新型コロナウイルスの流行が続く米中西部ノースダコタ州の病院を訪れた子どもら=2020年11月(ゲッティ=共同)
◆―― コロナ感染回復期
新型コロナウイルスに感染した子どもに全身性の炎症が起きる事例が世界で相次いでいる。症状が似ている「川崎病」とは異なる病気で、日本でも複数確認され、米国では死亡した例も。患者数は少ないが、感染回復期に発症する傾向が見られ、欧米では黒人、ヒスパニック(中南米系)、アジア系に比較的多いとの指摘もある。医療関係者が注意を呼び掛けている。
「小児多系統炎症性症候群(MIS―C)」と呼ばれ、下痢、発熱、発疹などが見られ、心臓の動きが悪くなる特徴がある。人種による発症率の違いについて、欧米の医療関係者は家庭の貧困から医療を十分に得られていないことや遺伝的な要因が影響している可能性もあるとしているが、原因は分かっていない。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国内では昨年5月から今年3月29日までに3185人が発症し、うち36人の死亡が確認された。患者の大半は1~14歳で、年齢の中央値は9歳だった。ヒスパニックや黒人の子どもに多かった。
英紙ガーディアンは英国の医療関係者の話として、感染した子ども5千人に1人の割合で発症しており、感染から約1カ月後に症状が出たと報じた。患者78人を調査した結果、黒人が47%、アジア系が28%で、白人よりも人種的少数派の割合が高かったという。
欧米各地で昨年以降、主に乳幼児がかかる川崎病に似た症状が報告されたが、その後の研究で川崎病との相違点が見つかり、MIS―Cだとの見方が主流になった。
日本小児科学会と日本川崎病学会は2月、MIS―Cの患者が日本でも複数確認されたと発表した。ただ、死亡例はなく、いずれも治療によって回復しており「過度な心配は不要」と指摘。マスクの着用や手洗いの励行など、子どもが取れる感染防止策を徹底し、症状が出た場合は医療機関に相談するよう呼び掛けている。
【小児多系統炎症性症候群(MIS―C)】新型コロナウイルスに感染した子どもや、感染者の近くにいた子どもが発症する病気で、全身性の炎症を伴う。重症化すると心臓の機能が低下することもあり、川崎病と似た症状として当初注目されたが、川崎病の発症年齢は4歳未満が7割を占めるのに対し、年齢層の中心が9歳前後と少し高い点などが異なる。米疾病対策センター(CDC)によると、原因は不明で、大人の類似の発症例も報告されている。
◆―― 目の充血、発疹、下痢… すぐ受診を
目の充血、発疹…。新型コロナウイルスの感染者が世界最多の米国では、感染した子どもが発症する「小児多系統炎症性症候群(MIS―C)」の事例が報道されている。米疾病対策センター(CDC)は発熱や下痢などの症状があれば、保護者はためらわずに受診させるよう推奨している。
米東部メリーランド州の女性タイオナ・モンゴメリーさん(18)は新型コロナの検査で陽性となり、自宅で自主隔離生活を送り、コロナからは回復した。MIS―Cを発症したのはその数週間後だった。「頭痛がひどくて、手や足に力が入らなくなった」
モンゴメリーさんの母親は「娘は発疹や熱も出て腎不全になり、MIS―Cの全ての症状が出ていた」と地元メディアの取材に語った。モンゴメリーさんは入院して治療を受けたが、少し歩くだけで息切れが続き、学校に満足に通えない状態が続く。
MIS―Cは症例が少なく不明な点が多い。米医療関係者は発症した場合は早めの診断と治療が大切だと指摘する。
中西部インディアナ州のジャナイヤ・ジョンソンちゃん(5)は発症時、吐き気や熱、腹痛を訴えたが、病院で診察を受け、元気を取り戻した。母親は「もう1日通院を待っていたら、なすすべがなかった恐れもあると医者に言われた」と振り返った。
(共同通信社)