時代が進み、医学が進歩するにつれ、ワクチンのリスクは減少している――。その考えも、大きな誤りだ。技術が進歩したことで新たな危険性も生まれている。前出・オスターホルム氏が語る。
「ワクチンの型は大きく5種類にわかれます。不活化ワクチン、弱毒化ワクチン、組み換えタンパクワクチン、核酸ワクチン、それにウイルスベクターワクチンです。
コロナ対策としては、開発のスピードが速いということで、核酸ワクチンとウイルスベクターワクチンの2つが先行しています」
この核酸ワクチンとウイルスベクターワクチンは「遺伝子ワクチン」と呼ばれるものだ。
「ワクチン」と言われたときに我々がイメージする「弱らせた(無害化した)ウイルスなどを体内に注入することで、それに対する抗体を作る」というのは、不活化ワクチンや弱毒化ワクチンのこと。
しかし、遺伝子ワクチンというのは、これら従来型のものとはまったく別物だ。国立遺伝学研究所発生遺伝学研究室教授の川上浩一氏が解説する。
「遺伝子ワクチンはこれまでのワクチンとは根本的に原理が異なります。簡単にいうと、新型コロナの遺伝子の一部を接種することで、人間の体内で新型コロナのたんぱく質を作らせ、抗体を生み出そうという原理です。
いわば人間の体自身をワクチンの製造工場にしてしまう仕組みなのです。遺伝子ワクチンはこれまで承認された例はほとんどなく、未知の領域です。
仕組み自体が未知のものなので、いきなり数億単位の人間に接種した場合、何が起きるのか、予測することができません」
これまでウイルスベクターワクチンは、少数の患者を対象としてエボラウイルスワクチンのみ承認されている。核酸ワクチンに至っては、人間への実用化の例はない。
日本が提供を受けることが決まっているアストラゼネカ社、ファイザー社、両社のワクチンはいずれも遺伝子ワクチンだ。
「遺伝子ワクチンは、これまでのワクチンでは確認されなかった疾患が起き得るのです。仮にコロナの遺伝子が人間の生殖細胞に侵入するような事態が起きれば、がんなどの疾患を引き起こす可能性もあります」(前出・感染症医)
すでに不穏な「予兆」は起き始めている。9月にアストラゼネカ社のワクチンの治験参加者に「横断性脊髄炎」が出たことが判明。これは神経の炎症による麻痺症状が出る疾患で、同社は一時、治験を中断した。