2021年1月20日
東北大学と名古屋工業大学らの研究グループは2020年1月19日、高性能なマグネシウム蓄電池を実現する新たな正極材料の開発指針を見出すことに成功したと発表した。長年の課題とされていたマグネシウム蓄電池の正極材料の高性能化に大きく貢献する成果だという。
マグネシウム(Mg)は、広く普及しているリチウム(Li)イオン電池で利用されているグラファイトに対し、約6倍の理論容量を持つ。また、Mgは手に入りやすいため、Mg蓄電池は安価で高容量な次世代蓄電池の一つとして期待されている。
すでに一次電池としては実用化されているが、2価のMgイオンを最適に充放電可能な、高性能なサイクル特性を持つ正極材料の開発が難しく、これが充電が可能な二次電池としての性能向上の障壁になっていたという。
研究グループはこれらの課題を解決する新たな正極材料として、高電位・高容量を示すスピネル型酸化物に着目して研究を行ってきたが、サイクル特性が乏しいことが課題だった。これら従来の材料では、イオンの挿入(放電)により岩塩型構造への相転移が容易に生じるため、Mgイオンの拡散の遅い岩塩相が活物質粒子の表面を覆うことで充放電の進行を妨げることや、相境界の局所ひずみによる活物質粒子の破壊などがサイクル劣化の要因として考えられてきたという。
そこで今回研究グループはサイクル劣化を抑制するため、Mgイオンの新たな拡散パスおよび収\納サイトを導入することを目的とし、従来のスピネル型構造の八面体サイトにカチオン(陽イオン)欠損を有する欠陥スピネル型構造に着目。そして、スピネル型構造を安定化する亜鉛(Zn)、高価数の4価でも安定なマンガン(Mn)を用いた、Zn-Mn系欠陥スピネル型酸化物のZnMnO3を利用し、高電位(2~3ボルト級)、高容量(約100mAh/g)を保ちつつ、従来材料を上回る高サイクル特性の実現に成功した。
ZnMnO3の電気化学測定は、Mgイオンの拡散を促進するため、150℃に昇温したイオン液体を用いて実施。カチオン欠損サイトへのMgイオンの挿入が優先される放電範囲では、従来の密な岩塩相を生成する反応ではなく、構造変化の抑制された放電反応(Mgイオンの挿入)が進行することが示唆されたという。
また、このような充放電容量の範囲内(約100mAh/g)でZnMnO3の充放電試験を行うことで、100サイクル超の充放電が100日以上安定して実現することを示しました。充放電時のエネルギー密度(Mg金属負極の重量と理想的な電位を考慮した値)は200~300Wh/kgと見積もられ、これは従来型のLiイオン電池の理論エネルギー密度(370Wh/kg程度)に迫る値だ。
今回の成果について研究グループは、長年の課題であったMg蓄電池用正極の高性能化に道を拓くものであり、高エネルギー密度のMg蓄電池の実現に向けて加速度的な研究開発の進展が期待されるとしている。現状では作動温度が高く、室温作動に向けては今後の材料設計による性能向上が必要だが、中温作動(100~150℃)の安全・安心な大型蓄電池としての利用も有望としている。
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