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とある貴族の開拓日誌 作者:かぱぱん

序章

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生まれたよ。

王国暦1299年9月、俺はカイスト王国、エンリッヒ男爵家の嫡男、アルマンドとして誕生した。

前世は地球と言う太陽系にある惑星の、日本という国で、酒販関係の会社に務めていた。


享年26歳。


事務の女の子がやらかしたミスのおかげで、一週間ほどろくに睡眠がとれない日が続き、遮断機が降りた踏切の中に取り残された。

何故そうなったか、どうしても思い出せない。


ま、疲れてたんだろう。


今世に生まれた時は、かなり混乱した。

キリッとしたちょびひげが親父、そこそこ美人だか顔にあんまり特徴のないおねーさんが母親。

他にも使用人っぽい女の子やら、執事っぽいおっさんが家にはいて、なんやかんやと俺の世話をしたり、部屋の掃除やらしていた。

おまけに見た目外国人。言葉も当然訳わからんし、俺自身の感情もまったくコントロールできなかった。

記憶と自我があるだけに、ものすごく不安だ。

暇つぶしに、よく読んでいた某投稿サイトの転生小説では、なんか特別な力をなにかしらの方法で手にいれたり、家柄が特別だったりして、成り上がったり自由に生きたいように生きたりするわけだが、世の中そんなに甘くない。

まず、大抵の話で登場する優秀な先生や先輩に出会える確率が、実際どんなもんなのか、26年の人生経験だけだが、俺はよく知っている。

また、才能云々もそうだ。

この世界にも魔法は存在しているし、かなり便利な能力だが、使える人間はそれなりにいる。

数が集まれば競争は激しくなるし、個人能力には限界がある。

どれだけ才能があろうと、実際の世の中でそれがどれだけ活きるかは、運だと言って良い。

おまけに、それも才能があればの話しであり、才能があっても尋常じゃない努力を強いられる。

俺は、生粋の怠け者なのだ。

そんな努力できっこない。


うちが貴族であり、領地もあり、それなりにうまい事やってる事が確認できたときは、内心小躍りしたもんだ。


贅沢し放題できるほど裕福ではないようだが、領地経営は家臣たちに丸投げすりゃ、ほぼほぼニートな生活が俺を待っている。

月の残業が100時間に迫る勢いで働かされてた俺にしてみれば、間違いなくこの環境は天国と呼んで差し支えない。

よほどの下手を打たない限り、一生安泰である。



俺は、この時、貴族というものをナメていた。

【カイスト王国】

ヒューマン種、所謂人間が興した王国。

建国者は、ファレオン・マルゴー。

現在の王は三十七代目。

ファレオンの直系は断絶しており、現在の王は彼の四男の家系である。

ファレオンは、農村の富農出身で、数多の俊英を束ね、三百年続いた乱世に終止符を打った。

封建制度を採用しており、貴族は王都で政府の役所を兼ねる者と、地方で領主を兼ねる者に大別される。

文明の発達具合は、地球史で言う中世から近世。

地球にはない魔法が存在する為、多少の齟齬はある。


爵位は、上から公、侯、伯、子、男の五爵。

その権勢を地方領主に例えるならば、公爵が小国並の領地を持つのに対し、男爵は原則一村及びその周辺と、かなりの開きがある。


面積は中国の1.2倍程度。人口は一億五千万人。

世界有数の強国であるが、建国以来の拡大政策と政府役人及び公爵家の腐敗によって国力は衰退の一途を辿っている。

主な産業は地方によって異なるが、全体として麦の栽培が盛ん。

地方別では、おおまかにではあるが、北方では畜産、東方では交易、南方は林業及び鉱業が主である。

西方は他国と接していない為、カイスト王国の領土と称しているが、長大な山脈とそこに生息する飛竜よって隔絶しており、一切の開発が行われておらず、地形等も不明である。

また、海に接している土地が事実上ほとんどない為、海産物が非常に珍重されている。


政府の形態は、二府五院から成る。

宰相府、軍令府の二府。

王家院、貴族院、枢密院、財務院、内政院の五院である。


宰相府は、宰相がその長となり王の政治を補佐する。

具体的には、四院の政務を監督し、その提案を吟味した上で修正または破棄する権限を持ち、王へ奏上した後に実行または遂行命令を各院にだす。

その為、国政全般に多大な権限を持ち、実質上その権勢は王を凌ぐ。


軍令府は、国境防衛、他国侵攻、国内の治安維持などを管轄する。

事実上の下部組織である枢密院とは、建国以来強い繋がりを持ち、従って王個人との繋がりも強い。

但し、軍費や兵站、徴税権など、軍の維持に必要な部分を宰相府を始めとした一府四院に握られている為、権勢を振るえる立場にはない。

伝統的に、建国の英雄レイガルを始祖とするオーブリオン公爵家がその長となる。


王家院は、各国家儀式、後宮の管理、王族の個人的な財務、外交などを司る。


貴族院は、王国貴族の家系、叙爵、私兵の把握、等の管理を司る。


財務院は、国内の徴税、国庫、義倉、専売、等の管理を司る。


内政院は、国家土木事業、各鉱山、直轄地の行政、等の管理を司る。


枢密院は、王の諮問機関である。政務に直接的な権限を有してはいないが、他の府院の権限に抵触しない、またはその権限を一時的に移譲された場合のみ、王の独断で人員を差配できる。


各院は、長の判断と宰相の裁可によって、省の設立が為され、政務を遂行する。

省の長は最低でも、伯爵位が必要。


また、各院の長は公爵家から選ばれた者が適宜任命され、その任命は十六公爵家が吟味した後、宰相によって為される。


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