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最強呪族転生~チート魔術師のスローライフ~ 作者:猫子

第一章 幼少期編

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十三歳⑥

 しかし、倒れた大人二人を連れてどうやって帰ればいいものか。


 それに、足も痛い。

 もう一歩も歩きたくないを通り越して一生歩きたくない。


 大人達が起きるまで休んでいてもいいのだが、グレーターベアが出たようなところで長時間留まるというのはあまり得策とは思えない。

 グレーターベアを切り飛ばしたときの魔術で、魔力をほとんど吐き出してしまった。

 次に同じものが来たとき、対処できるかどうかはわからない。


 それに俺も、森中で色々なことがありすぎて疲れてしまった。

 正直、一刻も早く帰りたい。

 ジゼルに会いたい。

 まさかこんなに長引いた挙句、希少魔獣の襲撃に遭うとは思わなかった。

 ジゼルもなかなか俺が帰らなくて不安がっているはずだ。

 ごめんよジゼル、こんなに長旅になるとは思っていなかったんだ。


 しかしまさか、シビィに背負ってもらうわけにもいかない。

 今はさっきグレーターベアに襲われて傷心なこともあってか俺に従順なので、頼めば従ってくれそうな気もするが、後々なんだか変な尾を引きそうな気がする。

 それに父とガリアもなんとか連れ帰らなければいけないのだし……ああ、そうだ。

 オーテムを彫ってその上に乗れば、俺も歩かなくて済むし父とガリアも連れて帰ることができる。


 来るときも、オーテムに乗って移動するという案は考えていた。

 考えてはいたのだが、父が怒るので諦めていた。

 体力をつけに行こうとしているのにお前は馬鹿かと、一蹴されてしまった。


 今はそれどころではないし、ちょうど切りたての木が沢山ある。

 森奥の木は魔力が高いと聞いたことがある。オーテムの材料としては持って来いだろう。


 ただいざ彫ってみようと思うと、手に力が入らず、視界も眩む。

 思ったよりも身体にガタが来ている。

 魔術もそうだが、なにより歩きすぎた。


 俺は後でオーテムに魔術を掛けて動かさなくてはいけないのだし、シビィにオーテムを彫ってもらい、その間に少し休憩させてもらうことにした。


「悪いな、シビィ」


「いえいえ、これくらいは俺にやらせてください!」


 なんだか、すっかり仲良くなってしまった感がある。

 森に入る前はいつかシビィに鶏の大群を嗾けてやろうと計画を練っていたというのに、世の中どう転がるかわからないものだ。


「でも俺、手先不器用だから、あんまり上手く彫れませんけど……」


「塗料もなしに森中を移動させたら、どうせボロボロになるだろう。使い捨てになるから、見栄えは気にしなくていいから、完成の速さ重視で頼む」


「わかりました!」


 今回はただ動けばそれでいい。

 余計な機能を付加する余裕はないし、その必要もない。

 シビィは木彫用ナイフを持ち歩いていなかったらしいので、俺のものを貸すことにした。


「このナイフ、使いやすいですね。俺の家にある奴より、よく切れます。

 このサイズの木でオーテムを四つも作るなんて一日掛けの作業になるんじゃないかと思いましたけど……これで表面削って顔を描き入れるだけなら、すぐに終わりそうです」


「ああ、そのナイフ、俺が術式を刻んだんだ。いくら彫っても疲れない用に試行錯誤を重ね、極限にまで腕に掛かる負担を減らしてある。魔力を掛ければ、この辺りの木なら豆腐のようにすぱすぱ切れるはずだ」


「とうふ?」


 ふふん、しかし、よく気が付いた。

 今度、シビィにもひとつ作ってやろう。

 いかんいかん、褒められるとどうしても得意気になってしまう。


「でもこればっかり使ってたら、腕の筋肉が鈍りそうですね」


「あ、ああ、うん、そうかもしれないな。俺もそんな気がしてたわ、うん」


 俺は色々と考えながら横になり、空を見上げてオーテムの完成を待つことにした。

 十分おき程度に父とガリアの様子を確認したり、近くに危険な魔獣の気配がないかを魔術で軽く確認したりする。


 横になっていると少しうとうとし始めてしまったので、俺は首を強く振って意識を強く持つ。

 やっぱり、身体の疲労がかなり激しい。

 アベルポーションを持ってくるべきだった。


 顔を上げると、シビィはすでに二つ目のオーテムを彫っているところだった。

 刃先で目の部分を描き入れている。


「シビィ、顔を彫るときは柄ではなく、刃の部分をペンを握るように……」


「あ、そういうやり方があるんですか。いや、でも見てくれは気にしないって」


「いや、そうなんだけど最低限はっていうか……。あ、あと、完成した方のその面、ところどころ皮が残ってるのをもうちょっと削ってくれたら……」


「え、いや、アベルさん、見てくれは気にしないって……。そんなに丁寧にやってたら、先に父上達が目を覚ましますよ」


「あ、ああ、そうだったな。すまない、口出しは控えよう」


 確かにそう言った。

 言ったのだが、それでもどうしても気になってしまう。


「その、シビィ……そのナイフは、刃の背に親指を引っ掛けた方が……。いやいや、これはあれ、こっちの方が作業時間も短く済むはずだから! 慣れれば!」


「あ、は、はい!」



「あ、その部分……いや、その、口の部分。できれば削ってやり直してほしいかなって。いやできればっていうか、嫌だったらいいんだけど、うん」


「……はい」



「シビィ、いいことを思いついた。やっぱりこのオーテム、腕をつけてみないか? 彫り直しってことじゃなくて、別個に腕を作って側面に穴を開けて……」


「…………」


「あれ、シビィ? 聞こえてるか、シビィ? 何で無視するんだ、おーい」



「シビィ……言い辛いんだけど、やっぱりそこの部分は……ああっ! なんでナイフを突き立てるんだ! また削り直しになるぞ! 傷むから、ナイフも傷むから!」


 途中で再び俺とシビィの間に亀裂が走りかけた気がするけれども、なんとか大きなオーテムが四つ完成した。


 しかし色がなく飾りつけもされていないオーテムを見ていると、あれこれ付け加えたくてそわそわしてくる。

 皮も削りきれておらず、ほとんど顔のついた丸太状態である。

 完成速度重視だから、仕方ないのだけれども。

 これだけ大きなオーテムだ。色々と応用のしようがあるはずだ。


「……アベルさん、腕はつけませんよ?」


「い、いや、わかってるって」


 俺はシビィと協力して、父を運ぼうとした。

 俺の側だけ持ち上がらなかった。

 シビィがオーテムの上に父を乗せてくれた。


 ……ちょ、ちょっと筋トレから始めてみるかな。

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