筑波植物園 |
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| 科 名 : | バラ科 Rosaceae | |||
| 属 名 : | サクラ属 Prunus | |||
| 別 名 : | ヒガンザクラ、アズマヒガン、ウバヒガン | |||
| 英語名 : | Higan cherry , rosebud cherry | |||
| 原産地 : | 本州、四国、九州。 済州島 | |||
| 用 途 : | 庭木、建築材、器具材 | |||
| 備 考 : | 寿命が長く、天然記念物に指定されている名木や巨木が多い。 エドヒガンの枝垂れるものが「シダレザクラ」 Prunus pendula f. pendura (別名 イトザクラ) |
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| サクラの学名は 各所、各人でまったく違う。 サクラ属に関しては、米国農務省のデータベース『GRIN Germplasm Resources Infor. Network』 の学名で統一する。 |
| ① : 樹 形 2013.3.22. |
| 一般に15~20m、時に 30mまで大きくなる木ではあるが、この木の場合は周りに木が多いために、特殊な樹形となっている。 樹高 約13 mのうち 11mまでは葉が無い。 日当たりが悪いために枝が落ちてしまったものだ。 小石川には エドヒガン は一本だけで 上部にしか花を付けないため、詳細は 園外で撮った写真となる。 |
| ① : 幹の様子 |
| 幹の太さは根元の長径で 75cm。 高さ 1. 5 mの所で枝分かれしている。 |
| ② : 奥のエドヒガン 2014.4.4. |
| エドヒガン↑ ↑シダレ桜 |
| これも ひょろ長い樹形で、花は はるか かなた。 |
| 筑波植物園のエドヒガン 2012.4.6 |
| 高さ7m。 これが自然な樹形だと思われ、小石川とは大違い。 |
| 筑波の幹 | |
| 根元付近で 30cm。 |
| 京都植物園はピンクのつぼみ 2000.5.2 |
| 木によって 花には 紅色から白色まで、変異があるそうだ。 |
| 小石川のつぼみは 極淡いピンク 2011.4.7 |
| 白い 筑波植物園の花 2012.4.6 |
| 花の直径は 約 2cm。 |
| 花の特徴 |
| チェックポイントは、ぷっくり脹れた萼筒。 細かな毛が密生している。 |
| 葉 2000.5.6. |
| 葉は細長く、その分「測脈」の数も多い。 目黒 自然教育園 |
| エドヒガンの実 2012.6.2. |
| 筑波植物園。 熟すと もっと黒くなる。 |
| エドヒガン の 位置 |
| 写真①: | C6 d | ● | 標識35番 震災記念碑の先。 20通りと30番通りの間 |
| 写真②: | B4 a | ● | 標識26番の先 右側 |
| 名前の由来 エドヒガン Prunus subhirtella | ||
エドヒガン : 彼岸の時期に咲くことから |
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| 種小名 subhirtella : やや短い剛毛のある | ||
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| 花の内部 2012.4.18 |
| 結実せずに落ちた花を裂いて見たところ。 木の上で種子はできているのか? |
| Prunus サクラ属 : スモモ から | |
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| エドヒガン の学名 |
| 植物園の名札は ” Prunus pendula Maxim. f. ascendens (Makino) Ohwi ” である。 ほとんどの事典類もこれを使っている。 しかし 「USDA 米国農務省」は、 | |
| Prunus subhirtella Miquel | |
| としている。 命名の経緯を調べてみた。 | |
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| 命名年 | 学名(P.は Prunus の略) | 和 名 | 命名者 | 備 考 | |
| 1735 | Prunus 属 | サクラ属 | リンネ | 『植物の属』に記載 | |
| 1735 | Cerasus 属 | サクラ属 | リンネ | GRINでは異名。 = Purunus属 | |
| ① | 1827 | Cerasus pendula | シダレザクラ | Liegel | ジダレザクラに対する最初の命名 |
| 解説: 有効な出版だが、GRIN は Cerasus を認めていない。 | |||||
| ② | 1865 | Prunus subhirtella | エドヒガン | ミクエル | USDAの見解による正名 |
| ③ | 1876 | Prunus pendula | シダレザクラ | K. Koch | ①をPrunus属に訂正、有効な出版だが ②に先取権があり、シダレザクラはその 変異品であるため,正名とはならない |
| 1879 | Cerasus spachiana | エドヒガン | Lavallee | ② エドヒガンの異名 | |
| ④ | 1884 | Prunus pendula | シダレザクラ | シーボルト ex マキシモヴッチ | |
| 解説: 後から ③ と同じ名前を付けたため 「無効名」 | |||||
| ⑤ | 1891 | P. subhirtella var. pendula | シダレザクラ | 田中芳男 | ②を正名として、シダレを変種とした |
| または P. subhirtella ”Pendula” | USDAの見解・表記 | ||||
| ⑥ | 1893 | P. pendula var. ascendens | エドヒガン | 牧野富太郎 | ④を母種として ヒガンを変種とした |
| 解説: エドヒガンはシダレザクラの元となる種だから、④の シダレザクラ の名が先に付いていたために、その変種とした。 ところが ④ が無効名であるため、この命名も無効 ascendens は pendula の反対語で、「上昇する、斜上する」の意 |
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| ⑦ | 1965? | P. pendula f. ascendens | エドヒガン | 大井次三郎 | 植物園の名札、多くの事典 |
| 解説: ⑥の変種名に対して、「品種」として扱うべきとして、 訂正した。 これが今まで一般的に使われているが、 大元の ④ が無効名であるために、この命名も無効 |
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| ⑧ | ? | P. subhirtella form. pendula | シダレザクラ | 大井? | ⑤の変種を 品種に訂正したもの |
| 1971 | P. spachiana | エドヒガン | 北村四郎 | ② の異名 | |
| 1971 | P. spachiana f. ascendens | エドヒガン | 北村四郎 | ② の異名 | |
| 結果の推定 : | USDA が、② その他の標本のDNA鑑定を行った結果だろう。 これまで、② は エドヒガンとは別種と見なされてきたものが、ゲノム解析の結果で同一のものとわかったのではないだろうか? |
| いずれにせよ、エドヒガン と シダレザクラは「親類関係」であり、だからこそ 植物園では、2箇所とも 両者が隣り合わせに植えられている。 |
| 左 : シダレザクラ 右 : エドヒガン① |
| 小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ |