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とある貴族の開拓日誌 作者:かぱぱん

~第一章~ 開拓の始まり

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キートスの嘆願

エリーゼの妊娠祝いが終わって、三日後、俺は執務室でキートスの嘆願書に目を通していた。


曰く、人員とポストを増やしてください。死んでしまいます。


色々ぐだぐだと言葉を連ねてはいるが、要はこんな感じだ。

確かに、現在ではエンリッヒ侯爵家で雇っている人間は一万人をちょっと越えたぐらい、大半は開墾奴隷と傭兵なのだが、これらの名簿作成から始まり、予算の編成、諸経費の管理やら、各取引の履歴の作成及び保管やら、まぁとにかく仕事が多い。

キートスはそれらを一人で掌握している訳だ。

結構な数の部下がいるとは言え、中規模企業の社長が全部署の部長を兼ねてるようなもんだ。


うん。思った事を言っても良いか?


「なんで全部自分でやってるんだ。こいつ。」


「役職を独断で増やす事は、不正の温床となりますからな。ギリギリまで控えた、と言うところでしょうか。家中の者に役職を与えるのは、当主の重要な仕事の一つでございます。」


俺の問いにフィリップが答える。

ちなみにハリーは、ドワーフに贈る酒を買いに行ってる。

強い酒を好むドワーフには、醸造酒よりも蒸留酒が良いだろう、と言う事でウイスキーの長期熟成したモノを探しに行かせた。

かなりの量が必要なので、それなりの時間と白金貨を与えてある。

この世界と地球の酒はそんなに違いはない。

せいぜい、リキュール類が極端に少ないぐらいか。

まぁ、それは置いておこう。


そんな訳で、今はフィリップが俺付きの執事である。

この三日間だけでも、ハリーより仕事の質が格段に上である事を見せつけている。

ハリーも頑張ってるんだろうが、やはり年の功には勝てないようだ。


「と言う事は、俺が役職を考えなきゃいけないのか。」


「その通りでございます。」


なんてこった。


めちゃくちゃ、めんどくさいじゃないか。


そもそも、俺はキートスの仕事を全て把握している訳じゃない。

どの仕事に誰を割り当て、どんな成果に期待するとか、どういった仕事にキーマンがいればより仕事が円滑に進むかとか、まったくわからない。

上に立つ人間として恥ずべき事かも知れないが、俺は一生ダラダラできればそれで良いのだ。


うん。無理。誰かに丸投げ…


「アルマンド様、キートスと相談の上、速やかに決められますよう。ここに候補となる人員の名簿と、それぞれが携わっている任務の詳細がございます。明日、キートスに時間を作るよう伝えておきますので、それまでに把握しておいて下さい。私も同席致しますので、ある程度までは補佐いたします。」


え?え?


明日って言った?


てか、その書類どこから出したの?


どう見たって30cmぐらいの分厚さあるよね?


同席するって、それ逃げないようにって言う監視だよね?


「いや、俺がやるより色々把握しているキートスが決めた方が良いんじゃないかな?」


「それではアルマンド様、私は外で控えておりますので、ご用命がございましたらお呼び下さい。食事はここに運ばせますので。」


無視しやがった。


一礼して出て行くフィリップを見送り、俺は観念して書類に目を通し始めたのだった。


うん、キートスの偉大さがよくわかる。

昇格候補一人一人に詳細なレポートが着いていて、その人の能力や人格はもちろん、生い立ちやうちに雇われるまでの経歴なんかまできちんと書いてある。

うん、ありがたいんだが、何人候補いるんだよ。

と言うか、一晩で読みきれんのか、これ。


泣きそうになりながら、書類をめくる。


読めば読むほど、キートスの能力の高さに驚かされた。

これだけの仕事を一人で把握しているのもそうだが、その中から使える人間を見つけ、役職持ち候補として育てあげている手腕は驚嘆に値する。

以前、右腕的人物をマンシュタインの部隊に取られたからか、特定の人物に手腕を振るわせるのではなく、満遍なく仕事を割り振っているようだ。

今すぐキートスが死んでも、現場維持だけならと言う条件はつくが、仕事は回り続けるシステムを構築している。


こんなにデキるやつだったとは…。

今後も頼りにさせてもらおう。

いや、その前に、なんか報いてやらないとな。

ぶっちゃけ、忠誠心とかそんなもんで繋がれるほど、俺達の付き合いは長くもなけりゃ深くもない。

一度、キリの良いところで前世で言うボーナス的な何かがないと、頑張り続けるなんてアホらしくなるだろうし。


まぁ、前世を含めて、俺はもらった事ないけどな。ボーナス。

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