▼行間 ▼メニューバー
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
とある貴族の開拓日誌 作者:かぱぱん

序章

4/162

修行だよ。

朝目覚めるとメイドが朝食を持ってくる。

メニューは、パン、茹で卵、ベーコン、サラダ、紅茶。

日によって多少変わるが、だいたいこんなもんだ。

貴族の割には普通だと思ってたが、一般人はもっと粗末なものを食ってるらしい。

屋敷からほとんど出た事がないし、他人の飯など知ったこっちゃないが。

貴族、サイコーです。


その後、お付きのメイドに顔を洗われ、服を着替えさせられる。

初めは下着から何から絹だったが、あの肌触りと冷たい感触が好きになれたなかったので、駄々をこねて木綿の服を着ている。


「男爵家の御曹子が綿の服など」


と、執事のおっさんが説教に来たが、別に外に出る機会もないし、社交界デビューも十年ほど先だろう。

部屋着みたいな扱いで、なにがダメなのか問いただし、最後は子供の必殺技「なんで?」を連発して沈黙させた。


ムキになり過ぎた感はあるが、やはり絹より綿の方が、俺は好きなのだ。


さて、こんなやりとり以外は特に変わった事もなく、俺は五歳になった。


両親は色々と忙しいらしく、あまり顔を合わせる事もない。

だらしない生活をしている訳ではなく、領地の経営や王宮でのコネ作りは、本当に忙しいらしい。

まぁ、俺は誰かに任せる気満々だが。


五歳になったので、俺に魔法の先生と武芸の先生がついた。

初日こそワクワクしながら挨拶したが、そこからは地獄の日々。


今思えば、座学の家庭教師は、本当に優しい先生だった。

前世の貯金がある俺は、三歳児としては非常に優秀な生徒だったのもあるのだろう。

余った時間は好きな本を読んだり、メイドにかまってもらったりしながらテキトーに過ごせたのだ。


だが、この二人は違う。


朝から晩まで、修行漬けである。


朝食を済ませると、魔法教師の監視付き座禅。

魔力を知覚する修行らしい。

それを二時間ほどやってから、今度は魔法の基礎理論概説。

これがとんでもなく難解で、若干数学っぽい。

公式を覚えた上で、ひたすら応用の繰り返し。

理解しないと魔法が暴発する事もあるらしいので、予習復習は怠れない。

また、魔法の発言にはイメージが関わる部分もあるらしく、色んなモノに対する知識を深めねばならなかった。

例えば、水とはなんなのか、H2Oです、ならばHとOとはなんなのか、と言った具合に突き詰めていくのだ。

あくまで例えだからね!この世界じゃまだ原子は発見されてない。


これが終わって昼食。

だが、本当の地獄はここからだ。

武芸の先生の教育方針は至極単純。

曰く、身体で覚えろ。

具体的には、貴族の子弟にこんな事して良いのかってほど打ち据えられる。

手にする武器も日によって変わり、昼過ぎから夕方までひたすらボコられる日々。

身体中、痣だらけで前世でいう、喧嘩に負けた不良みたいになっていた。

あ、最初の一週間に武器の握り方とか、ある程度の使い方は習ったよ。

そして、夕方から日が落ちるまでは、乗馬の訓練。

こちらは順調である。

最初の頃は内腿の筋肉痛と、落馬による全身打撲に悩まされたが、すぐに普通に乗れるようになった。

今は手綱を離して、足だけで馬を動かす練習をしている。


一度、執事のおっさんに、もうやりたくないって言ったら


「お父上に仰るのですな。私共にやめさせる権限はございません。」


と、突っぱねられた。


親父になんか言うの苦手なんだよな。

妙に威圧感あるし。


まぁ、必要な事っぽいので諦める事にする。

と言うより、他にする事がないんだけどな。

屋敷にある本、全部読んじゃったし。

  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く際の禁止事項をご確認ください。

※誤字脱字の報告は誤字報告機能をご利用ください。
誤字報告機能は、本文、または後書き下にございます。
詳しくはマニュアルをご確認ください。

名前:


▼良い点
▼気になる点
▼一言
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。