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鶴亀新喜劇 旗揚げ興行の初日はもうすぐです。
そやけど…。
(千代)死ぬほど つらい恋やてよう言いなはるな。
稽古場に千之助さんの姿はありませんでした。
これ… これ 直どん。
回想 (一平)ほな 読み合わせや。
(千之助)わしは やらん。
千代…お前がせえ。
お前が主役じゃ。
何じゃ お前。何じゃやあれしまへん。
あの 「そういう あなたこそ 生娘の初恋を踏みにじったドタヌキのくせに」て何で あれ ドタヌキなんだす?知らん知らん。 一平に聞け あほ。
せやけど あこは千之助さんが書きはったとこやし。
知らんちゅうてんねん 邪魔くさいのう。お前 自分で考えろ あほ。
おい お前…!
ごお~!
(千之助)変な音出とる お前 だんないか?
タヌキやのうて ドタヌキ…。
(千之助)そんなんな…そんなこと考えて わしも書いてない。
変な おばはんにいたいけな じじいが殺されかけとる~。
(みつえ)すんまへん 騒がしくて。
(千之助)苦しいわい! 苦しいわい!鼻と口 塞ぐな あほ!
タヌキやなかったら 何が…。
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
お前 もう やめときって お前。
ちょっことだけ ちょっことだけちょっこと…。もうあかんて。
何でやねん。
何でやろ… どないな芝居したらええのか分かれへんようなってしもた…。
絶対 失敗できへんのに…。
この道頓堀を もっぺん芝居の街にせなあかんのに…。
(鶴蔵)もういっぺんあのころの道頓堀を取り戻す。ほんで次の時代に つなげなあかんのんや。
堪忍…。千代 お前 もうあかん。
嫌や それ嫌や。 ちょっと…。
(寛治)ただいま~。やめとけ。ああ もう お前。 もうええから。
あっ お帰り。 お帰り 寛治。
千代さん これ。千代さん宛てに届いたって熊田さんが。
はい。
前と おんなじやな。
どなたさんか分かれへんのやけど…。
この人も生きてはったんやな。
俺らのやることは 今も昔も変われへん。
見てくれる人に一生懸命 芝居するだけや。
若旦さんとご一緒やいうたかて楽しい うれしいことばっかりやあれへんで。
どんだけ つらいことがあっても苦しいことがあっても若旦さんに ぐっと しがみついておそば 離れるんやない。
分かりましたな。(灯子)はい。
よろしゅうお頼申します。
それでは ここでこの「お家はんと直どん」がどないなお話か簡単に申し上げておきます。
若い恋人同士の明夫と妙子は家柄の違いを超えて結婚を望んでおりました。
明夫の母 てるも初めは その結婚に賛成していましたが妙子の父親が直吉だと知った途端猛反対します。
実は てると直吉はかつて 親の反対を押し切って駆け落ちを約束した仲だったのです。
けど その約束は守られずお互いを恨みながら時がたちました。
お父さん 頼んます。ああ 分かってる。
その2人が 40年ぶりに再会する場面です。
(拍手)
(みつえ)よっ 千代!
(拍手)
ごめんやす。
(笑い声)
私は 糸文の明夫の母ですけど。
明夫 ここへ来てしまへんか?
若旦那は 来ておまへんで。
親として この結婚は反対です。
あんたさんは生娘の初恋を踏みにじるおつもりですか。
そういう あなたこそ 生娘の初恋を踏みにじった ドタヌキのくせに!
(拍手と笑い声)
誰がドタヌキですねん。
これ 直どん。
直どんとは?
なんぼ しわくちゃになったか知らんけど私のことを忘れるやなんて…。
てるさん!
あんた おてるさんかいな。
ああ えらい年季が入ったなあ。
(笑い声)あんたに言われとうない!
おてるは原田さんとこへ嫁に行くと承知した。
「お前 もう おてるのことは諦め」て。
誰です 原田さんて。
誰です? 原田さん。私が聞いてますのや!
わしが知るかいな。
私は今日まで あんたに だまされた傷物にされたと恨んでました。
けど…。
けど?
そない恥ずかしいこと言えますかいな!
(拍手)
わしは あの時から ずっとあんさんのことを思ってましたんやで。
ずっと 私のことを?
ああ そうや。
ほかの奥さん貰て娘さんまで いてるくせに!?
それとこれとは 話が別やがな。
もう取り返しのつかへんことですけどあんたの気持ち分かってうれしいわ~ 直ど~ん!
(拍手)
お家さん はよ上がっとくなはれ。
おおきに。
(笑い声)
直どん。
お家はん。
もっと何とか言いようがおますやろ。
ほな 昔に戻って 嬢さん。
直どん。
ん~ 嬢さん。
直どん。嬢さん。
ああ~ もう ええ年して恥ずかしい!
(万歳)明夫~!
(万歳)明夫!
お母さん 何で ここに いてはりますのや。ああ そら ちょっと…。
お母さん2人は こないに思うてますのや。
捜し出して一緒にさしてあげたら どないだす?
このとおり 頭を下げて お願いします!
許したげます。
お母さん! ありがとう!
明夫!
ずっと隠れてましたんや。
ほな さっきの話は?
すんません みんな聞いてしまいました。
嫌だ もう恥ずかしい!
(拍手)
さっきの話て何や?ああ もう よろし よろし。
明夫 妙子さん。
これから まるで違う家のもん同士が一緒になっていきますのや。
考えが食い違うこともようけありますやろ。
せやけどな昔に縛られて 今を見失うたらあかん。
なあ 直どん。
ああ そうですな。
あんたら若いもんがこれからの世の中 引っ張っていくんや。
頼んだで。
(2人)はい。
(柝の音)
(拍手)
(拍手と柝の音)
よっ! 千代!
(拍手と柝の音)
(千兵衛)よかった! よかった!
(熊田)社長…。
道頓堀喜劇の 新しい幕開けや。
はい!
♪~
千さん。
どこ行きはるんですか?
おう…。
もう やることは 皆 やったしのう。
ここにおる意味 あらへんのじゃ。
何言うてはります。
千さん いてはれへんかったらうちらは どないしたらええんだす。
今回 わし 何した?
それでも お前らは 見事にやったがな。
ええ芝居やった。
天海… お前のお父ちゃんにやっと義理果たせたわ。
今までほんまに ありがとうございました。
あなたから貰たもんは何一つ無駄にはしません。
元気での。
(天晴)千さん…。千さん!千さん どこ行くんですか! 千さん!
じゃかましわい!
千之助さん おおきに。