英検一級二次を受けるにあたってやったこと、やってよかったこと、やるべきでなかったこと。
(二次の結果はここにあります。)

正直、ギリギリ(68vs60)、しかも運よく受かった程度の実力の人間が対策を書くのも気が引けますが、もしかしたら同レベルくらいの人にとっては参考になるかもしれない、という気持ちで恥を忍んで記しておきます。

英検一級の一次試験が終わった(正確にはリーディング解いている時ぐらい)段階で一次合格を確信しました。
そこで、次なる試練が二次試験。
正直、一次を実際に受けてみるまで、英語力が前回よりさほど上がった実感がなかったので、「受かるか受からないかギリギリかな」という心持で、明確に自分が一次に合格するビジョンが無く、したがって二次試験はなにかはるか遠くの話、有るとは聴いているけれど、なんだか幻のような(笑)そんな印象の試験でした。
そんな状態で一次に受かってしまったからさあ大変。

というのも、僕の英語は完全に大学受験仕立てだったからです。
大学受験に当然、スピーキングは無く、英語をしゃべるのは単語帳の音読、リスニング対策のリピーティングやら、シャドーイングやらで英語を口にしていたくらい。
つまり、英語を「物事を伝えるツール」として使った経験は皆無。

二次試験の合格率は50-60パーセントくらいで、一次試験よりはるかに受かりやすい、という情報は持っていたので「一次受かれば二次はなあなあで受かるんでしょ、どうせ」みたいな気持ちでいました。
「まあ一応対策はしておくか。」という感じで、ネットで情報を探していると、

「帰国子女なのに落ちました。」
「英語で業務をしていますが、数点届かず!」
「夫がアメリカ人ですが、二次試験では何度も苦渋を…」

みたいな声がちらほら…
おいおい、どんな無理ゲーだよ二次試験。

もうこういう情報が集まって来た段階で「これはヤバイ」となり、真剣に対策を練りだしました。

二次試験は、ネイティブと日本人の試験からそれぞれ一人ずつとタイムキーパーによって行われます。
二次試験の流れは、

カジュアルスピーチ(~2分):自己紹介とか、「どっから来たの?」とか、「どれくらいかかったの?」みたいな会話。

トピック選びとスピーチ構成(1分):5つのトピックが書かれた紙からスピーチするトピックを選び、スピーチを考える。

スピーチ(2分)

質疑応答(~5分?)
:スピーチの内容について、面接官からいくつか質問され、それに答える。

が定型となってます。
一番恐ろしい部分が2分間のスピーチじゃないでしょうか。
少なくとも、僕はこの2分間のスピーチが一番の難所だと踏んだので、1分弱でスピーチを考えて2分間英語で話すためにはなにをすれば良いだろう、と考えました。

まず、思い浮かんだのがスカイプ英会話。
料金もそんなに高くないし、ギリギリ出せないことはない値段。
しかし、「やっぱり英語喋るには英語喋る人と話さなアカン」という考えに背中を押されつつも、最後までネット英会話を使わなかった理由は僕のしょーもないプライドにありました。

「俺が英検一級をわざわざとろうとしてる理由はなんだ?」
「そう、俺を留年させたあの英語教師が英検一級を自慢していたからじゃないか」
「英検一級に受かってあの教師の鼻をへし折りたい」
「ただ受かるんじゃダメだ、独学で受かるんだ!

もうね、ただのアホです。
でも、まあそんな顛末でとりあえず今回は英会話の力は借りないことにしよう、と心に決め、たどり着いたのがモデルスピーチの暗唱。



↑をすぐさま購入、早速研究室のベランダで毎日覚えては音読、覚えては音読を繰り返しました。
5スピーチ(1000語程度)/日のペースで暗記、4日で20スピーチを書いてあるまんま暗記しました。
そして迎えた5日目、

「20個もスピーチ覚えたし、ペラペラになってるに違いない」と思い、試験形式に合わせて過去問にチャレンジ!
そして、希望は見事なまでに打ち砕かれます。
言葉がでてこない。
絶望しました。

「やっぱり、日本から出たことのない人間に二次試験突破は無理なんだ、もうダメだ、撤退しよう」

何度もそう思いました。
そんな絶望に打ちひしがれている時にこの記事で、皆さんがくださったコメントが僕にヒントを、「行けるかもしれない」という気持ちを与えてくれました。
本当にありがとうございました。

要するに、僕は「完璧な文法で話すこと」に拘泥していたわけです。
「これの冠詞はどっちがいい、三人称単数のsを忘れないように、この名詞は可算か不可算かどっちだっけ、ここの前置詞にはどれが適切だろう」
みたいなことがスピーチ中にぐるぐるぐるぐる頭の中を回って、結果的に言葉が出てこない、という事態に陥っていました。
「てきとーに喋ろう」と思いました。
こう考えられる状態に至ったことが1つ目の幸運。

もう一点、自分のスピーチのハードルを上げすぎていたことがわかりました。
これを教えてくれたのは目指せ英検1級!英語スピーチ対策というサイトです。
「二次試験怖いよ、二次試験いやだよ」タイム中にネットサーフィンをしていて見つけました。
ここに書いてあるものすごい量の合格者体験記、サイトを造られたhersheyさんの二次試験に対する考察は僕にとってはまさに二次試験を突破するための武器の貯蔵庫のようなものでありました。
このサイトには本当に助けられました。
このサイトが無かったら、ほぼ確実に落ちていたと思います。
これが2つ目の僕の幸運。(ちなみに合格後に僕も体験記に載せてもらいました。笑)

二次試験は英語を使ってのコミュニケーション能力を見るわけなので、スピーチの内容は(合格を目指すだけなら)割とどうでもいい。
とりあえず、何か喋ることが大事。
どんな幼稚な理論でも問題ない。

そう思った僕が次にとった行動は、ネットで拾える二次試験の過去トピック全ての印刷でした。
これからタイムリミットになるまでは、とにかくスピーチを作りまくる。
覚えるのではなく、スピーチを即興で作れる、という状況を目指す、という方針で改めて勉強をスタート。
一日あたり7スピーチほど作りました。
この時、どんなに自分が苦手な分野のトピック、どんなに意見がないトピックでも、スピーチをつくる。
幼稚な理論でも、もっといえば破綻していてもいい、関連することをスピーチの体で書く、ということを意識しました。
スピーチの具体的な作り方としては、まずはできるだけ簡単な日本語でスピーチを書く。
その後、それを英語に訳していく、という方法をとりました。
これには以下の理由があります。

1)1分間のスピーチ考案時間は日本語で考えた方が効率が良い。(hersheyさんのサイトの受け売りです)
2)そもそも英語でいきなりスピーチを考えるのが僕にとってはハードルが高い。
3)日本語で難しいスピーチを組み立ててしまうために、英語への翻訳が難しくなっている感がある。
簡単な日本語で論を組み立てる訓練をする。

例えばトピックが、「Do women's rights get enough attention?」(人々は「女性の権利」について十分関心を持っているか?)であった場合。

導入:
最近、有名人が女性の権利についての運動してる。
TIMEで読んだ。
でも、私はwomen's rights get enough attentionとは思わない。

body1:
その理由の一つは、女性差別を行っている人が差別に気付いていない場合があるからだ。
僕の友達にハンサムでめっちゃモテる男の子がいる。
彼にはいっぱい彼女いる。
人々、特に男たちは彼のことをヒーローのようにもてはやす。
一方、僕の友達に美人で誰に対しても優しい女の子がいる。
彼女もモテる。
いっぱい彼氏いる。
人々、特に男たちは彼女のことを悪くいう。
行動は同じなのに、性別によって人々の態度が変わっている。
こういったことは当然だと思われているが、差別の一種だと思う。

body2:
二つ目の理由は、女性自身である。
女性の中には、都合のいい時だけ女性の権利を使う人がいる。
自分たちに都合の良い差別は問題にせず、自分たちに都合の悪い差別だけを問題にしている。
しかし、権利には責任が伴う。
そのことを理解していない人たちが、女性の権利へのattentionを妨げている。

結論:
以上の理由から、私はwomen's rights get enough attentionとは思わない。



という感じです。(スピーチの骨子がアホすぎて恥ずかしいですが晒します…)
念のために言うと、上記の考えは『僕の』意見ではなく、『とっさに思いついただけの誰かがどっかで言ってたような』意見です。
重視することは、どれだけ早く2つの根拠(弱くても全然良い)を思いつくか。
あとはその根拠をどれだけテキトーな具体例で太らせられるか。

僕は小学生になった気分でスピーチを考えることを意識していました。
通常の頭でスピーチを考えると、やたらと難しい言葉を使いたがる、意見の裏付けを厳密に、強固にしようとしてしまい、結果それを英語にすることができない。
英語上級者ならば鼻で笑うであろう戦略ですが、英語弱者の僕からすればもうこの方法しか無かったんです。笑