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最終回前に『進撃の巨人』誕生秘話と、先生の思考の変遷と歴史をおさらい! 最終回がますます楽しみになる!(『進撃の巨人 キャラクター名鑑』P.150~163 2017年8月9日発行より再録)
夢に生きたエルヴィンの死
〝対等の関係〟だった友を失ったリヴァイは……?
シガンシナ区決戦ではエルヴィンが命を落とすという、とてもショッキングな出来事も起きました。
諫山先生:あそこでエルヴィンが死ぬことは、事前に決めていたんですよ。エルヴィンとリヴァイについては、対等な関係として描きたいとずっと思っていて。エルヴィンという人は「真実を知りたい」という無邪気な動機と、父が死ぬきっかけを作ったことに対する贖罪意識から、調査兵団に入っています。それがいつしか組織を引っ張る立場になって、〝夢を追う子供の自分〟と〝責任ある大人としての自分〟の間で揺れることになる。そんな自分を納得させようと、〝人類の未来のため〟という偽りの目的で、エルヴィンは自分自身を騙し続けたんですよ。
「人間性をも捨てる」と思われた男が、自分の夢を捨てきれずにいたのは本当に衝撃的でした。
諫山先生:リヴァイにとっても、そんな感じでしょうね。リヴァイがこれまで行動を共にしてきたのは、エルヴィンが掲げた〝人類の未来のため〟という目的を、自分が想像もしなかった利他的な行動と捉えて、自分自身の生きる使命としたからです。だからエルヴィンにも〝使命に忠実〟で、〝冷徹な判断ができる〟男を求めてきた。それが実際には〝夢〟という利己的な目的があったと知って、彼は裏切られたような思いをしたというか。でも、自分が絶対に敵わない存在だと思っていた男に、「夢を追いかける無邪気な子供のような一面があったとは」とも感じているんです。
偉大な男も自分と同じ人間だったと知ったうえで、リヴァイは「夢を諦めて死んでくれ」と告げた。何とも残酷な選択というか……!
諫山先生:話しながら当時のことを思い出していたのですが、あの場面を描いている時に、「人間の本性が明らかになるのは、どう転んでも自分は死ぬという状況に追い詰められた時だ」といったことを考えていましたね。エルヴィンにとっては、シガンシナ区決戦で獣の巨人に追い詰められた時こそが、本性が明らかになる時でした。そこで彼が見せたのは、地下室で〝夢〟を叶えることと、獣の巨人と最期まで戦う〝責任〟の間で揺れる自分です。そんなエルヴィンの姿を見て、リヴァイは「夢を諦めて死んでくれ、と言って欲しい」と訴え掛けられているように感じたんです。エルヴィンの気持ちを察したんですね。そういった意味ではリヴァイの一言があったからこそ、エルヴィンは次の未来を考えて夢を諦めることができて、使命を重んじる大人に成長できたというか。
ただ最期にエルヴィンの脳裏に浮かんだのは、お父さんと一緒に過ごした、夢の始まりとも言える教室でしたよね。あれは彼にとって幸せな光景だったのでしょうか?
諫山先生:どうなんでしょう……。その答えが分からないまま、死んでいった感じですね。答えを分からないままにしておくことを、エルヴィンが自ら選んだということでしょうか。ただ、まったく後悔がないとも言えなくて……もしかしたら後悔もあったかもしれませんね。たしか当時は「みんな、何かの奴隷だった」と考えながらネームを描いていました。エルヴィンの場合は〝夢〟に捕らわれた奴隷というか。そして生きている限りはそこから解放されることはなく、解放されるには死ぬしかなかったんです。リヴァイが蘇生を諦めてくれたことで、エルヴィンは死によって奴隷的状況から解放されたんでしょうね。
リヴァイもエルヴィンのそんな想いを理解していたんでしょうか。
諫山先生:そうですね。リヴァイがエルヴィンの生死を選ぶ場面では、ケニーとの経験が影響を及ぼしているんですよ。リヴァイは幼少期にケニーとの別れを経験して、「ケニーが去ったのは、自分が期待に応えられなかったから」という気持ちをずっと引きずっていました。それが壁の中で革命が起きて、敵としてケニーと再会した時、リヴァイは子供の頃からの想いを果たそうとしました。でも最後は、ケニーは地下洞窟が崩壊したことが原因で重傷を負い、しかも自分の延命のために巨人化の注射を使うのではなく、それをリヴァイに託して息を引き取ります。リヴァイにしてみれば、利己的に生きてきたケニーが最後は利他的な行動を選んだことにとても驚いたんです。その時の経験から、リヴァイはエルヴィンを蘇生させるのではなく、人間として接して、彼の死を選択したんでしょうね。
そういえば今、思い出したのですが、よく「夢は最後まで叶わないほうが幸せだ」と仰る方がいますよね。そこには「最後まで夢を目指し続ける」ほうが、その人にとって良い人生になるんじゃないかって意味なんだろうなと、エルヴィンの最期を描きながら考えていましたね。
そういえば今、思い出したのですが、よく「夢は最後まで叶わないほうが幸せだ」と仰る方がいますよね。そこには「最後まで夢を目指し続ける」ほうが、その人にとって良い人生になるんじゃないかって意味なんだろうなと、エルヴィンの最期を描きながら考えていましたね。
手が届かないからこそ夢であり、それを目指して進んでいける側面はたしかにありますよね。でも、その選択の末に、リヴァイはエルヴィンという掛け替えのない存在を失ってしまいました。今後、リヴァイは戦いの動機をどこに求めていくのでしょう。
諫山先生:宙ぶらりんな状態ですよね。エルヴィンの最期に立ち会ったことで、役割を全うしたような感はあって。もちろん、獣の巨人を仕留めるという目的はあるとは思いますけど。ただエルヴィンを失って空いてしまった組織的な穴については、アルミンに求めていくんじゃないかな? 単行本18巻で壁の中に潜むライナーを探すシーン以降は、僕はエルヴィンとアルミンを〝過去〟と〝未来〟の対比にしたいと考えながら描いていました。エルヴィンは夢が叶わずに死んでいった。それに対してアルミンは夢を叶えて、現実を見るしかなくなってしまったという。