最新の介護サービスと多様な選択肢が揃う日本介護の最先端
東京都は何と言っても日本の首都。人口はもちろん、あらゆる店舗や施設の数、そして規模の大きさが日本最大を誇ります。
老人ホームの数も最も多く、利用を考えるにあたっては、施設の種類、規模、かかる費用などの面で多くの選択肢の中から選ぶことができます。
さて、選択肢が多いとはいっても、他の地域と比べ費用が若干高めなのも東京都の老人ホームの特徴です。
特に23区内、中でも高級住宅街を擁する世田谷区をはじめ、港区、目黒区、杉並区には、数千万円、中には億を超える額の入居一時金が設定されている施設もあります。
また、月額利用料も高めの設定なので、周囲の埼玉県や千葉県などと比べると、平均的に2~3万円は高くなるようです。
その分、24時間看護サービスなど、医療サポートの面で充実している施設が多いので、健康面に不安のある人にとっては高い安心感を得られるでしょう。
東京のその他の地域に目を向けてみると、江戸川区や葛飾区といった東部地区、そして北区や八王子市周辺、多摩地区では、比較的安価な施設を探すことができるでしょう。
とはいえ、文京区や中央区などの住宅街が少ない区や、東村山市、東大和市、武蔵村山市などには老人ホームが少ないのが現状で、東京の中でもこれらの地域では選択肢が限られてくることには注意したいですね。
東京と言えば“コンクリートジャングル”といったイメージを持っている人が多いかもしれませんが、高齢者に優しい街づくりを推進しているため、イメージほど住みづらさはありません。
施策としては、建築物バリアフリー条例(高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例)の制定やユニバーサルデザインを基本理念とした条例が施行されています。
また、東京都高齢者保健福祉計画として、介護サービス基盤の整備や高齢者の住まいの確保、介護人材対策の推進といった取り組みがなされているので、安心して施設への入居、そして東京での生活を考えてみてください。
東京都は全国で高齢者が一番多い都市
日本の首都東京は唯一の人口1,000万都市であり、計算上では日本国民の10人に1人が東京に住んでいることになります。
東京都は23区の他に26の市からなる多摩地域、町村部に島もあり、コンクリートジャングルという側面とは対照的な居住エリアが広がる地域もあります。
人口を年齢別に見ると、2015年のデータによれば14歳未満の年少人口は11.2%と全国平均よりも1%ほど低い結果になっている一方で、65歳以上の高齢者は22.2%で全国平均を5%近く下回っています。
比率の上では高齢化が進んでいないとしても、人口が多い分、高齢者の数も日本一多い自治体です。
東京都は千代田区や中央区、港区と言った都心部の平均年齢が非常に低いため、全体的には低い高齢化率になっています。
ところが多摩地域では軒並み全国平均かそれを上回っており、町村や島は高齢化率が30%を超えている地域ばかりです。
また、都心部は特に顕著な傾向として、単身や高齢者夫婦だけの世帯が年々増加していることが挙げられます。
既に東京都全世帯の20%以上が高齢者のみの世帯となっており、深刻な高齢者の孤独化が進行。東京都の試算では2060年には30%が高齢者のみの世帯になると予測されており、ますます地域で高齢者を見守っていく体制づくりが重要になってくるでしょう。
高齢者の約5人に1人が介護サービスを利用している
東京都は比率だけを見れば少子高齢化が進んでいないように感じられますが、何しろ人口が多く、率では表せない高齢者の多さは否めず、当然ながら全国で最も高齢者の方が多くなっています。
それに伴い、要支援以上の認定を受けている高齢者も多くなっており、2014年現在285万人が認定を受けており、これは高齢者の18%に当たります。
特に後期高齢者の方は全体の32%が認定を受けており、深刻な高齢化の余波が見られます。
全国的な傾向と同様に、東京都でも在宅介護の需要が高まっています。
2013年度の介護保険サービスを利用した方の78.5%が居宅型サービスを受けています。
特に訪問介護、看護は飛躍的な上昇度であり、2017年度には2013年比で訪問介護が114%、訪問看護に至っては160%近い上昇が見込まれています。
また、福祉用品の貸与や自宅のバリアフリー化などの改築費用の援助も、居宅型サービスの一環として年々増加している分野です。
デイサービスなどの地域密着型サービスも含めれば、在宅介護の支援サービスは全体の85%に迫り、完全に在宅介護の時代が到来していることがわかります。
施設型サービスも割合は減少しているとはいえ、人数は毎年のように増加傾向にあり、特に東京都は場所がら民間の有料老人ホームの利用が多く、全国平均の約2倍以上の利用率になっています。
その反面、グループホームの利用率が低くなっていますが、認知症の方の数が少ないという訳ではないので、老人ホームの受け入れ態勢の広さが東京都独自の特徴と言えるでしょう。
区や市レベルでさまざまな取り組みがなされる東京都の介護予防
東京都の介護予防事業は機能を回復させる訓練に偏りがちで、社会参加や生きがいの創出などの観点からのアプローチがなかったことが反省点だったとされています。
そこで、利用者が介護予防で身につけたものを社会に還元し、なおかつ積極的に社会活動に参加してもらえるような仕組みが考案されました。
また、より小さな単位で市区町村が地域の高齢者のニーズに合ったサービスを提供することが大切としています。
介護予防と共に、ちょっとした家事の手伝いや、配食サービス、買い物の付き添い等の生活支援事業も充実させていきたいと考えています。
例えば、世田谷区では地域包括支援センターの範囲で大学や喫茶店などに協力を依頼して、高齢者の集いの場を創出しています。
大学では通所型のサービスを利用していない人向けに介護予防運動やアート体験、子どもと遊ぶ会など、気楽に参加できる講座やイベントが行われています。
ある喫茶店はデイサービスなどを利用していない要支援者の集いの場として機能しており、和式トイレに簡易式の洋式便器を取り付けるなどの配慮も行われ、高齢者の外出支援の基盤になっています。
また、調布市では「ちょこっとさん」と題して、住民ボランティアの方が高齢者のちょっとした困りごとの解決に当たる事業が行われています。
これは住民ボランティアの7割以上が60歳以上の方で、例を挙げれば電球の交換や庭の草むしりなどを行うもので、なかには80歳以上の方もボランティアとして活躍されています。
高齢者が高齢者を支えるお手本のような制度であり、高齢者の孤立化防止や地域全体の見守りとしても機能しています。
「在宅療養支援窓口」が中心となって医療・介護の連携を行う東京都の地域包括ケアシステム
東京都は「東京都保健福祉計画(2015年度~2017年度版)」の中で2035年の地域包括ケアシステムのあるべき姿を発表しています。
①高齢者の住まいの確保②医療と介護を在宅で行えるネットワークの構築③認知症の方を地域で見守る体制④介護の仕事にやりがいを与え多くの人に介護職に従事してもらう⑤元気な高齢者が主体となって高齢者同士が支え合う地域づくり。
以上5つの柱を掲げて20年計画で取り組んでいます。
まず高齢者の住まい確保についてですが、東京都はまだ介護は必要ないが一人暮らしには不安があると言う高齢者の受け皿になる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の充実が目立ち、都心部にありがちな高齢者の孤独化問題を解消する手として推進されています。
医療と介護の両立は「在宅療養支援窓口」が軸となり、「地域包括支援センター」や各種病院との調整を行っています。
認知症支援においては人口の多さがアドバンテージとなるだけに、認知症サポートキャラバンなどのボランティアを増員して、徘徊高齢者の早期発見システムや認知症カフェの設置に動いています。
元気な高齢者の方には、働く機会や場所を提供する「シルバー人材センター」に登録してもらい、軽微な作業が中心ではありますが、就労することが可能です。
また、地域のボランティア活動やサロンによる介護予防運動などを主催するリーダーになってもらい、高齢者を高齢者が支える体制づくりを推進しています。
東京都福祉サービス運営適正化委員会とは?
福祉サービスなどを利用した時に「事前の説明とサービス内容が違った」「スタッフから虐待や不当な扱いを受けた」などの苦情がある場合、東京都ではまず事業者にその旨を伝えます。
苦情受付の担当者に直接伝えること以外にも、手紙や投書箱などで伝える手段もあり、そこで解決に至れば終了ですが、折り合わなかったり、そもそも直接苦情を言えない方がいた場合には、次の手段が必要になってきます。
そういった場合は、お住まいの市区町村に申し出ることになり、介護保険の担当課や包括支援センターのケアマネージャーに伝えます。
区市によっては専門の苦情対応機関が設置されている場所もありますので、確認してみて下さい。
それでも調整ができずに納得がいかない場合は、「福祉サービス運営適正化委員会」に苦情を申し立てることになります。
運営適正化委員会の利用には「相談」と「苦情申し立て」があります。
相談は事務局レベルで話を聞いて解決に向けたアドバイスや他の事業所の紹介などを行いますが、そこでは解決しないような難しい問題と判断されると「苦情申し立て」ということになります。
委員会が事業者に調査を行い、助言をしたり、再度の話し合いの仲介役なども努め、実際に虐待などの行為があった場合は東京都に通達し、行政指導を依頼することもあります。
苦情申し立てができるのは本人の他に家族や民生委員などで、しっかりと、ことの顛末を具体的に説明できる人というのが条件。基本は記名ですが、事業者に名前を伏せる方法を選ぶ事も可能です。