働く高齢者も多く、高齢者が活発に生活できるエリア
渋谷、原宿、代官山などの街を擁する渋谷区ですが、その一方で、神泉や代々木上原といった住宅街があるという特徴もあります。
区北部の中野区と隣接する初台や笹塚といったあたりには古い民家が立ち並び、小規模ながら商店街も充実。
高齢者が生活するにあたっても、非常に住みやすい地域となっています。
他の地域と比べても施設の数自体はそれほど多くはないようですが、北部の住宅街には商店街やスーパーなどもたくさんあり、日常生活に困ることはほとんどありません。
また、いわゆる“向こう三軒両隣”といった近所付き合いも豊富で、地域住民との関わりから楽しく、そして生き生きとした毎日を送れることでしょう。
また渋谷区は、働く高齢者が多いことも特徴です。75歳以上の後期高齢者でも約15%が働いており、今後も就労を希望する高齢者が増えると考えられる一方で、高齢者の就労機会を増やそうという民間企業の動きも活発です。
のんびりと自由な毎日を過ごすのももちろん良いですが、ある程度の刺激を受けながらの生活もまた、高齢者が長生きする秘訣でもあります。
渋谷区の高齢化は他区に比べて緩やか
渋谷区の人口は1997年を分岐点として微増に転じており、この傾向は当分の間変わらないものと予想されています。
そのなかで、高齢者の割合は一貫して高まっていますが、その歩みは極めてゆっくりとしているのが特徴です。
区内では1994年以降、子育てをする世代が各地から区内に流入し、世帯数が増加。そのため、15歳未満の年少者の割合も高齢者と同様にゆっくりと増えています。
渋谷区の高齢化率の進行速度はほかの地域と比較するとゆとりがありますが、高齢者の世帯をめぐってはいくつかの問題があります。
例えば、2011年3月に発表された報告書によると、要介護・要支援の高齢者の33.4%が単身者であること、夫婦だけで生活している要介護・要支援の高齢者は15.7%に達していることが読み取れます。
実際のところ、要介護や要支援の認定を受けた高齢者については今世紀に入ってから徐々に増えており、この状況にふさわしい介護政策を次々と実行に移していくことを求める声が区民の間から上がっています。
居宅介護支援サービスの利用率が高い
現在の渋谷区では、要介護・要支援の認定を申請する区民が少しずつ増加。2017年時点で8,446人となっており、第一号認定者が圧倒的に多く、常に97~98%前後に達しています。
介護度の状態を調べると、要支援1の方がいちばん多く、常に20%前後を維持しています。
要介護5の方はいちばん少ないですが、それでも常時10%前後となっており、きめの細かいケアサービスの供給が必要とされています。
区内で居宅サービスを受給している方は多く、区の発表によれば毎年連続して5,000人を超えていますが、地域密着型サービスや施設サービスについてはどちらも1,000人に達していません。
渋谷区は、介護サービスの実態を探るため、区内の介護事業者にアンケート調査を実施してきました。
その報告書によると、事業者が提供しているサービスの50%が居宅介護支援サービスで占められていることがわかりました。
ちなみに、訪問介護サービスや介護予防訪問介護サービスに関しては、どちらも42.4%という数値が記載されています。
渋谷区に居宅介護支援サービスを求める高齢者が多いことは間違いないため、その需要に応えられる体制をつくることが早急な課題。あまり使われていないサービスについては、情報の周知に尽力する必要があるでしょう。
介護予防のための「健康はつらつ事業」を推奨
渋谷区では、以前から介護予防サービスを推進しており、区民は自身の状況に合わせてさまざまなサービスを選べるようになっています。
施設へご自分で通所できる方によく推薦されているのが、「健康はつらつ事業」です。これは、ヨガや太極拳、体操といった内容を、ご高齢の方でもできるようにアレンジしたもので、月に数回、参加者は楽しく身体を動かせるようになっています。
同様に、ご自分で通所できる方がよく参加しているのが「高齢者健康トレーニング教室」。これは、転倒など高齢者に多い事故を防ぐために、機械や道具を用いた運動を行うもので、筋力の維持が狙えます。
また、歯が抜けるなど口腔機能が低下しがちな高齢者に向け、「歯っぴぃ健口教室」は、口の機能を維持するために必要な知識や、具体的な手入れの方法などを学ぶ内容となっています。
「セーフティ見守りサポート事業」は、高齢者の状況を絶えずチェックするサービスで、必要があれば、介護や医療といったサービスを随時仲介します。
突然体調の悪化などに備えたい場合は、無線発報機を手元に置くことができる「緊急通報システム」への申し込みがおすすめです。
また、自炊が難しい場合は、一部の飲食店で食事の注文ができる「食事券」の販売が実施されています。
なお、既存の介護サービスだけでは足りないという場合は、「ホームヘルプサービス」を利用することで、生活援助や介護予防などの支援が受けられます。
NPO団体やボランティア団体が地域包括ケアの担い手として期待される
渋谷区では、国が主導する地域包括ケアシステムのガイドラインを参考にして、生活支援サービスの多様化を目指しています。
その一環で、これまでは社会福祉協議会の下で進められてきた生活支援サービスを、新たな統合事業と一体化することを検討しているところです。
もちろん、これまで活動してきた介護事業サービス事業者との関係がなくなるわけではありません。
今後は、そのほかの各地域で活動する団体ともどんどんつながりを深めて、家政婦紹介所やNPO団体、ボランティア団体などが地域包括ケアシステムの担い手となっていくことが予定されています。
すでに、区内各地で活動する医師や事業者などで構成される「渋谷区地域包括ケアシステム検討会」の手で、サービスの実現計画が進行中です。
このような新たな地域包括ケアシステムが、各地の高齢者も手元にまんべんなくいきわたるようにするために、区では生活支援コーディネーターの配置を決定しました。
それから、日常生活圏域を単位とした協議体を設置することも予定しており、在宅医療についても、在宅介護と合わせた改革が進められているところです。
地域包括支援センターと在宅医療連携機能が提携することで、介護サービスと医療サービス両方が在宅療養者のもとに十分届くようになるでしょう。
渋谷区の福祉サービス運営適正化委員会とは?
渋谷区では、介護相談員を配置しています。いずれも福祉や介護サービス全般について、豊富な知識や経験を持つ人材ばかりで、どのような質問や相談についても、専門的なアドバイスが期待できます。
渋谷区がこのような体制をとるようになった背景には、これまでたくさんの苦情や相談が区に寄せられてきたということがあります。
実際、2010年以後に絞っても、毎年20件以上の苦情が寄せられていました。2016年については、これまでの区の努力が実ったのか相談件数は20件を割り込んでいます。
相談内容の中でひと際目立つのは、要介護度認定に関するものです。2014年以後、この件に関しての相談は、連続して10件以上に達しています。
また、介護サービスの提供内容や保険給付の内容に対して、不満を覚える方が多かったことは否定できません。
2013年は、この件に関しての相談が過半数に達していました。しかし、2016年には介護サービスの提供内容や保険給付の内容に対しての相談は大幅に減っており、数年でかなりの改善に成功した可能性が感じられます。
そのほか、保険料の額や行政の対応内容、制度そのものに関する相談など、多様な相談が持ち込まれていることが公開されています。
何かサービスに対して疑問や不満を覚えたときは、速やかに相談員に電話してみましょう。