新型コロナウィルス(SARS-Cov-2)の空気感染

[2020.07.18]
JAMA(米国医師会雑誌)に新型コロナウィルスの空気感染についての考察が載っていました。以下、引用です。

いわゆる飛沫感染は5μm以上の大きさの飛沫による感染ですが、こうした飛沫は患者の口から飛んでもせいぜい1-2m程度しか広がりません。それに対して5μm以下の小粒子であるエアロゾルは数時間空気中を漂います。
飛沫は通常のサージカルマスクやフェイスシールドで防護可能ですが、エアロゾルはマスクやフェイスシールドの使用では不十分で、距離も1-2mでは感染の危険があるということになります。
ただ、感染が成立するためには、どの程度のウィルス量にどのくらいの時間、曝露するのか、あるいは宿主(感染する側)の免疫能などが関係してきます。

新型コロナウィルスは1人の患者から平均2-3人に感染させることが分かっています。一方、空気感染をおこす麻疹(はしか)は1人から18人に感染させます。新型コロナウィルスの患者が他人に感染させる期間は平均1週間ですから、それを考えると平均2-3人への感染は麻疹に比べると少ない数であると言えますし、新型コロナウィルスの感染様式は麻疹と同じような空気感染が主体ではない可能性が高いでしょう。
また新型コロナウィルス感染者との濃厚接触による感染率は平均5%ですが、家族間であれば10-40%になりますし、買い物の途中にすれ違う程度なら0.6%です。
こうした事実からは、新型コロナウィルスの感染様式はエアロゾルによる空気感染はあったとしても、飛沫感染の方が多いことが予想されます。
ただし、換気が不十分な部屋に感染者がいると、室内に感染性のエアロゾルが蓄積することになります。
また密閉された空間内での感染はエアロゾル感染だけではなく、例えばドアノブがウィルスに汚染されると短時間で、オフィスビル内の全員に拡がる可能性があります。
従って、現在分かっている事実からは、換気の良い空間であれば通常のマスクやフェイスシールドで感染防御は十分であり、新型コロナウィルスが空気感染により長い距離を拡がって感染をおこすことは決して有力な感染様式ではないと言えます。

以下、私の意見ですが、日本のクラスター班の調査でも患者10人のうち他人に感染をおこすのは2人であることが分かっています。では、なぜこれだけ感染が拡がるのかと言えば、いわゆる「三密」という状態では感染が一挙に拡がるためです。くれぐれも、換気の悪いところ、人が密になって集まるところは避けることが賢明です。そして頻回の手洗いが重要です。

Michael Klompas et al. Airborne Transmission of SARS-CoV-2—Theoretical Considerations and Available Evidence JAMA 2019

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