「生活保護叩き」との
共通点と相違点はどこに?

 伊是名さんのブログ記事の「ネット炎上」には、「生活保護叩き」との共通点はあるものの、相違点の方が大きいように思われる。

「生活保護叩き」の原因には、「申請と審査を経て認められる」という生活保護の仕組みそのもの、選別主義に起因するものが多い。申請手続きそのものに関する情報を充分に得られなかったり、支援団体とつながることができなかったりする人々は、生活保護の対象となることが難しい。生活保護で暮らす人々に対する「不当にトクをしている」という批判の原因の1つは、生活保護制度の選別主義的な性格そのものにある。 
     
 そこから、「不当に恵まれている」「義務を果たさず権利ばかりを主張する」「納税者に損をさせている」といった各種のパターンが派生する。さらに、そういった憤懣が政策的に利用される場合もある。

 今回の伊是名さんの移動の目的が旅行であり、ヘルパーを同行させていたことは、「不当に恵まれた障害者」という妬みにつながったかもしれない。また、熱海駅から自費でのタクシー移動を行わなかったこと、前日や1週間前に事前の申し入れをしていなかったことは、「義務を果たさず権利ばかりを主張する障害者」という怒りにつながったかもしれない。

 しかし、病気や負傷によって、一時的に歩行が困難になることは有り得る。障害者がいつでも安心して利用できる公共交通機関は、誰もが必要に応じて、安心して利用できる公共交通機関でもある。生活保護の今後について、「現金給付から現物福祉へ」という意見もあるが、公共交通機関のバリアフリー化や介助体制は、まさに「現物福祉」そのものだ。それなのに、なぜ「ネット炎上」が起こったのだろうか。

 福島県で、障害を持つ娘とともに生活保護で暮らすミサトさん(40歳代)に、意見を求めてみた。ミサトさん自身も、複数の持病を抱え、療養生活を送っている。