COCOA不具合、品質管理の責任あいまい 厚労省報告書
厚生労働省は16日、新型コロナウイルス対策の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の不具合の要因や再発防止策に関する報告書をまとめた。接触通知が長期に届かなかったのは、アプリの品質を管理する実施主体を巡り、厚労省と事業者で認識が共有できていなかったためと指摘した。
厚労次官らの厳重注意の処分も発表
報告書では不具合の放置の要因を厚労省と委託業者の間で業務範囲に「認識のずれがあった」と説明した。報告書は厚労省が外部のIT(情報技術)専門家らとともにまとめた。不具合の放置が続いた本質的な要因や責任のあり方などについては、なおはっきりしない部分も残っている。
田村憲久厚労相は16日の閣議後の記者会見で、同日付で樽見英樹厚労次官と正林督章健康局長を文書による厳重注意の処分にしたと発表した。アプリ開発・運用について「厚労省の知識や経験が非常に乏しく、人員体制も不十分だった。プロジェクトを適切に管理できていなかったところは非常に反省しないといけない」と述べた。
アプリは感染した人との接触履歴を記録し、感染の可能性があると通知する仕組みで2020年6月に配信を始めた。9月にアプリを改修した際に障害が生じ、グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマートフォンでは4カ月以上にわたり感染者との接触が通知されない状態だった。
ココアのダウンロード数は当時2400万件を超え、うち3割がアンドロイド版の利用者だった。報告書では、こうしたアプリを導入する際に基本となる動作テストを厚労省側が重視せず、きちんと実施していなかったことを問題視した。外部システムと結合して接触通知するところまで一連の流れを確認するテストは行っていなかった。
長期の見逃し「不具合の発生以上に問題」と指摘
不具合は、20年11月にインターネットサイトで指摘されていたが、SNS(交流サイト)などで話題になった21年1月に委託業者が確認して不具合を認識した。報告書では不具合を長期に見逃した点について「不具合が発生したこと以上に大きな問題」と総括した。
ココアの開発は人材大手パーソルホールディングスの子会社パーソルプロセス&テクノロジー(東京・江東)が委託先となっていた。報告書では厚労省との調整が十分でなかったと分析した。同社はコロナの感染者情報を一元管理するシステム「HER-SYS(ハーシス)」も開発した。アプリの開発には再委託する形で日本マイクロソフトなども携わった。
報告書では再発防止に向けて、開発当初から総合的なテストの環境を整備することや、不具合が起こることも織り込んだ人員体制への強化が必要だと提示した。外部の有識者や、デジタル庁創設の準備を進める政府の情報通信技術(IT)総合戦略室と連携することなども盛り込んだ。
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