ここまで述べてきた要因は、あらゆる業界のさまざまな製品に当てはまるが、ことSurfaceにバンドルされるOfficeについては特殊な要因がある。それはOffice自体が同社の根幹をなす製品であり、絶対にシェアを下げるわけにいかないということだ。
オフィスソフトの中では一人勝ちといえるOfficeだが、同社製品のパッケージを模した、安価な競合製品が虎視眈々(たんたん)とシェアアップをうかがっている状況に変わりはない。ここでもしOfficeなしモデルを発売して、販売店がそれらの競合製品を独自にバンドルし、結果的にシェアが下がることがあろうものなら由々しき事態だ。
それ故、仮にユーザーの手元でライセンスが重複しても、とにかくバンドルして「使わないともったいない」という心理に訴えて製品を使ってもらう必要がある。高額なPCへのバンドルであれば、本体価格との対比で安く見せられるわけで、これを利用しない手はない。そもそもソフトウェアという製品の特性上、原価は実質ゼロであり、売る側としては痛くもかゆくもない。
以上のような複数の理由により、今後大きな方針転換や外的要因がなければ、店頭で売られるPCへのOfficeのバンドルは今後も続くと考えられる。そしてこれはPC以外の製品にも、おおむね当てはまる。衣類の上下セットから、カード付きのスナック菓子に代表される食玩に至るまで、セットで売られている製品があれば、それは誰にとって利益がある販売形態なのか、分けて売らない理由は何か、考えてみると面白いだろう。
著者:牧ノブユキ(Nobuyuki Maki)
IT機器メーカー、販売店勤務を経てコンサルへ。Googleトレンドを眺めていると1日が終わるのがもっぱらの悩み。無類のチョコミント好き。HPはこちら
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