オープニングで失敗の新番組~『ラヴィット!』『めざまし8』失速の理由~

新番組にはご祝儀がつきものだ。

刷新された内容の魅力をチェックしようと、一度は見に来る視聴者が必ずいるからだ。ところが今春始まったTBS『ラヴィット!』フジテレビ『めざまし8』は、そのチャンスを活かし切れなかった。

オープニングの演出で失敗し、廃止された前番組を超えられずにいる。

朝8時のワイドショーで当てが外れた新番組の敗因は何か、データに基づき考えてみた。

朝8時の明暗

この春の改編で、朝8時のワイドショーは2局が新番組となった。

フジテレビは『とくダネ!』から『めざまし8』

22年総合司会を務めた小倉智昭(73)から谷原章介(48)へ25歳若返った。柔らかな物腰でスキャンダルと無縁なため、F2(女性35~49歳)を強化する戦略だった。

TBSは『グッとラック!』から『ラヴィット!』

立川志らく(57)から「麒麟」の川島明(41)と、やはり司会が16歳若返った。内容も「すぐに手が届く“楽しい!”を提案するライフスタイルバラエティ」となった。やはり若年層を狙うリニューアルだった。

迎え撃ったのは、テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』と、加藤浩次続投の日本テレビ『スッキリ』。

かくして朝8時のワイドショー戦争が勃発した。

ビデオリサーチ(VR)関東地区のデータによれば、当初2週間ほどの個人視聴率は、トップが『モーニングショー』、2位は『スッキリ』、そして新参組では『めざまし8』が3位で、『ラヴィット!』は最下位だった。

実はこの順位は、改編前の4週間と変わっていない。

しかも1位と2位は、新年度になって少し数字を上げている。ところが『めざまし8』は微減、『ラヴィット!』は大きく下落してしまった。

特に新スタート序盤で0.9%2回、平均で1%強では、とても及第点とは言えない。

明暗はどこで分かれたのか?

4番組の明暗では、要因が幾つか考えられる。

そもそも1位の『モーニングショー』は、高齢者の強力な支持で以前から強かった。他3番組が49歳以下をターゲットとするため、ライバル不在で同番組の盤石ぶりは変わらない。

一方VRの視聴率で2位の『スッキリ』は、日テレが重視するコアターゲット(13~49歳)で強い。

全国264万台のインターネット接続テレビで視聴動向を調べるインテージ「Media Gauge」のデータでは、高齢者の影響が少なくなるため『スッキリ』が首位となる。

新年度の初回から9回分の放送を平均すると、最初の1時間の接触率は9%を超えた。

強さの秘訣はオープニングの5分。MC2人は余計な会話はしない。通常ゲストは、10秒以内でまとめて紹介を済ませる。本題に入るまでが1分ほど。

つまりテンポよく展開することで、冒頭5分の数字がほとんど落ちないのである。

実は8時のワイドショーには、もう1か所、重要なポイントがある。

NHK朝ドラが終わる8時15分から数分、一定程度の流入が発生するからだ。これにより各番組の数字は上昇傾向になる。中でも『スッキリ』は最も上げている。

朝ドラの次は『スッキリ』という視聴習慣が定着している証拠だろう。

新番組の失敗

いっぽう新番組は明らかに失敗していた。

15秒単位の接触率を分母に、番組の視聴をやめた人(流出率)の比率を算出すると、『ラヴィット!』は15秒毎に視聴者の2%前後が逃げていた。これでは数字は上がりようがない。

特にオープニングと、8時15分からの数分が残念だ。せっかく新番組に興味を持ってチャンネルを合わせてくれた視聴者を、ことごとく失望させ逃がしていた可能性が高い。

『ラヴィット!』ほどでないものの、『めざまし8』もダメだった。

『スッキリ』と比べると、オープニングと8時15分あたりの成績が悪い。谷原章介の好感度が演出的に活かされていないことがわかる。

共にオープニングに致命的な欠陥がある。

まず『ラヴィット!』では、長い拍手の間にMC2人からゲスト全員をなめるような絵がある。そして「日本一明るい」を強調した川島明の話が、段取り臭くて長く感じる。しかも番組が始まってしばらく、ゲストのトークがぐじゃぐじゃ入って、なかなか本題に入らない。

演出陣は新番組の色を出していたつもりだろうか、この間に視聴者は大量に逃げていた。

しかも番組が始まって9日目の4月8日の放送までに、視聴者の新番組への興味はすっかり失せていた。オープニングでも8時15分の朝ドラ終了後でも、流入率は最も低い。

既に見限ってしまった視聴者が一定量いると見るべきだろう。

『めざまし8』も似たようなミスを犯していた。

冒頭でのMC2人の歩きは必要か。さらに2人の良い人トークがしばらく続くが、毎回やられると歯が浮いてくる。しかも「ツイッターは30文字で」など段取りを毎日説明されると煩くてたまらない。

初回から流出率が高かったが、9回目の放送までに流入率が半減してしまった。結果として冒頭3分で、接触率を1%失っている。

8時15分での流入率も半減していた。

多くの視聴者の間で、「見たいと思えない」というレッテルが出来始めている。

改編の道遥か

2つの新番組は、スポンサーニーズの高い若年層を取り込むことを狙っていた。

ところが放送開始2週間ほどの実績を見る限り、残念ながらその目的は道遥かと言わざるを得ない。

関東地区で約7万人のテレビ視聴状況を調べるCCCマーケティングのデータを見ると、その辺りの実態が浮かび上がる。同データでは、視聴データでありながら個々人の性年齢から、子供の有無などの家族構成、さらにはファッション・美容・料理などの趣味・関心など、視聴者の詳細が浮かび上がる。

まず年齢層でみると、『スッキリ』が若年層で圧倒的に見られている。

『めざまし8』は半分ほど、『ラヴィット!』だと3分の1ほどしかいない。ちなみにテレ朝『モーニングショー』は、VRの視聴率では一番高いが、CCCマーケティングのデータでは『めざまし8』の次、『ラヴィット!』より上となる。

65歳以上の高齢者は、今や人口的にもボリュームゾーンだ。このために起こるデータ間の差なのだろう。

次に「未就学児がいる」「小学生がいる」など、小さな子供のいる家庭も『スッキリ』が『めざまし8』の倍ほどの視聴者数となった。

さらにファッション・美容・料理などの趣味・関心別に視聴者数を出しても、トップは全て『スッキリ』だった。

逆にライフスタイルバラエティとして新ファミリーコア(4~49歳)を狙った『ラヴィット!』は、ほとんどの指標で『モーニングショー』にも及ばなかった。

狙いは良かったが、どうやら手段としての演出がミスマッチだったようだ。

新番組は視聴習慣を獲得するのに時間がかかると言われる。

特に平日の帯番組では、他の番組から視聴者をとってくるのは至難の業だ。1年以上の時間を要した番組がこれまでにも幾つもあった。

ただし今の2番組は、オープニングで多くの視聴者に逃げられている。

これでは本編での戦いに持ち込みようがない。新番組としてのカラーを押し出したい気持ちは分からなくはないが、短兵急な演出や過剰な表現が、結果的に視聴者を遠ざけていたようだ。

まずは2週間の失敗を正しく位置付けるべきだろう。

その上でマイナス要因を徹底的に廃して、視聴者の信頼を勝ち取るべきだろう。

今からでも反転攻勢は可能なはずだ。