序章
働くよ。
次の日、親父は牢を出され、そのまま帰って来なかった。
最期まで俺に謝り続けてたが、俺は一言も口を聞いてない。
牢に入って三日目、俺も牢を出され、また縄を打たれて馬車に放り込まれた。
この一週間ほど、ろくに飯を食ってないので、ふらふらである。
日光がやたら眩しい。
「降りろ。」
騎士ではなく、一般兵っぽい軽装の兵士に蹴り上げられる。
馬車に揺られたのは五日ほどか。
扱いは、最低以下。
こいつらにとって、俺は存在すら感知しなくても問題ないらしい。
一日一食で、具の少ないスープだったが、飯は出た。
さて、連行されたのは鉱山だった。
どう考えたって、強制労働というやつに従事させられるんだろう。
俺はもう何も考えてない。
考えても、どうなるかなんて、はっきりしている。
虫けら以下の人生を、俺はここで過ごすのだ。
親父は、もう処刑された頃だろうか。
母親とは結局顔を合わせなかった。
無事、と言う事はないだろう。
そういや、前世で学生の頃、建築現場でバイトした事があったが、アレはキツかった。
アレよりキツいお仕事を、労働基準法なしでやれ、と。
ダメだ、考えるのはよそう。
こうして、俺は貴族から奴隷なった。
【奴隷】
如何なる権限も持たない身分。
王国法では、奴隷に分類を設けていないが、国有の奴隷と個人所有の奴隷とで分類されるのが一般的である。
国有の奴隷は、鉱山や国家土木事業での労役や、戦争などで使われ、国有奴隷のまま解放される事は稀である。
個人所有の奴隷の用途は多岐に渡り、従ってその扱いも千差万別である。
また、生物としての権利等は一切保持出来ない為、納税や兵役の義務も発生しない。