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「好きな子へのいじわるを大人が許してはいけない」「男らしさから自由に」弁護士ママが伝えたいこと

これまで日本に長く、根深く浸透してきた性差別や性暴力の問題と向き合いながら、ジェンダーにまつわる発信をしている太田啓子さん。弁護士として活動しながら、私生活では12才と8才の男の子の母でもあります。
今まさに子育てのまっただ中にいるママ・パパへ向けて、これからの男の子の子育てで気をつけたいことや、性教育の大切さについて、聞きました。

「男の子の子育て」でずっと見落とされてきたことがある

――太田さんの近著『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるレッスン』では、ジェンダーバイアスの問題や子どもへの性教育方法など、弁護士として、男の子を育てる母として、両方の目線でとてもわかりやすく書かれていました。

太田さん(以下敬称略) 弁護士として離婚事案にかかわる中で、問題行動をとる人をしばしば見るのですが、女性の問題行動は結構バラバラなのに、なぜか男性は驚くほど似ている、と感じました。
たとえば、妻に対してモラルハラス
メントやDVをする男性の多くは、「自分が間違ったことをしている」とは認めないし、妻と対等でいられないんです。

典型的なのが、「妻になぜ暴力をふるったのか?」と理由を聞くと「口ごたえされたから」という回答が多いこと。自分の言うことに同調なかったから、従わなかったから、カッとなるんですよね。でも、妻への不満を言いながらも「離婚はしたくない」と。「行き違いがあってやり直せるはず」「妻の誤解さえ解ければ」「自分は謝ったのに許さない妻が悪い」など、自分が優位でいられる存在を身近に置いて、自我を保ちたいのだろうというようなメンタリティの主張ばかりです。

そうなると、言葉でのコミュニケーションが本当に難しくて、かみ合わないんですね。「愛している」「好きだ」という言葉で意味するものが、人によってこんなに違うのかと。その人たちに自分の問題行動を理解してもらうには、40才なら40年前に、50才だったら50年前からやり直してもらわないと無理なんじゃないか、と感じることがあります。

――大人になる前、子ども時代に受けた影響が大きく関係していそうです。

太田 そうすると、子ども時代の男の子たちへの、そのころからの、育て方、間違った方向に認識してしまいかねないようなメッセージを社会が発していないか、今までの子育てで見落とされてきたことがあるんじゃないか、というのがすごく気になるようになって。
私も子育てをしているので、「私はこう思うんだけども、みなさんはどうしていますか?」とせきをきった感じですね。

「好きな子へのいじわる」を大人が許してはいけない

――大人が「男の子だから」「女の子だから」という理由で、子どもの言動を容認したり、制限する場面を見かけることもあります。

太田 子育てを実際にしてみると、男の子と女の子が、社会からどう扱われるかが違うなということが、実感としてあります。同じようなやんちゃな言動をしていても、女の子は「行儀が悪いよ、はしたないよ」みたいに言われやすいのに、男の子は「男の子だね~」「ほっといていいよ」みたいな。

行動者が男か女かによって、社会の与える評価が違うということは、そこにバイアスがあるわけだから、それを是正するような働きかけを意識しないといけない気がします。

――子ども時代に許されてきたその感覚のまま、大人になってしまったら…と思うと、ハッとします。

太田 それを言うと、「男の子って好きな子にいじわるしちゃうよね~」っていうのも、問題だと思うんですよね。モラハラメンタリティになっちゃうよ、と。好意や関心をうまく表現できないことはしょうがないとしても、それを「かわいいね~」とか、「男子ってそんなもの」と好意無罪みたいに肯定してしまうのは、暴力性の萌芽(ほうが)を温存してしまわないかと気になります。

いじわるしたときに、大人が「好きなんでしょ~」みたいにいじったりせずに、正面から真顔で、「あなたがどう思おうが、相手が嫌と思うことをしてしまったんだよ」と伝えないといけないと思います。

子どもがしたことでも、殴る、けるといった行動はしかっているのに、動機が女の子への好意や関心だと、急にしかる手がゆるむ大人がいるんです。もちろん、女の子が男の子にいじわるすることだってあると思いますが、そのときに「女の子だから、好きな子をからかっちゃうんだね~」とはあまり言われませんよね。男が好きな女をからかうのはほほえましいことで、女はそれをやれやれ…と許さないといけない、という有害な神話を、解体したいですね。

親子で「性」について話し合える土台をつくる

――親世代は十分な性教育を受けてこなかったわけですが、太田さんは子どもたちには正しい「性」の知識を教えていくことが必要、と呼びかけています。

太田 私も含め、親世代は性について学校できちんと教わっていません。生きていく上で大な知識なのに、きちんと教わらないままのところに、ポルノなどで不正確だったり、ゆがんだ情報ばかりが入ってくるのは問題です。

私は専門家ではないので、絵本や漫画などに頼っています。男の子への性被害事件などもあるので、とくに就学前くらいの幼いときには『とにかくさけんでにげるんだ』(岩崎書店)などを読み聞かせていました。「水着で隠れるプライベートゾーンは体のとくに大事なところだけど、そこを触ってくる悪い人もいるから、お母さんは気にしているんだよ」と。

――子どもにどう伝えたらいいかがとても難しいので、本に頼りながら、親も一緒に学べるといいですよね。

太田 そうなんです。小学6年生と小学3年生になった今は『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA)と『マンガでわかるオトコの子の「性」』(合同出版)が子どものお気に入りです。長男は祖母にも「これおもしろいよ、おすすめ!」とすすめていました。

読んでいてわからないことがあると「体外受精ってあるけど、じゃあ体内受精は?」とか聞いてくることもありますが、「それは普通のセックスのことだね」と理科の授業のように淡々と答えています。「性」を下ネタとかいやらしいこととして伝えない、大人が恥ずかしがらない、人権にかかわる大事なことだよとまじめに語る、そういう態度を示すことも性教育だと思います。

子どものために親もバージョンアップしよう

――妊娠・子育て中の読者へのメッセージをいただけますか?

太田 懐かしい、うらやましい時期ですね。赤ちゃん時代の今を大事にしてほしい、という思いはすごくあります。あとはやっぱり、どの性別であっても、ジェンダーバイアスを押しつけるような言葉を子どもへ向けないことです。子どもの可能性を阻害してしまうことがあるから。親としての思いもあると思いますけど、子どもがより自由でいられるように、親自身の意識をバージョンアップしていくことが、新しい時代を生きていく子どものために大事だと思います。過去の自分の否定ではなく、新しい時代に適応していくために変わることに誇りをもって。「子どもと一緒に成長していこう!」と伝えたいです。

お話・監修/太田啓子さん イラスト/マシモユウ 取材・文/ひよこクラブ編集部

子どもの未来や可能性をつぶしてしまわないためにも、親自身の意識を変えていく必要性を強く感じます。
親世代がこれまで受け取ってきた社会からのメッセージが、新しい時代にそのまま通用するかどうか、ということを見直していきたいですね。


太田啓子先生(おおたけいこ)

Profile
弁護士。離婚・相続等の家事事件やセクシャルハラスメント・性被害、各種損害賠償請求等の民事事件を主に手がけている。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバーとして「憲法カフェ」を各地で開催。12才、8才の2人の男の子の母。近著に『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるレッスン」(大月書店)がある。


『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』

太田啓子著。1600円/大月書店

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