序章
イジメだよ。
俺は鉱山の糞尿始末係長になった。
部下はいない。
穴に貯まった糞尿を埋めて、新しい穴を掘るだけの簡単なお仕事だ。
「くせぇガキだな。」
係長就任初日から鉱夫のおっさん達に言われ、小屋から蹴り出される。
俺のベッドは地面そのものだ。
ウンコの穴はすぐ溜まる。
かなりの規模の鉱山なので、ざっと500人ほどが働いているのだ。
その糞尿の始末を、俺が一人でやっている。
当然、追いつかない。
「おいこら、溢れてんじゃねぇか、」
埋めるのが間に合わないと、おっさんに蹴り上げられる。
鉱夫だけあって、皆ガチムチマッチョメン。
殺す気だけはないようだが、割と容赦無い蹴りがくる。
一度、蹲ってたら溢れた穴に放り込まれたので、どれだけキツくても立ち上がって穴を掘る。
土の上だろうと、雨が降ってようと、寝るだけならなんとかなる。
だが、糞に塗れてると、飯をもらえない。
ただでさえ、一日一食で量も少ない食事だ。
成長期の俺には、かなりキツい。
それに、武芸の先生と違い、こいつらはパワーはあるが素人だ。
避ければ逆上されるのはわかっているので、身体で受けるしかないが、立ってさえいれば見た目ほどダメージはない。
まぁ、痛いもんは痛いんだけどな。