骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

もうそろそろ出さなきゃいけないヒトが居るのですが
中々タイミングが見つからなくて
楽屋でブーブー言ってそうです。
今話で登場するかどうかは、作者の腕次第!

じゃあ無理じゃん!(笑)

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その26 一人っ子なので兄弟はいませんよ?

「そこの娘、カルネ村と言うのはこの先かな?」

豪華な馬車の御者は尋ねた。

「うわぁ〜、これまた立派な馬車だっぺ。どっかの貴族様だべか?」

(うわぁ〜、スゲー訛ってるよ。相当田舎だから仕方ないか。)

「後ろに座すお方は竜王国の女王様である。訳あってカルネ村へ向かわれて居るのだ。」

「へぇーっ!女王様!これまたびっくりだべ。はいはい、カルネ村はこの先真っ直ぐですじゃが、一体その女王様が何の御用だべ?知らない人は入れない村だっぺよ。」

すると扉が開いて中から王女が降りて来た。

「陛下、お履物が汚れます。」

「良い良い。これ娘、安心いたせ妾はサトル様の友人じゃ。」

「なんだ、それならそうと早く言うだっぺよ?」

「コラッ!」

「ハハ、面白い娘じゃのぉ。さすがサトル様の村じゃ。」

「女王様に褒めて貰ったっぺ。それじゃあ褒めて貰ったお礼にオラが案内するべ。ついて来てけろ。」

そう言って娘は先頭をトコトコ歩いて行く。

「陛下、本当にこんな辺境の村にサトル様はいらっしゃるのですか?あの娘にしても何処にでも居る村娘ですが。」

「街道の中継地に居た警備隊長とやらも言うておったじゃ無いか。カルネ村には謎の2人組が居るらしいってな。間違い無い、その2人組はサトル殿と御子息じゃ。それに村娘は何処の村娘もあんなもんじゃろう?サトル殿の村に居るからと言って武装している筈無かろう?」

「まぁそれはそうですが、、、」

「そろそろ見えて来たっぺよ。あ!村長さんぢゃ!エンリさーん!」

「「村長さん!?」」

「陛下、村長さんも普通の村娘に見えますよ?」

「ん、うん。普通の村娘じゃの。」

案内していた娘はトトトと走って行き、エンリに説明している様子だった。

やがて馬車は村の入り口に着いた。

「お話しはこの娘から伺いました。初めまして、私がカルネ村の村長、エンリ・バレアレです。何も無い村ですがようこそいらっしゃいました、歓迎いたします女王陛下。」

エンリは膝を折って丁寧にお辞儀をした。

横に居た村も同じ様にお辞儀をして

「長旅、さぞお疲れの事と存じます。只今、お茶のご用意をいたしますのでゲストルームへご案内いたします。」

 

「「ちゃんと喋れるじゃん!!」」

 

ーーーーー

 

一行はゲストルームという名の会議室兼食堂に案内された。

「すみません。只今工事中でしてこんな場所しか無いのです。」

エンリは申し訳無さそうに頭を下げた。

「気にするでない。訳は道中に聞いたぞ。王国のバカ息子に襲われたそうじゃな。皆に怪我は無かったのか?」

「ありがとうございます。もう少しサトル様のご帰還が遅かったら全滅していたかも知れません。」

「そうか。しかし、けしからん話じゃの。サトル殿憎しで縁の村を襲うとは、しかも村人と言えど若い娘ばかりではないか、逆恨みとは恐ろしいのぉ。」

そこへツアレがワゴンを押して来た。

「ようこそ女王陛下。ツアレと申します。」

「其方がツアレか。良く気がつくとサトルが褒めていたぞ。」

「そんな!お恥ずかしい限りでございます。」

顔を赤くしてお茶を淹れる。

「初のぉ。そして良い香りじゃ、ダージリンじゃの?」

「左様でございます。サトル様は香りを楽しまれるので特に良い香りの物を気にかけております。」

「サトルが褒める訳じゃ。」

 

「待たせたな、ドラウディロン」

「おお、久しいなサトル。大変だった様だな。」

「ああ、危ないところだった。お陰で娘たちにも随分と怖い目に合わせてしまった。お!良い香りだなツアレ。私にも同じのを頼む。」

ドラウディロンはツアレにウインクしてみせた。

ツアレはクスリと笑ってカップを用意する。

「何だ、何だ?皆で笑って。さては良からぬ話をしていたな?」

「そうですよサトル様。今、3人でサトル様の悪口を言っていたんですよ?」

エンリが悪戯っぽく笑って言う。

 

(この村に手を出すとは、バカはやはり死なぬと治らないらしいのぉ)

3人のやりとりを見ながらドラウディロンはそう思った。

 

ーーーーー

 

「本当にごめんなさい!」

 

「おいおい、ニニャ、いや、セリーシアが謝る事じゃねーよ」

「ルクルットの言う通りだぞ。お前が頭を下げる事は無い」

「人は誰でも幸せになる権利はあるのである」

 

「でも、今まで散々お世話になっておいて勝手な理由で抜けたいと言ったのですから、、、」

「それはお互い様だ。俺たちだって危ないところを魔法に助けられた事もある。漆黒はそんなチームだったろ?そのチームメンバーが幸せになろうとしているんだぞ?喜んでも怒るわけがないだろう。」

「ウッ、、ペテル、、」

「ほらほら泣くんじゃねーよ。これからは姉ちゃんと幸せにな。ところで、姉ちゃんは彼氏とか居んの?」

「全くルクルットはブレないのである」

「「「ハハハ」」」

 

(みんな、ありがとう。ペテル、ルクルット、ダイン、最高の仲間たちだったよ!)

 

ーーーーー

 

(なかなか良い買い物が出来ましたね)

パンドラズ・アクターはホクホクしながら帝都を歩いていた。

お目当てのランタンも買えたし貰った小遣いでマジックアイテムも買えた。だが嬉しかったのはマジックアイテムではなく小遣いを貰えた事だった。

宝物殿から出る事が無かったので1人でしかも小遣いを貰って買い物、なんて事は考えたことも無いイベントだった。

(父上へのお土産は何が良いでしょうか)

そう考えていたその時

(おや?あれは確か薔薇の)

「キーノ嬢!」

「ん?ああ、なんだ息子か」

「こんな所で一体なにを?」

「それはお互い様だろう?それとそのキーノ嬢は止してくれ、なんか居心地が悪い」

「では私の事もアクターと。立ち話もなんですからあそこの店にでも行きますか?」

「だったら美味しいスコーンを出す店が近くにある」

「では、そこへ」

連れ立って歩く2人はよく目立った。

「なんかジロジロ見られているんだが?」

「きっと貴女が魅力的だからですよ」

「バ、バカ言うな!」

店に入って席に案内されるとパンドラズ・アクターはスッとキーノの椅子を引く。

「あ、ありがとう」

「あ、すいません。スコーンとストレートティーのセットを2つ。で、良かったですね?」

「う、うん。」

(なんでこんなにドキドキするんだろ?)

「良い季節になりましたね」

「う、うん。」

「仮面はお取りになったのですね」

「う、うん。」

「その方が良いですよ」

「う、うん。」

「お茶に誘ったのご迷惑でしたか?」

「そ、そんな事は無い!」

(うわー、何言ってんだ私!恥ずかしい!)

「そうですか、それは良かった。」

(な、何か話題を変えないと、、、話題、話題)

「と、ところで帝都で何をしていたのだ?」

「ええ、少し買い物がありましね。どうせなら品揃えの良い帝都でと思いまして。」

「そ、そうか。そ、それで買えたのか?お目当ての物」

「お陰様で思っていた物は買えました。そう言うキーノさんは何故帝都に?」

「うん。始原の魔法について書かれた書物がここの魔法学院の図書館にあってなそれでだ」

「左様でしたか、勉強家なのですね」

「あ、いや、そんな事は」

その時店の外で怒鳴り声がした。

「何を愚図愚図しているのですっ!全くこの役立たず共がっ!」

「あう!」「ぎゃ!」「お許しを!」

見れば男が3人の女性を殴っていた。

周りは見て見ぬ振りを決めている。

「何でしょうね?」

「ああ、あれはエルフの奴隷だ。大方殴っているのはその主人だろうな。胸糞悪いが"所有者"だからな誰も文句は言えん。」

「帝国でも奴隷が認可されているのですか?」

「でも?ああ、そうか。例の娼館は違法だから正確には王国では奴隷は許可されていない。最も抜け道で似た様な事はやっている、それでサトルさんは怒ったんだろう?」

「そうです。父上は常々言っておられます、困っている者が居たら助けるのが当たり前。」

そしてそう言うとスッと立ち上がり表に出た。

「ちょ、ちょっと待て!何処へ行くつもりだ!だから帝国では認可されているんだって!待て!」

キーノは慌てて止めようとしたが、既に男とエルフ達の間に立ちはだかって居た。

(マズイ!どうしよう?)

パンドラズ・アクターは男の前に立つと優雅に一礼して言い放った。

「何があったのかは存じませんが女性に手をあげるのは紳士とは言えませんよ」

突然の邪魔者に男は驚いたが薄ら笑いを浮かべ言った。

「これらは私の奴隷でね。煮て食おうが焼いて食おうが私の自由なのだよ。だから君の指図は受けない。横から出て来てわかった様な口をきくのは止めて貰らいましょう。」

「ほう。この女性達は貴方の"物"。そう仰るのですね。だから構うなと。」

「そうです。分かったらサッサと尻尾を丸めてお帰り下さい。大体私を知らないとは何処の田舎者ですか?」

「そんなに有名人なので?」

「ふん。だから田舎者は嫌なのです。よく聞きなさい"天武"のエルヤー・ウズルスとは私の事です。」

「ガゼフ殿よりお強いので?」

エルヤーの頬がピクリと動いた。

「ガゼフ・ストローノフを知っているのですか!?」

「よーく存じておりますよ。」

「では話が早い。私はそのガゼフを倒す男です。」

「ここは笑う所ですか?」

「なにッ!?」

「いや、あまりに荒唐無稽を仰るのでね。」

 

(うわぁ〜、エライ騒ぎになったぞ〜)

キーノは出てない筈の冷や汗を拭った。

 

「よく見れば貴方も剣を下げているじゃないですか。それだけの減らず口を叩くのですから覚悟は出来ているのでしょうね?」

「私の見立てでは貴方はガゼフ殿の足元にも及ばない。ですが良いでしょう、相手になります。ただし」

「ただし、何ですか?今更命乞いは聞きませんよ?」

「まさか。私が言いたいのはこれをPVPにして欲しい、と言う事ですよ。」

「まあ、勝敗は分かり切っているのですから問題は無いですが一応条件を聞いておきましょうか?」

「私が勝ったらその3人は解放して貰います。そして2度と奴隷を買わないとこのギャラリーの前で約束して貰いましょう。」

「それで私が勝ったら?」

「額に"負け犬"と書いて貴方の犬になりましょう。」

「何が釣り合いませんが面白そうなので良いでしょう、その条件で受けましょう。」

 

「アクター!」

「何ですか?キーノさん」

「私もこちらへ来て知ったのだが、あのエルヤーって男は中々の使い手だぞ?闘技場でも無敗らしい。」

 

「ほう、そちらの"チビ"ちゃんは知っている様ですね。」

 

「エルヤー・ウズルス。少しお灸を据えてやるつもりでしたが今の一言で気が変わりました。かかって来なさい」

 

「何を小癪な。能力向上、能力超向上!」

エルヤーは武技を重ね掛けしていく。

対してパンドラズ・アクターはただ静かに立っている。

「死を覚悟しましたか!しかし、もう遅い!」

エルヤーが目にも止まらぬ速さで襲いかかる!

「ふぁわぁああああ〜」

「!?!」

パンドラズアクターはエルヤーの剣を2本の指で摘んで居た!

「スロー過ぎて欠伸が出ますよ?」

「な!ありえん!ええい!奴隷共!強化だ!強化を寄越せ!」

3人のエルフは怯えながらも強化魔法を放つ。

「さっきのマグレだ!今度は本気で行くぞ!喰らえ!!」

エルヤーの激しい斬撃をまるで流すかの様に交わす。

「激流を制するは静水」

 

(凄い!まるで力を使って居ない様だ。いや、違う。相手の力を流しているのだ。相手が激しければ激しい程その剣は無駄打ちになりやがて疲れが出る。スゴイ!カッコいい!)

 

エルヤーは既に肩で息をし始めていた。

「そろそろ勝負を決めましょうか。八つ裂きにしてやりたいですが、"レディ"の前です。慈悲をかけて差し上げましょう。」

 

(え!?今レディって言った?言ったよね?いっつも"泣き虫"だの"チビ助"だの"ちっぱいちゃん"だの"チビルアイ"だのと言われ続けたのだ!)

 

「では、終わりにしましょう。苦痛なく死になさい。

この地に因んで、奥義!"帝都有情剣"!」

一瞬パンドラズアクターが視界から消え

次に姿が見えた時にはエルヤーの真後ろに立って居た。

「そんな柔な剣、蚊ほども効かんわ!!」

 

「貴方、もう死んでますよ?」

 

「何を馬鹿な!あ、あぁあ〜、気持ちいい〜、なんだこれ、めっちゃ気持ちいい〜」

 

「おい、見ろ!エルヤーの奴、自分の首が地面に落ちてる事に気づいてないぞ!」

「ひえ!地面の首が喋ってる!」

周りは目の前で起こった事がまだ信じられなかった。

 

ドサッ、エルヤーの"体"が倒れた。

同時に死んだ事に気付かぬまま、"首"の瞳は閉じた。

 

「や、やったな!アクター!凄いぞ!ぜんぜん、まったく、ちっとも、見えなかった!」

はしゃぎまくったキーノは思わずパンドラズアクターに飛びついた。

「見様見真似ですよ。上手くいって良かったです。それと、まだ後始末が残ってますので降りて貰って良いですか?」

コアラの様にしがみついて居たキーノは顔を真っ赤にして飛び降りた。

「す、スマン!つい興奮してしまった。そんなつもりじゃないんだ、ホント。」

「そんなつもりって一体どんなつもりなのです?」

「そ、それはだなぁ、、、そうだ!今は3人のエルフ達だ!」

「おお、そうでしたね」

(ふう、アブない、アブない。上手く誤魔化せたぞ。ん?誤魔化す?一体なにを?どうしたと言うのだ今日は!)

頭を抱え込んでしゃがみ込むキーノを

パンドラズアクターは不思議そうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

誤字のご指摘をいただいております。
この場を借りましてお礼申し上げます。
ありがとうございました。

「書ける時」と「書けない時」があるんですね。
上手く言えないんですが、ポンポンと会話が進む時とそうで無い時があるのです。
考えていた時にはよく喋ってくれてた筈なのに
いざとなると全然会話が繋がってなかった。
アレ?ってなるんですよ。

色々な事に気がつき出した今日この頃です。

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。

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