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元女性自衛官が語る…自衛隊が「5分前の精神」にめちゃくちゃ厳しい、納得のワケ

【前編】すべては入隊後の集団生活にある
「自衛隊式」がいま注目されている。大規模災害や、新型コロナなどの危機に際しても、負けない心や、ピンチを乗り切る術は誰もが認めるところ。その強じんなメンタル(心)とフィジカル(肉体)を育む基礎は、入隊直後の団体生活にあるという。

元陸上自衛隊幹部(陸将補)で、東日本大震災の災害派遣を中央即応集団司令部幕僚長として指揮した二見龍さんも、自衛隊体操を動画で広めている元陸上自衛隊陸士長で「恐ろしく美しい元自衛官」と話題のタレント、かざりさんもそう力説する。そのふたりの対談が実現した。

元の階級差は12ながら、貫かれているハートは同じ。日常生活や仕事でのピンチを乗り切るワザを2回にわけてお伝えする。その前編をお届けする。

心も肉体も一変。自衛隊集団生活でのしつけとは

二見 私は新著『自衛隊式セルフコントロール』に、絶体絶命の場面でも「最善手」を打てる極意を紹介しましたが、自衛隊に入隊すると心と肉体が訓練で鍛えられていきます。ひとことで言いますと、自己コントロール力が強くなる。それができると危険な状態や危機の時に対応できる能力が身につくのです。

私は防衛大学校を経て入隊しましたが、自衛官候補生として入隊する方も含め、同様に集団での生活としつけを叩き込まれます。それまでの身体が運動していない状態だったとしても、初期の集団生活によってぜい肉を落とし、フィジカルが強くなるのです。

 

この集団生活ではもうひとつ変わることがあります。個々人の意識が変わるのです。パソコンでいうと、いままでのOSから自衛隊式の新型のOSに変わるということ。OSとハードがいっぺんに変わるわけです。これを防大に入った新入学生と新隊員は必ずやります。

初期の教育が終わっても引き続き教育訓練を受けるのですが、そのときに新しいアプリケーションが次々にインストールされ、またバージョンも上がっていくのです。それが自衛隊での最初の生活です。

かざり まさに私もそうでした。学生時代は日本大学の芸術学部でデザインを学んでいたのですが、生来のマイペースで遅刻は当たり前で、ほぼ昼夜逆転の生活でした。かなり堕落した生活を送っていました(笑)。ですが、自衛隊入隊後は何もかもが一変しました。

それまでは目的意識もなく過ごしてきた一日が、朝起きてから寝るまでスケジュールがぎっしりと詰められています。最初はあわただしく時間が過ぎていきます。必死です(笑)。朝6時に起床ラッパとともに起き、点呼に出て、きれいに毛布をたたみます。その角も全部が直角になるようにきちんとたたむんですね。シーツもきちんとたたみます。

タレントのかざりさんは元陸上自衛官(編集部撮影)
かざりさんプロフィール=日本大学芸術学部デザイン学科卒業後、陸上自衛隊に入隊。任期満了で退職後、芸能活動を開始し、防衛省自衛隊東京地方協力本部国分寺募集案内所で初代応援大使に任命される。映画『ビューティフルドリーマー』に出演のほか、著書に『YouTubeで超人気!元女性自衛官かざりの即やせダイエット 個人授業』(宝島社)。YouTube公式チャンネル「かざりぷろじぇくと」の登録者は23万人超。キャッチフレーズは「恐ろしく美しい元自衛官」。

二見 それで点呼に出て居室の掃除をして身支度をするのですが、掃除では床の拭き方も決まっていて、少しの磨き残しもないようにやっていくのです。アイロンがけもやりますし、洗濯も、裁縫もやります。

靴は光っているのが当たり前で、靴紐も外側が上にきているか、爪は切っているのかも点検します。ロッカーを開けるとですね、下着がピチーとそろっていないといけませんし、本棚は高いところから低いところへきれいに並んでいないといけないのです。

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