# 自衛隊

元女性自衛官が語る…自衛隊が「5分前の精神」にめちゃくちゃ厳しい、納得のワケ

【前編】すべては入隊後の集団生活にある
二見 龍 プロフィール

何事も5分前の精神。訓練時の行動は秒単位

二見 つまり、自衛隊では個人でやらなければならないことは、自分でやり切るということを徹底的に学び、できることを多くするということなのですね。これを通じ、みんなと協力するということもできるようになるのです。私はアイロンがけが下手で、二重線が出たり、服をたたむのがうまくできなかったり、点検でやり直しをさせられていました。

 

かざり 正直言って、私はすべてが苦手でした。掃除も苦手、アイロンがけも苦手。裁縫するのもすごく苦労しましたが、私のような元怠け学生であってもある程度のレベルになるように教育されていくのです。

たとえば、掃除では窓のサッシもきれいにするのですが、上から下にと合理的に掃除していくようにと……。個人的には靴磨きの時間が好きでしたね。無心になれるので。靴がきれいになっていくのを見ながら磨くのが好きでした。

いま入隊を悩んでいる人や、集団生活への不安を感じている人にも、「こんな私でも自衛官になれたんだから大丈夫だよ」って伝えたいと思っています。時間にルーズな人であっても、いずれ決められた時間の5分前に行動できるようになりますよ。

二見 自衛官は決められた時間通りに行動することを徹底して叩き込まれます。たとえば訓練時にはすべての行動は、分単位ではなく秒単位で合わせていきます。

戦闘行動の訓練時、大砲をドーンと打って「10時10分00(マルマル)秒弾着」というと、その瞬間に落ちるんですね。1秒の狂いがないのです。つまり、1秒が大事になってきます。そういうことを通じて、知らず知らずのうちに生活には「適時性」が求められてくるのです。

二見龍さんは陸上自衛隊時を陸将補で退官した(編集部撮影)

二見 行動原則には、「適時性」以外に「先行性」や「完全性」も求められます。「先行性」では先々の準備をし、「完全性」では、最終的にはやりきるということです。なかでも自衛隊では、この3つのなかの「適時性」を重視します。いついつまでにやると決めたら、そこまでに終わらなければなりません。できなければ、砲弾が落ちてしまうのです。

それをできるようにするために、かざりさんが言うように「5分前の精神」が必要になります。何事も逆算して5分前にはやりきるようになるので、そこに向けて先行性で準備を重ねていくのです。これを自衛隊では日常生活の中で学んでいくんです。

それができるようになると、完全性を追いかけていくことに充てられるのです。実際、5分前にすべてが完了できるようになると、次に何をすればいいかという先のことも考えられるし、精神的な余裕もできるのです。

関連記事