刑事と民事による名誉毀損の違いについて
刑事告訴による名誉毀損について
このブログで扱っているのは民事による名誉毀損ですが、刑事告訴による名誉毀損の実態についてはほぼ記載しておりません。
しかし過去に必要に迫られ刑事告訴による名誉毀損について調べたことがあり、その時に「はてなハイク」に投稿しました。
ネットの情報をまとめたものに過ぎないため、事実と異なることを了解した上で、参考にしてください。
以下に「はてなハイク」の記事に加筆修正したものを転載します。
刑事告訴は民事より条件が厳しいです。噂の原因(誹謗中傷)の内容が事実無根であることの捜査がされますし(民事による名誉毀損は事実の有無は問われませんが)、刑事の場合は検察が担当するため、告訴側の身の潔白も捜査対象になります。
そして「風評被害」に対する罰則は現状ありません。
殺害予告や脅迫罪といった悪質かつ緊急を要するものしか警察は動いてくれません。桶川ストーカー殺人事件でも警察の注意不足は問題視され、社会的にも批判を浴びたこともあり、行政裁判でも原告が勝利するという、異例の判決が下りました。(つまりは、国が非を認めることは滅多にないからです)
そして「告訴するぞ」といった脅しは本当に告訴するつもりがないなら脅迫罪に引っかかる可能性があるので、安易に用いてはなりません。
生活まで脅かすような被害や損益がなく、それらを偽造して虚偽の告訴を行うと「虚偽告訴罪」に問われます。
起訴されると3カ月以上の実刑になるので刑務所に入らねばなりません。
つまりは、そのくらい刑事では告訴側も捜査されるので、よほど悪質かつ度を超えた名誉毀損でなければ、警察は告訴の受理は早々しません。
刑事告訴の高い壁
刑事告訴の名誉毀損の条件は民事よりも遥かにハードルが高く、特に金銭による損益が発生しない案件での告訴はほぼ受理されることはありません。
2ちゃんねるで誹謗中傷されたとして警察に相談した場合、その多くは「七日間ルールスレ」送りになります。
対象の開示に反論のある方はレスアンカーを付け、七日以内にお願い致します。
七日以内に有効な反論なき場合、後日開示とさせて頂きます。書式に則った反論以外の書き込みや明確に不特定多数が使える場、生々しいIP以外からの反論
意見のないただ「反対」だけの書き込み等は作業妨害として扱われます。
「七日間ルールスレ」テンプレートより引用
運営が警察から連絡を受け、「スレッドの開示もしくは削除をするべきか否か」を7日間の有効期限を設定し、住民に対し問うものです。
反論がなかった場合、開示されますが、当然、スレの住民に補足され反論されます。警察に相談したことがバレるだけで、余計な燃料を投下するだけです。
持ち込まれた相談を「七日間ルールスレ」にまわし、住民により反対されることで、開示も削除もされず、しかし警察としては、とりあえず相談内容を処理したとされるのが実態です。
私からすれば、警察に相談することはデメリットしかないように思われます。
では、警察が受理するネットトラブルとは何かと言えば、明確な脅迫や恐喝、殺害予告といった緊急性を伴うものに限られます。
それ以外の刑事告訴によるネット事案はほとんどが受理されることはありません。
刑事告訴が受理されたケース
近年では、全国一斉捜査となったスマイリーキクチさんの事件が有名ですが、殺人犯という冤罪をかけられ、10年以上に渡り誹謗中傷されつづけました。しかし、ここでも告訴にいたるまで、何年もかかったのは有名な話です。
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他にも刑事告訴をされた方がいましたが、この方は殺害予告をされ、受理されたケースになります。
その「つぶやき」は犯罪です: 知らないとマズいネットの法律知識 (新潮新書)
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盗作疑惑で受理されたケース
午前4時氏というイラストレーターが長年に渡り、盗作容疑をかけられ、検証wikiの管理人に対し刑事告訴しました。
結果、歴代wiki管理人が逮捕され罰金刑を受けました。
午前4時氏については詳しくありませんが、やはり10年以上に渡り、盗作疑惑をかけられ誹謗中傷されていたようです。受理されたのも期間の長さから悪質性を認められたからではないかと思われます。
リンク先にあるwiki管理人の謝罪文には「盗作が行われた事実の証明ができなかった」ことから、刑が確定したとあります。
午前4時氏のような盗作疑惑については、検証と称したサイトを作成公開した場合、相手方に訴えられると、高確率で名誉毀損に問われる可能性が高くなります。
ネットではパクリ糾弾厨がわがもの顔をしていますが、訴えられれば確実に負けますから、くれぐれも他人の権利侵害行為であることを自覚して、なさるようにしてください。
改めて名誉毀損とは何か
名誉毀損案件すべてに言えることですが、私の場合も「やってもいないことを書き込まれ、犯罪者扱い」されたため、そのような事実はないとして訴訟を起こしました。
プロバイダーの意見照会の段階で、発信者は被害の証明を求められたわけですが、できなかったために、プロバイダーから訴訟の取り下げを要求され、不戦勝開示となりました。
つまり、相手を悪質だと不特定多数に向けて訴える(ネットの場合は書き込む)場合、その立証責任は訴えた(書き込んだ)側にあり、立証できなかったら、名誉毀損罪になります。
被害を受けたと訴え、証拠を提出したとしても、その証拠が書き込まれた内容と一致するほど悪質なものであるかどうかを判断するのは、第三者です。
誰が見ても相当するとされたものでなくてはならず、それらの判断は司法に委ねられます。
本人の意見や感情は考慮されません。ましてや私怨など論外です。
(ここでの私怨とは、第三者から理解を得られない独りよがりな恨みのことです)