韓国で広がる「暴too」芸能人のいじめ「若気の至り」で済まない理由
韓国の放送・芸能界が大きく揺れている。韓国のアイドルや俳優らが学生時代に行ったとされるいじめ疑惑が次々と浮上し、業界全体を巻き込んだ大騒動に発展。SNSでは、いじめを告発する「暴too(暴力 me too)」運動が急速に広がっている。なぜこれほど大きな社会現象と化したのか、ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。
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韓国のSNSで、「暴too」という学生時代に受けたいじめを告発する動きが広がっている。発端は2月7日、東京五輪のバレーボール女子代表選手、イ・ジェヨンとダヨン姉妹による過去の壮絶ないじめが発覚したこと。CMなどにも出演するスター選手だったこともあり、騒動は拡大。2人は謝罪したものの、代表の資格を剥奪される事態になった。
だが、世間が受けた衝撃は大きく、「暴too」は芸能界にも飛び火。最も問題となっているのが、韓国公営放送局(KBS)だ。KBSの新ドラマ『DEAR.M』の主演女優パク・ヘスに、学生時代にいじめを受けたと主張する被害者が次々と現れ、同局は2月26日、ドラマの放送開始の延期を発表した。またKBSは、今春から新しく始まるバラエティー番組『カムバックホーム』も、初回放送分の収録直前にレギュラーの出演者を入れ替えた。こちらも理由は、学生時代に行ったとされるいじめ疑惑が浮上している俳優のチョ・ビョンギュが出演者の1人だったからだ。
このほか、韓国文化放送局(MBC)も、16年目を迎える人気歌番組『ショー!K-POPの中心』の進行役だった8人組男性グループ「Stray Kids」のメンバー・ヒョンジンを、いじめ加害者疑惑で急遽入れ替える事態に。ケーブルテレビのオーディション番組でも、番組の途中で出演者が自発的に降板するケースも見られた。
これらは全て、出演者が学校暴力の加害者だったというSNS上の告発が引き金だ。韓国の「学校暴力」の予防及び対策に関する法律によると、学校暴力とは「学校内外で学生を対象に発生した障害、暴行、監禁、脅迫、略取・誘拐、名誉棄損・侮辱、恐喝、強要・強制的なお使い及び性暴力、仲間外れ」などのこと。つまりは「いじめ」である。2月に入り、韓国のSNSで有名なK-POPアイドルや新人俳優らを名指しして、「学校暴力の加害者」だったと告発する被害者らの書き込みが相次いでいるのだ。
名指しされたアイドルや俳優らの多くは加害者疑惑を全面否定しているため、本当に加害者だったか断定できない状況だ。しかし、こうした状況が取り沙汰されている以上、テレビ局としてはそのまま出演させるわけにはいかない。KBSの場合、「視聴者権益センター」という視聴者掲示板に「公共の価値を重視する公営放送として、加害者疑惑が明白になるまで『DEAR.M』の放送を延期すべき」と2100件を超える抗議の書き込みがあったという。もし何事も無かったように放送すれば、「KBSは学校暴力を深刻に受け止めていない」としてさらなる抗議を招く可能性があるが、だからといって疑惑だけで降板させるわけにもいかず、いったん放送延期や出演保留という形で対応せざるを得ないのだ。
実は過去にも、何度か新人アイドルのいじめ加害者疑惑は浮上していた。また、10年ほど前はいじめの加害者だったという告発があっても「若気の至りでした」という謝罪コメントを発表する程度で芸能界に復帰出来ていたが、今はとても考えられない雰囲気だ。学校でも社会でも、いじめは深刻な“犯罪”と認識されるようになった。社会全体の認識が変わると被害者の声に耳を傾ける人も増え、勇気を出して告発する被害者も徐々に増えていった。今回、騒動がここまで大きくなったのは、被害者として名乗り出たのが1人や2人ではなく、事の大きさにファンも背を向け始めたからだろう。
SNSの影響も大きい。過去の書き込みや写真などを簡単に検索できるようになってから、芸能人に対するファンの要求もだんだん変わり始めている。ネットが無かった時代はテレビやスクリーンに映る姿が全てで、その姿だけを見て好きになったり応援していたが、今は情報が溢れている分、ファンも芸能人の過去を知ることができる。K-POPアイドルファンが集まるコミュニティサイトを見ると、「芸能人は大衆に愛されて成り立つ職業だけに、才能だけでなく人間性も評価されて当然」という意見や、「本人が否定しても、加害者疑惑があるというだけでファン心が覚めてしまう」という書き込みも多く見られた。
告発により加害者が社会からバッシングを受け、いじめを認め謝罪し自粛することが主なファン層である10代に対し「いじめは犯罪」という強い印象を与え、いじめを減らす効果につながる一方で、こうした流れを問題視する向きもある。告発の中には全くのデマもあり、事実確認がしっかりされないまま騒動がエスカレートしたり、法に則った処罰ではなく大衆が加害者を断罪し懲罰を与えるような流れになってはいけないと報じるメディアも少なくない。
世間のバッシングを受けてか、『ショー!K-POPの中心』の進行役を交代したヒョンジンは、疑惑を一度は否定したが、その後認めて謝罪した。所属事務所のJYPエンターテインメントは2月26日、ヒョンジンのいじめ加害者疑惑を認め、本人が被害者らと対面し謝罪したと発表。報道資料で、「明白な事実確認は難しかった」としながらも、「ヒョンジンの未成熟で不適切な言動で傷付き被害を受けた方がいらっしゃいます。ヒョンジンもその部分を深く後悔し反省しているため、本人が(ネットに告発文を書いた)掲載者らにお会いして謝罪しました」と説明した。
ヒョンジンは、2月27日から全ての芸能活動を中断し自粛している。JYPエンターテインメントはどの事務所よりもアーティストの人間性を強調していただけに、がっかりしたファンも多いようで、ヒョンジンのグループ脱退を求める声明文をSNSに掲載するファンもいた。今後は、芸能事務所らがアイドルになる前の練習生を選抜する過程でいじめ加害者だったかどうかの調査も加わることになりそうだ。
【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。
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歌舞伎界一のイケボ・坂東彦三郎、コロナ禍で感じた「読み聞かせ」の力
“変種株”も広がりを見せ、依然として世界中が警戒する新型コロナウイルス。日本では感染拡大防止のために、2度に渡る緊急事態宣言が発令。外出自粛が要請され、仕事もリモートが主になるなど、日常における生活様式は大きく変化した。
コロナによって激変したのは歌舞伎の世界も同じだ。2020年3月以降、公演は軒並み中止や延期が余儀なくされ、5月には、東京オリンピックの開催にあわせ、大々的に行われる予定だった市川海老蔵(43才)の「13代市川團十郎白猿」襲名も延期。興行が打てないことにより、松竹は売り上げが50%減、175億円の赤字を計上するなど、歌舞伎界全体が大きな打撃を受けたのだ。
歌舞伎俳優・9代目坂東彦三郎(44才)も大きな影響を受けた一人だ。彦三郎は祖父に人間国宝・17世目市村羽左衛門(享年84)を持つ名門の家柄。そのスッキリとした立ち姿と「歌舞伎界隋一のイケボ」と称される口跡の良さで多くのファンを持ち、2019年には『刑事7人』などドラマへの進出も果たすなど多方面で活躍している。
しかし「公演がない」ということは、歌舞伎俳優にとっては「立つ舞台がない」ということ。御曹司である彦三郎にとってもそれは例外ではなく、44年の人生で初めて「立ち止まって考えざるをえない」日々だった。
「幼い頃から、祖父や父の元で歌舞伎を学んできましたが、高校生の時に一念発起してイギリスに留学。海外に出たことにより、『国際的な視点をもって古典を演じる』という意識とこの世界で生きてゆく覚悟が生まれ、1994年、18才の時に学生を辞め、歌舞伎俳優一筋となりました」(彦三郎・以下同)
2017年には、父・坂東楽善(77才)、弟・坂東亀蔵(42才)、息子・坂東亀三郎(8才)と共に、坂東彦三郎として親子三代で4人同時襲名をする。以降、とどまることなく舞台に立ち続けてきた彦三郎だが、「コロナ禍」で状況は一転する。
「2020年の3月、最初の自粛要請が出た際に出演予定だった芝居が全部中止になってしまい、スケジュールが真っ白になりました。やることも特にないからまず、台本から資料から、身の回りの整理をしました。その後、秋口に自宅の引っ越しという機会があったので、妻と、倅の亀三郎と共に、『これからは未来の思い出を増やしていこう』と家族3人で断捨離をしました。
いるものといらないものを分ける作業を進める中で浮かんできたのは過去に立った舞台のことや今の状況、そして将来自分がどうなりたいか、ということだった。そんな自問自答の末、『自分らしさを大切に生きていこう』と考えるようになりました。気がついたら精神的にも“断捨離”していたといわけです」
歌舞伎役者としての見通しが立たない中、彦三郎が断捨離とともに新たに取り組んだのがその美声を生かした「読み聞かせ」の配信だ。2020年5月から配信を始めたYouTube『坂東彦三郎ch』で、絵本や島崎藤村らの短編古典作品の音読を配信している。
「始めたきっかけは、倅の寝かしつけのためでした。緊急事態宣言に伴って休業する書店が多かったため、区立図書館に出掛けて倅のための本を借り、寝る前に音読する。倅も楽しみにしていてくれているようで、どうしても出来ない時にはスマホに録音したものを聞かせています。女房曰く、倅はスマホを枕元に置いて、嬉しそうに聞いているようです。“声を出して読み、相手に聞かせる”と言うことはぼくの中で、人として、親として、役者としても多くの発見があり、ほぼ毎日休みなく続けています」
彦三郎が読み聞かせをする理由のひとつは、自らも読書家であること。純文学からノンフィクションまで幅広く読むという彦三郎が最近印象に残ったのは映画化もされたミステリー『スマホを落としただけなのに』の作者・志駕晃氏がコロナ禍の東京を舞台に描いたリアルタイム・ミステリー『彼女のスマホがつながらない』だ。
「昔から読書が好きで、本の中に書かれた別世界に救われたことが何度もあります。以前は登場人物に感情移入をして読んでいましたが、今は物語の面白さそのものを楽しむようになりました。本作では令和2年の女性誌編集部と平成31年のパパ活女子たちの現在過去が編集者の友映や貧困に悩む大学生の咲希、その友達のユイカら複数の目線で行き交い、自然と事件や犯人の姿が浮かび上がっていく過程が面白かった。
二転三転する出来事に一喜一憂する、誌上に生きる登場人物たちの息遣いに心が躍りました。ニュースや芸能ゴシップ、若者の風俗などがリアルに描かれていたのも面白かった」
中でも彦三郎を驚かせたのは本作の主題のひとつである「パパ活」の実態。
「強請騙りに盗みに殺し、痴情のもつれなどが当たり前に描かれる歌舞伎の中でも金銭を介入した男女のやりとり、つまり“色で稼ぐ”というのは頻繁に描かれてきました。しかし“パパ活”のような現代のSNSを介したやりとりは、芝居の世界よりも密閉感が増しているように思います。なにより現代の“パパたち”は、ちょうど働き盛りの世代。仕事に、家庭がある人は家庭に、と忙しいでしょうに、よっぽど時間の使い方がうまいのだろうな、とある意味関心してしまいました(笑い)。
このコロナ禍で改めて気づいたことは、読書は心や想像力を豊かにしてくれるということ。本を読むことは、これからも続けていきたいと思います」
◇坂東彦三郎(ばんどう・ひこさぶろう)
1976年 6月29日生まれ。歌舞伎俳優。Jーwaveにて『キッザニア東京』CMに息子亀三郎と親子で出演中。3月には国立劇場『時今也桔梗旗揚』に、6月にも博多座で『与話情浮名横櫛』『身替座禅』に出演予定。
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森喜朗氏の問題発言バッシングから考える「寛容になれという不寛容」
公人が失言したとき、われわれはどのような態度をとるべきなのか。寛容に受け止めるべきなのか、厳しい視線を向けるべきなのか。森喜朗・元東京五輪組織委員会会長の女性蔑視発言へのバッシング問題について、評論家の呉智英氏はこう述べる。
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二月十三日「週刊新潮」からコメントを求める電話があった。森喜朗オリ・パラ組織委会長の「女性蔑視発言」が問題になっているが御意見をうかがいたい、という。ああ、それは森喜朗が低学歴だからだね、と、私は答えた。受話器の向こうで、記者が笑っているのが分かる。でも、こんなコメント、記事にできないよな、と私。一応デスクに聞いてみますが、と記者。
なかなかしっかりした記者だ。学歴問題は脇へ置いといて、森発言バッシングについては…と、私は三十分ほど話をした。同誌二月二十五日号では、限られた字数内でよくまとめている。
「こうした風潮を評論家の呉智英氏はこう斬る。『寛容になれという不寛容』が蔓延(はびこ)っている」
私の念頭には、昨年末に出た森本あんり『不寛容論』(新潮選書)があった。森本は二〇一五年には『反知性主義』がポピュリズム流行の風潮の中で話題となった。今度の『不寛容論』もいくつもの書評で取り上げられている。新大陸アメリカで寛容思想がどのように成立したか詳論し興味深い。しかも「寛容の強制」というパラドックスが成立することも指摘している。私が週刊誌でコメントした「寛容になれという不寛容」のことだ。
これは論理学・哲学で言う「自己言及のパラドックス」である。「全称命題のパラドックス」と言ってもいい。命題propositionとは、提案、提題、題を命(の)べる、という意味で、命(いのち)とは無関係だ。
自己言及のパラドックスは、古く聖書にも出てくる。「(クレタ島人が言った)クレタ島人は嘘つきだ」(テトス書1・12)。じゃ、その発言(命題)自体が嘘ではないのか、ということになる。仮にこれが「クレタ島人の半数は嘘つきだ」なら、こうしたパラドックスは生じない。全称命題だから、こういう逆説になる。部分命題ならパラドックスは起きない。
さて、寛容という規範について考えてみよう。これは、憲法や国際的宣言にもしばしば登場する大きな規範、いわば「全称的規範」ということになる。一方、小さな、部分的な規範も存在する。「早起き励行」などその一例である。勤め人や児童生徒などは早起きが励行されるべきだが、私などは九時前に起床したことがない。近所の新聞配達所の店主は、毎日十二時起きです、と言っている。もちろん深夜の十二時である。そうであれば、早起き励行が国際的規範になることはない。対するに、寛容はパラドックスが生じるような全称的規範になっている。
森本あんりは二月二十八日付産経新聞に寄稿し、「寛容は是認でも理解でもない」「是認できなくても、相手を拒絶せず」。「われわれにできるのはそこまでなのである」としめくくっている。
同じことは、自由、平等、人権についても言える。これだって全称命題のパラドックスが生じる。自由を否定する自由、平等に不平等を主張する権利、反人権の人権。「我々」からも「彼ら」からも「できるのはそこまで」なのか。
【プロフィール】
呉智英(くれ・ともふさ)/1946年生まれ。日本マンガ学会理事。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。
※週刊ポスト2021年3月19・26日号
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「糖質ゼロ」はビール離れの救世主となるか キリンvsサントリー攻防の行方
健康志向の高まりを受け、「発泡酒」や「第3のビール」で数多く見られるようになった“糖質オフ/糖質ゼロ”の商品。ついには本格ビールでも登場して話題となっているが、ビール離れが続く中、糖質を抑えた商品は今後も新カテゴリーとして定着するのか──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏が各社のビール戦略に迫った。
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ある日の大手スーパーの酒類売り場。シニア世代の夫婦がビール類の棚を眺めながら、
「糖質ゼロが流行っているんだってねぇ」と言葉を交わしつつも、手を伸ばして買い物カゴに入れた商品は機能性ではない、普通のビール銘柄だった。
もちろん、健康を気にする人には糖質ゼロビールは刺さったと目され、味が物足りないと思う人もいれば、価格重視で発泡酒や第3のビールをチョイスする人、逆にプレミアムビールの棚に手を伸ばす人など、味覚や選好は人それぞれだ。
コロナ禍で業務用ビールは大打撃を受けたが、スーパーやコンビニと違って、飲食店向けはいわゆるビールがほとんどで、「発泡酒」や「第3のビール」はほぼないに等しい。ビールメーカーとすれば、飲食店需要が蒸発してしまった分は、主戦場となった家庭用で取り返すしかない。昨秋の酒税改正第1弾でビールが減税、発泡酒が据え置き、第3のビールが増税となったことから、家庭用ビール拡販の追い風要因もある。
開発に5年を要したキリンの糖質ゼロビール
コロナ禍によって健康に気を遣う人が増えたが、その点を訴求する「糖質オフ」や「糖質ゼロ」といった商品は過去、発泡酒や第3のビールのジャンルで展開されてきた。主だったところでは、「淡麗グリーンラベル」(糖質70%オフ/キリンビール)や「金麦」(同75%オフ/サントリービール)をはじめ数多く、正直、すべてはとても覚え切れない。
これまで、狭義のビールカテゴリーでは糖質ゼロ商品はなかったが、そこに風穴を開けたのが、昨年夏に「一番搾り糖質ゼロ」を発表(発売は2020年10月)したキリンだ。
同社は過去、1999年に「ラガースペシャルライト」、2003年に「ラガーブルーラベル」という、ともに糖質50%オフ(アルコール度数もともに5%)のビールを発売しているが、定着するまでには至らなかった。ビールは麦芽を50%以上使用することで麦のうま味が引き立つが、同時に糖質量も上がってしまう。
そこで、キリンは「一番搾り糖質ゼロ」の試醸を350回以上も繰り返し、糖質低減に適した麦芽の使用や、発酵技術を進化させて、通常より元気な酵母を使って糖質を食べ切るようにした。こうした技術ハードルの高さから、開発には5年を要している。
なぜ「一番搾り」の看板ブランドで出したのか
ではなぜ、看板ブランドの「一番搾り」での展開だったのかは、発表会当時、キリンの布施孝之社長が意気込みを語っていた点にも窺える。
「われわれは、『一番搾り』をとにかくビールの本流にしたい。一番搾り製法による美味しさは、まだまだ伝え切れておらず、『スーパードライ』(アサヒビール)に販売量で大きく水を開けられているのが現状。『一番搾り』ブランド全体の中で、『一番搾り糖質ゼロ』で3分の1を占める構成比にまでもっていきたい」
キリンのライバルであるアサヒも、5年前の2016年に「アサヒ ザ・ドリーム」(糖質50%オフ。アルコール度数5%)を発売し、翌2017年にリニューアル。リニューアル商品は麦芽100%の生ビールで糖質50%オフは日本初、という触れ込みで気合が入っていたが、商業的には捗々しくなく、2019年6月に終売となっている。
一方、キリンは糖質50%オフからハードルを上げ、糖質ゼロビールとして、これまた日本初を掲げた。アサヒの場合は旗艦の「スーパードライ」の派生商品ではなく、専用商品としての展開だったが、キリンは中核ブランド「一番搾り」での展開。この点の覚悟について、キリンのある幹部はこう語る。
「看板商品のブランドエクステンション(派生商品)は、ブランド購入が分散してしまい、お客様が戻ってこないリスクや、その商品が売れなかった場合はブランド棄損の可能性が高いので、通常は慎重になるものです。
つまり、大きなブランドを使って新商品を試みるほうが覚悟が要るわけで、むしろ、まったく新しい専用商品のブランドで出したほうが、撤退しやすいのも事実。ただ、主力ブランドのエクステンションならもともとの認知度が高いので、ブランド全体として店頭展開できる点は強みです」
糖質ゼロビールの“率直な味わい”は?
ここまで、コロナ禍での健康志向の高まり、酒税改正で狭義のビールに拡販チャンスが巡ってきたことに加え、認知度の高い「一番搾り」というブランドで展開したことのプラス要因も重なり、「一番搾り糖質ゼロ」の販売は、もともと家庭用に強いキリンだけに、昨秋以降順調に推移している。
「一番搾り糖質ゼロ」の発表会当時、試飲した感想を問われた布施社長は、こう評していた。
「発泡酒や第3のビールの糖質ゼロだと麦のうま味をあまり感じませんが、『一番搾り糖質ゼロ』は機能系ビールを感じさせず、スッキリしていてまさに普通のビールと変わらない味わいです」
とはいえ、糖質ゼロビールを実現するため、アルコール度数は4%と低め。度数の影響ばかりではないだろうが、レギュラーの「一番搾り」に比べると、コクの面では確実に落ちる。
その点は好みの問題で、「物足りない」と感じる向きもあれば、「かえって飲み飽きなくなった」という人、あるいは「機能系でない普通のビールが飲みたい。その分、休肝日があればいいのでは」と考える人もいる。
キリンに真っ向勝負挑むサントリーの自信
そんな「一番搾り糖質ゼロ」のヒットに待ったをかけるべく、4月13日、サントリービールから刺客が登場する。「パーフェクトサントリービール」がそれだ。
2月の発表会で登壇した、同社執行役員マーケティング本部長の和田龍夫氏は、新商品のアドバンテージについて、こう語っていた。
「開発は2016年からスタートしましたが、糖質ゼロビールの難易度が高いのは、アルコール度数を上げられないことでした。機能系ビールは、どうしてもコクや刺激が少なめ。われわれはそこを克服し、度数5.5%の糖質ゼロビールを実現しました。糖質ゼロなのにコクがあって飲み応えもある。この製法は特許も取得しています」
コクと糖質ゼロというトレードオフを解消したという意味では、後発者の強みかもしれないが、受けて立つキリン側も、
「サントリーさんがどんな広告展開や店頭訴求をしてくるのか楽しみではあります。他社からも糖質ゼロビールが出てこの市場が盛り上がれば、再度『一番搾り糖質ゼロ』にもスポットが当たるので、こちらとしても再チャンスです」(前出の幹部)
と余裕を見せる。
糖質ゼロビールのヘビーユーザーは?
では、いずれコロナ禍が収束した後も、糖質ゼロビールは伸び続けるだろうか──。サントリーの和田氏は、
「継続すると思います。コロナによって、糖質を摂り過ぎないという潜在意識が顕在化したと思っていますから」
と語るが、逆に言えば、糖質ゼロビールの主力ターゲットは、糖分摂取過多を気にすることなく飲めるようになった、ビール好きのヘビーユーザーということにもなる。
ビールは飲まない人が多いといわれる若年層が、糖質ゼロだからといって急にビール市場に流入するとも思えない。そもそも、ビールや日本酒、ワインといった醸造酒は基本、糖質が多くカロリーも高めだから、そこを気にする人は、ウィスキーや焼酎といった蒸留酒に流れる人も多いだろう。
目下、ビールメーカーは「エコノミー(発泡酒や第3のビール)」、「スタンダード(通常のビール)」、「プレミアム(少し価格が高めのビール)」という3層での戦略を立てるが、コロナ禍による飲食店向けビールの消失分を挽回するには、3層の間口も奥行きもできる限り広げたい。
プレミアムについては、サントリーが「ザ・プレミアム・モルツ」を、サッポロビールが「ヱビス」を擁しているが、アサヒやキリンには同ジャンルで戦う商品が乏しい。
キリンはクラフト強化でニーズの多様化にも対応
そこで家庭用市場の拡大を追い風に、プレミアムのさらに上をいく、ハレの日のニッチ商材だったクラフトビールについて、同ジャンルに最も積極的なキリンが攻勢をかけることになった。3月23日に発売する「SPRING VALLEY豊潤<496>」(以下「496」と呼ぶ)がそれだ。
キリンは、これまでも「グランドキリン」や輸入クラフトの「ブルックリン」なども手がけてはいたが、「496」は大がかりな販促費もかけてスーパーの棚に置かれることになる。そのため、缶製品化にあたっては、従来品の「496」のアルコール度数6.5%を6%に下げ、より飲みやすいようにチューニングしたという。
確かに、試飲してみると従来品より少しマイルドになった印象だったが、通常のビールとは一線を画す濃厚な味わいだ。350ml缶で税込み約273円前後とお値段も高めなら、前述した糖質ゼロビールとはうって変わって、コクやうま味が濃い分、カロリーや糖質も高めという商品がクラフトビールには多い。
ニーズの多様性の中で人と違った商品を欲する人や、飲食店で好んでクラフトビールを飲んでいた人たちの需要を、缶の「496」で、ある程度は代替していけるのではないか。
クラフトビールの強敵となるのは「サッポロ」か
アサヒやサントリーもクラフトビールを手がけてはいるが、それほど積極的には見えず、前出のキリン幹部は、意外にもサッポロの名を挙げて、こうエールを送る。
「クラフト会社に一番近いのは、実はサッポロさんでは。当社の役員も『おそらく、サッポロさんは今後、“クラフト文脈”の路線で来るのではないか』と推測しています。狭義のビールにおけるサッポロさんの技術力はかなり高く、純粋においしいビールを作っていると思いますしね」
確かに、サッポロは狭義のビールの品揃えが多く、定番の「黒ラベル」や「ヱビス」に加え、通称“赤星”と呼ばれる「サッポロラガー」、北海道限定の「サッポロクラシック」なども人気があり、「ビールはサッポロが美味い」というユーザーの声を、ネットでもよく目にする。それだけコアなファンが多いのだろう。
サッポロもクラフトで、2019年から伝説のホップを使用した「SORACHI 1984」をスーパーでも販売したが、好き嫌いが分かれたのか、商業的にはパッとしなかった。が、飲食店受難の時代、同社もビアホールの銀座ライオンで供している「エーデルピルス」や「白穂乃香」といったビールを、缶のクラフト製品として発売したらファンに受け入れられるのではないだろうか。
キリンが仕掛け人となった糖質ゼロビールとクラフトビールの本格拡販。今年、この2つが本格的に定着するかどうかは、退潮が続いてきたビール業界の将来を占うことにもなりそうだ。
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阪神開幕投手に藤浪晋太郎抜擢の真意 一方で予告先発の功罪も
阪神の矢野燿大監督が昨年1勝の藤浪晋太郎を開幕投手に指名した。球団では、1987年のマット・キーオなどの新入団選手を除けば、前年1勝以下の大役は1リーグ時代の1943年の三輪八郎以来78年ぶりとなる。プロ野球担当記者が話す。
「昨年の勝ち頭である西勇輝を2カード目に持っていけば中6日のローテーションで広島、巨人、広島、巨人にぶつけられる。開幕戦のヤクルトは、藤浪が昨季唯一の勝利を挙げた球団で対戦防御率も1.48だった。逆に藤浪を2カード目に回せば、広島や巨人と当たることになってしまう。昨季、藤浪は巨人に7.07、広島には7.77と相性が悪かった。1カード目にぶつけて中6日で回せば、1か月は両チームと当たらない。それならば、藤浪の潜在能力を引き出す意味も込めて、2、3戦目ではなく開幕戦を任せようと考えたかもしれません」(以下同)
12球団の開幕投手はDeNAを除いて、既に各監督が公表している。セ・リーグは2012年から予告先発を全試合で導入しているため、DeNAも前日までには開幕投手が判明する。
「この制度がなければ、藤浪の開幕投手は大サプライズになって大いに盛り上がったでしょう。予告先発はファンサービスの一環で導入されました。確かにセ・リーグの観客動員数は2013年以降、コロナ禍の昨年を除けば右肩上がりになりました。ただ、予告先発と相関関係があるかはわかりません。『この先発投手だから観に行こう』というファンがいるのも間違いありませんが、先発を隠すことで生まれるドラマは消えてしまっています」
2004年、就任1年目の中日・落合博満監督は過去3年間登板のなかった川崎憲次郎を開幕投手に指名。チームメイトさえ、当日に知るほどの大サプライズに球場は騒然とした。川崎は2回途中5失点でノックアウトされたが、チームは逆転勝ちし、中日はこの年5年ぶりの優勝を飾った。
「この起用法で、他球団は落合監督が何をやってくるかわからないという警戒心を抱いた。もし予告先発だったら、あれほどのインパクトは与えられなかったし、他球団も必要以上に落合采配を恐れなかったでしょう。予告先発にすれば、1人の投手に絞ってミーティングができるし、他の開幕投手候補がダミーで演技をする必要もない。チームの負担は減ります。12球団がそのメリットを優先しているのでしょうけど、推理する野球の楽しみを奪っている面もある。奇しくも、落合監督が退任した翌年からセ・リーグは予告先発を導入しました」
落合は現役時代、開幕戦で苦い経験をしている。1985年から2年連続三冠王に輝いた落合は1986年オフ、ロッテから中日に移籍。翌年の巨人との開幕戦では、落合が“球界ナンバーワン投手”と認めていた江川卓の先発が予想されていた。しかし、王貞治監督は西本聖を選択。前年の勝ち星は江川の16勝に対し、西本は7勝であり、まさかの抜擢だった。西本は落合に対し全球シュートを投げ、4打数1安打に抑えて完封勝ち。巨人は4年ぶりの優勝に輝き、三冠王を期待された落合は3年ぶりの無冠に終わった。
「移籍1年目の開幕戦は特に重要だし、(当時の試合数で言えば)130分の1ではない。西本の攻め方は他球団にも参考になったし、落合は完全に出鼻を挫かれた。もし予告先発で開幕投手が西本とわかっていれば、結果は変わっていたかもしれない。開幕投手の選択は、監督の腕の見せ所でもある。予告先発は、サプライズをなくさせる制度でもある」
先発がわかった上での勝負を『正々堂々』という言い方をすることもできる。しかし、相手の意表を突く作戦もまた野球の醍醐味である。
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前田敦子に「母乳?」と聞いた鶴瓶 テレビマンも悩むセクハラの境界線
テレビマンたちが今、デリケートな問題に頭を悩ませている。
落語家の笑福亭鶴瓶(69才)が、3月2日に放送されたMCを務める『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)で、女優・前田敦子(29才)に「あっちゃん、母乳やったな?」と尋ねて、ゲストの前田が笑いながら「母乳」と認めたシーンがあった。
もとは、前田と同じ一児の母のタレント・菊地亜美(30才)が、授乳のエピソードを披露して、MCの中居正広(48才)が「べーさん(鶴瓶)、母乳大好きだから」と話を広げてからの、「母乳が一番健康やと言いたいねん。それで聞くねん」との発言だった。
それでも、放送終了後からSNSではプチ炎上。「ニヤニヤしながらあっちゃんに母乳と聞くのはセクハラ」、「母乳が1番って発言キモい」「こういうのテレビで流すのありえない」と、非難が相次いだ。
鶴瓶には“前科”もあった。1年前にもアンジャッシュ渡部建(48才)から、妻の女優・佐々木希(33才)の第一子出産の直後に「第一声で『母乳どうや?』と言われまして。鶴瓶さん最低でしょ?」と暴露されていた。
ただ、ある民放のテレビ番組制作者は「鶴瓶さんもトークの流れに合わせて笑いを取ろうとしたわけで、昔は問題視されたことがなかったので、少しばかり気の毒で…。SNS上では放送したテレビ局へのお叱りの声もあったので、今の時代では我々がより注意していかないといけないんですよね…」と力無く答えた。
今年は、2月に森喜朗氏(83才)が、「女性がたくさん入っている理事会は(発言が長くて)今までの倍時間がかかる」と女性蔑視的な発言をして、日本中から非難を浴びた末に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の辞任に追い込まれた。この一件をきっかけに、より敏感になってきているようだ。
テレビマンたちは「国民のテレビ離れの一因は、自主規制ばかりでつまらなくなっている」と思う一方で、タレントのギリギリな発言を流せば、ときには「倫理観の欠如」と信頼を失う。前出のテレビ番組制作者は「視聴者という警察が怖くなってきていて、どうしたらいいのか戸惑っているのが正直なところです」と、苦しい本音を明かしていた。
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女性窯元 「前に出たい女性は出て、下がりたい女性は下がればいい」
世界経済フォーラムが発表した『ジェンダー・ギャップ指数2020』で日本は153か国中121位だった。世界的に見て、日本はまだ“男女格差が大きい国”であることがうかがえる。
実際に、日本では「男性ばかりの世界」というものも少なくない。たとえば“職人”と呼ばれるような職業では、男性が多いことがほとんどだ。就業者が多い建設業では女性の職人は4.5%、小学生女子の「なりたい職業」の上位であるパティシエも男性が多い。
しかし、そんな“男性ばかり”の職人の世界で、活躍する女性もいる。明治16年に創業した窯元「田村七宝工芸」の長女・田村有紀さん(34才)は、ライブシンガーやモデル、イベント制作やデザイン、経営事務の経歴を持つ異色の職人だ。
「武蔵野美術大学在学中から年間200本のライブをしてCDをリリース。建築学科で学び、七宝制作もしながら卒業後はさらにさまざまな仕事をしました。その後、自分が最も得意で人に喜んでもらえるのは実家の七宝焼だと思って、28才のときに本格的に制作を始めました」(田村さん・以下同)
七宝焼は金・銀・銅などの金属に金や銀で絵柄を描き、クリスタルガラスを焼き付け、彩りを加える愛知県・七宝町発祥の日本の伝統工芸だ。
時代の流れによって、約200軒あった窯元は8軒になったが、美しい芸術品を後世に残したいと願う。
「七宝焼は頭で思い描いたものがそのまま形になる工芸で、『計算美の工芸』。焼き物はよくドラマで『こんなの失敗だ!』とガチャーンと割るシーンがありますが、あれは焼いて初めて結果が出る『偶然美』の工芸であり、陶芸によくみられる特徴で、七宝焼とは素材や歴史も根本的に違うものです。計算美だからこそ七宝焼は最初のデザインセンスがすごく重要で、作家性の出る工芸といわれます」
異色の経歴もあり、“美人窯元”としてメディアで取り上げられることも多いが、本人はいたって冷静だ。
「女性職人で年齢も若めなので取り上げてもらえますが、私は女性を売りにしたいわけではないため、ありがたくもちょっと複雑な心境です。『職人で失敗しても、結婚すればいいから気楽よね』と言われ、悪意はないとはいえ、悲しくなることもあります」
田村さんの行動の原点となっているのは、同じ工芸家である母の美由紀さんだ。
「私が幅広く活動できるのは『何でもやってごらん』という母の後押しがあるから。母のデザインはすごくカッコいいけれど、生き方は父に寄り添うクラシックなもの。たぶん母の時代は、同じ工芸家でも女性が前に出ると小言を言われ、三歩下がることを求められた。だけどこれからは、性別よりもまず人間として助け合い、補い合う気持ちを持って、下がりたい女性は下がって、前に出たい女性は出ればいいと思う。固定観念に縛られず、自由に柔軟な発想で、作品だけでなくみんなが生きやすい環境も作っていきたいですね」
資質や実績があっても女性は一定の職位以上には昇進できないことを意味する“ガラスの天井”という言葉が定着して久しい。自らの手と鍛錬して身につけた技術を使い、少しずつ、しかし着実にそれを割ってきた女性職人の後ろには、深く濃くその足跡が残され続けるだろう。
※女性セブン2021年3月18日号
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新大久保で韓国旅行気分!進感覚かき氷、マカロンなど最新スイーツ
韓流ドラマブームの再燃もあいまって、こちらも再び脚光を浴びている東京・新大久保。コロナの影響で海外に行けないいま、国内にいながら韓国旅行気分を味わえると、さらに人気になっている。
そんな新大久保の最新スイーツスポットを「日本一新大久保に詳しい女子大生」としてメディアで新大久保の情報を発信しているもーちぃさんに教えてもらいました!
ナイフで切って食べる新感覚かき氷
ソウルカフェ
【住所】新宿区大久保1-16-30 巨山2ビル2F
糸巻き状の韓国版かき氷・ソウルビンスが評判のおしゃれなカフェ。写真の一番人気の『Seoul糸かき氷 ストロベリー』(1300円)は、口に入れた瞬間にふわっと溶けるいちごミルク味の氷に感動!
食べるのがもったいない ふとっちょマカロン
over macaron
【住所】新宿区大久保1-13-10 フォーチュンスペース101
マカロンにクリームがたっぷり入った韓国発のスイーツ・トゥンカロンの専門店。
「日韓で人気のキャラクター・すこぶる動くうさぎがモチーフになっていて、おみやげにもぴったりです」(もーちぃさん)
トリックアートのような不思議なカフェ
2D Cafe 新大久保店
【住所】新宿区百人町1-7-5 座ビル1F
上の写真は実はリアルな店内! 絵本の世界に入り込んだような気分が楽しめ、フォトジェニックな写真が撮れるとSNSで話題。
「『イチゴかき氷』(1250円)や『ダルゴナ・クリーミー』(650円)などの韓国スイーツを堪能できます」(もーちぃさん)
撮影/菅井淳子
※女性セブン2021年3月18日号
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霜降り明星ANN“1部昇格”でラジオリスナー「金曜が忙しい」
吉本興業所属の人気お笑いコンビ・霜降り明星がパーソナリティを務めるラジオ番組『オールナイトニッポン0』(ニッポン放送/毎週金曜 27時~)が、4月の改編によって『オールナイトニッポン』(同/毎週金曜 25時~)へ“昇格”することが発表された。
春の改編を最高の形で突破した霜降り明星には、ラジオリスナーから次々と祝福の声が寄せられている。
関西の大学に通う男子学生で、ハガキ職人もしているというAさん(20代)は、今回の昇格についてこう語る。
「霜降り明星のラジオは関西のローカルラジオ番組(『霜降り明星のだましうち』ABCラジオ)の初回から、『ANN0』まで全ての回を聴取しています。関西の一若手芸人だった彼らが賞レースを勝ち抜き、M-1王者になり現在に至るまで、リスナーはラジオを通じてせいやさん、粗品さんと一緒に成長してきたという感覚があります。
芸人のラジオはたくさん聴いていますが、若手の中では飛び抜けて面白いし、華があると思います。(今回、霜降り明星と入れ替わりで金曜2部に“降格”した)三四郎の『ANN』も聴いていますが、この下克上展開もまた2組のコンビのキャラクター上、面白いなと思いますね」(Aさん)
霜降り明星のラジオは女性リスナーからの人気も高い。「芸人のラジオが大好き」という女性・Bさん(30代)も、今回の昇格に祝福の声を寄せた。
「『Bittersweet Samba』(ANNのテーマソング)に合わせて霜降り明星のラジオを聴けるというのが、一ラジオファンとしても嬉しい限りですね。ただ心配なのが、ラジオリスナーとして金曜日が忙しいということです(笑い)。
普段は『radiko』のアプリを利用して全国のラジオを聴いているのですが、金曜日は面白い芸人さんのラジオが多い。たとえば、『さしよりからし蓮根』(CRKラジオ関西/22時~)、『かが屋の鶴の間』(RCCラジオ/23時~)、『和牛のモーモーラジオ』(文化放送/25時~)、『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ/25時~)など盛りだくさんです。
radikoにはタイムフリー聴取機能(1週間以内に放送された番組を聴取できる機能)があるのですが、やっぱりなるべくリアルタイムで聴きたい。霜降り明星の1部昇格で、嬉しい悲鳴です(笑い)。霜降りのお2人は、時間帯が早まるからといって、これまでのスタイルを変えないでほしい。今まで通り、週刊誌の裏側も暴露するような攻めたスタイルで突き進んでほしいです」(Bさん)
最近では粗品が音楽レーベルを立ち上げ、ボカロ楽曲をリリースするなど、漫才以外でも多芸多才ぶりを発揮する霜降り明星。そんな彼らのラジオは、サービス精神旺盛なトークやハガキ職人との軽妙なやりとり、スタッフ陣との絡みが魅力だ。ANN1部への昇格で、より一層、ラジオ界でも不可欠な存在になっていくかもしれない。
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制度の穴を利用した巨人の育成選手登録、FA後に続々と支配下登録の目論見
新型コロナウイルスの感染拡大は、今季もプロ野球界に大きな影響を及ぼしている。DeNAは外国人10選手が来日できないまま、開幕を迎える。巨人も新外国人のスモーク、テームズが間に合わない。この状況を受け、3月8日のセ・リーグ理事会で巨人が暫定的なDH制導入を提案したが、またしても却下された。プロ野球担当記者が話す。
「日本シリーズで2年連続ソフトバンクに4連敗した巨人は、DH制の導入がセ・リーグの底上げに繋がると主張している。しかし、他球団は資金力豊富な巨人が有利になるという考えがあり、反対しているのでしょう。議論は平行線を辿って、全く前に進んでいない。このままだと、他球団が単なる拒否を続けて同じことを繰り返しているように見えてしまい、徐々に世論が巨人に流れる可能性もあります」(以下同)
今まで逆指名ドラフトやFA(フリーエージェント)など新制度の導入は、巨人に有利に働いてきた歴史がある。他球団には、そんなアレルギーもあるのかもしれない。ただ、DH制導入議論の前に、巨人に対してまず指摘しておかなければならないことがあるだろう。
今季、巨人はDeNAから梶谷隆幸、井納翔一をFAで獲得。梶谷には人的補償が発生したため、内野ならどこでも守れるユーティリティプレイヤーの田中俊太がDeNAに移籍した。この時、問題視されたことがあった。巨人が有望な複数の若手を育成選手登録にしたのだ。
「現状では、FAの人的補償の対象は支配下登録選手に限られている。そのため、育成選手として契約してしまえば、人的補償の対象にならない。制度の穴を突いた格好です。巨人がそれを否定しても、“プロテクト”するためと見られて当然です。例えば、中継ぎ左腕の高木京介は今年10年目を迎え、年俸2500万円なのに、ケガを理由に育成契約しました。しかし、早々と3月5日に支配下登録された。人的補償のプロテクト選手を1人でも多く増やすための作戦と取られますよ」
2月16日に支配下登録された八百板卓丸外野手を含め、キャンプ前の段階で巨人には26名もの育成選手が登録されていた。その中には、過去のドラフト1位もいる。
「2017年の鍬原拓也、2019年の堀田賢慎です。ケガが表向きの理由ですが、治って戦力になると見込まれれば、すぐに支配下登録されるでしょう。一昨年、イチロー以来の高卒1年目で2軍の首位打者を獲得し、1軍出場もした山下航汰がケガの影響で、今季は育成に逆戻り。しかし、3月8日に一軍に合流し、今後オープン戦に出場していく見込みです。結果を残せば支配下登録され、開幕1軍もあり得るでしょう」
高卒3年目の直江大輔は、オフに原監督が「新人王を取らせる」と意気込むほどの期待の右腕だが、ケガのために育成契約になっている。
「不思議な話ですよね。昨年も3試合に先発し、年俸は180万円アップの750万円になったのに、育成選手登録です。有望な若手を他球団に取られないために知恵を絞ったのでしょうけど、巨人には江川卓入団時の“空白の1日”などルールの抜け道を通って、強行突破してきた歴史がある。またズルいことをしていると思われてしまう」
セ・リーグ理事会ではDHの話題は出ても、巨人の育成契約についての話し合いは行われていないようだ。
「他球団が、FAの人的補償に育成選手も含むべきだと主張すればいい。DHの話はそれからだと。原辰徳監督は過去に人的補償を廃止すべきだと語っており、議論は思わぬ方向にいくかもしれない。しかし、グラウンド外でも揺さぶりをかけていかないと、どんどん巨人のペースに巻き込まれていきますよ」
今季、巨人は早くも2選手を育成から支配下に上げた。シーズン終了時、何人が“育成”を脱しているか。