は美味いぞ?」
「そんな事、嫁さんの前で言っていいのか?」
「構わんよ、その嫁さんの料理の先生なんだから。」
そう言ってガゼフはクレマンティーヌの頭を撫でた。
クレマンティーヌは猫の様に目を細めガゼフにもたれ掛かる。
(なんだ?この女は!戦っている時とまるで別人だ!)
女という生き物の不思議を目の当たりにしたブレインだった。
「はーい!みんなー!ご飯よー!」
ツアレが大声で号令をかけた。
お疲れ様でした。
エンリちゃんは村長さんなのでしっかり者なのです。
そしてカルネ村をこよなく愛しているので
村の繁栄を第一に考えてます!
可愛いですよね。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。