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最終更新日:2020.04.03

新任教員紹介

菊川 芳夫(キクカワ ヨシオ)

所属 専攻相関基礎科学系
学科統合自然科学科
部会物理
職名 教授
発令年月日 2012年4月 1日

 

略歴 ■最終学歴
1992年3月 名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻修了
■学位
1992年3月 名古屋大学大学院理学研究科 博士(理学)
■前任職
東京大学大学院総合文化研究科 准教授

 

担当科目 ■前期課程
熱力学、振動・波動論、力学、電磁気学、他
■後期課程
■大学院
場の量子論II、他

 

研究活動 ■研究分野
物理学,素粒子論
■研究業績
  1. "A lattice study of N=2 Landau-Ginzburg model using a Nicolai map." H. Kawai and Y. Kikukawa, Phys. Rev. D83 (2011) 074502.
  2. "Reflection Positivity of Free Overlap Fermions." Y. Kikukawa and K. Usui, Phys. rev. D82 (2010) 114503.
  3. "A Construction of the Glashow-Weinberg-Salam model on the lattice with exact gauge invariance." D. Kadoh and Y. Kikukawa, JHEP 0805:095 (2008), Erratum-ibid. 1103:095 (2011). 
  4. "Solving the local cohomology problem in U(1) chiral gauge theories within a finite lattice."D. Kadoh, Y. Kikukawa and Y. Nakayama, JHEP 0412 (2004) 006.
  5. "Nicolai mapping vs. exact chiral symmetry on the lattice." Y. Kikukawa and Y. Nakayama, Phys. Rev. D66 (2002) 094508.   
  6. "Gauge anomaly cancellations in SU(2)L x U(1)Y Electroweak theory on the lattice." Y. Kikukawa and Yoichi Nakayama, Nucl. Phys. B597 (2001) 519-536.
  7. "Weak coupling expansion of massless QCD with a Ginsparg-Wilson fermion and axial U(1) anomaly."Y. Kikukawa and A. Yamada, Phys. Lett. B448 (1999) 265-274.
  8. "Overlap in odd dimensions." Y. Kikukawa and H. Neuberger, Nucl. Phys. B513 (1998) 735-757.
  9. 「講談社基礎物理学シリーズ3『熱力学』」、講談社サイエンティフィク、2010年.
  10. 「格子フェルミオンの問題」物理学辞典(3訂版)、講談社、2009年. 

 

採用理由  菊川芳夫氏の研究分野は、素粒子論、特に格子ゲージ理論を主たる研究対象とされています。中でも格子カイラルフェルミオンや格子カイラルゲージ理論の研究に関して、国内における第一人者であり、国際的にも高く評価されています。
 極めて精密に素粒子の現象を説明することが出来る素粒子の標準理論では、ゲージ理論と呼ばれる相対論的場の量子論をその基礎に置いています。これは無限自由度系であるため、理論を正則化した上で繰り込み理論を用いて物理量を計算する処方が不可欠です。特に格子ゲージ理論は、時空を格子上に区切るという正則化を用いるもので、これによってハドロンなどの強い相互作用をする素粒子の性質を、非摂動的に第一原理計算によって導くことが可能になるなど、極めて強力な方法を与えてくれます。しかし、電磁相互作用と弱い相互作用を統一的に扱う電弱理論に関しては、長い間非摂動的にはほとんど取り扱えない状況が続いていました。それは格子カイラルフェルミオンの定式化という難問が立ちはだかっていたからです。この状況にブレークスルーが起きたのは、1998年です。この大発展をもたらした牽引者の一人が菊川氏でした。特にオーバーラップフェルミオンというカイラルフェルミオンの構成法のひとつに対して、提唱後直ちに奇数次元でも定式化できることや、強い相互作用を記述する格子QCDに対しても正しい軸性アノーマリを与えることなどを示し、この方法の確立に重要な貢献をされました。
 准教授として本研究科着任後もこの方法をさらに発展させてカイラルゲージ理論の定式化を押し進め、電弱理論の格子ゲージ理論としての構成に成功しました。これは、宇宙のバリオン数生成を始め、素粒子物理学における謎に対し非摂動的に解明する道を開いた重要な結果であるといえます。この他にも最近では、格子ランダウ-ギンツブルク模型の赤外固定点において超対称共形対称性が実現していることを格子場の理論を用いて直接示すことに初めて成功するなど、現在も活躍を続けています。
 菊川氏は、教育にも熱心で、大学院生に対する熱のこもった指導は定評があります。また前期課程向けの熱力学の教科書も最近執筆されました。学内業務に関しても、系の広報委員長を始め、数々の役職を常に真摯に取り組んできました。2011年度には、研究科長補佐として、特に大震災後の節電対策など献身的に働きぶりは記憶に新しいところです。 以上のように、優れた研究業績のみならず、教育にも学内業務にも真摯に取り組む姿勢は、本研究科の教授に相応しく、今後も本学を背負う人材であると判断いたしました。

 

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