仏、全土で3度目の外出制限 英国型変異ウイルス拡大で

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鈴木一人さん他1名の投稿鈴木一人伊藤さゆり
31日、テレビ演説するマクロン大統領=ロイター

【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は31日、新型コロナウイルス対策としてパリなど19地域で実施中の外出制限を4月3日夜から全土に広げると発表した。全国規模の外出制限は3度目となる。学校も3~4週間休校や遠隔授業とする。国民の1割強がワクチンを接種したが、感染力が強い英国型変異ウイルスの勢いを止める水準には達していない。

マクロン氏はテレビ演説で「これまでの戦略は効果を上げたが、限定的だ。変異ウイルスを背景に感染が加速している」と語った。外出制限は4週間実施する。薬局や食料品店などを除く商店は閉まり、自宅から10キロを超えた場所に行くには自己申告の理由書を持ち歩く必要がある。

フランスは3月上旬ごろから感染「第3波」に入ったとみられ、現在は英国型が新規感染の8割を占める。1日当たりの感染者数は約3万~4万人を記録する日がある。若年層が重症化する確率が以前より高く、マクロン氏は重篤な患者の44%は65歳未満だと説明した。

ワクチンは仏全体で高齢者を中心に850万人以上が受けており、夏が終わるまでに希望する18歳以上の国民全体の接種を終えたい考えだ。感染の速度が緩まれば、5月半ばから夏の初めにかけレストランやスポーツジムの再開の日程を決めるとした。ただ世界でワクチンの取り合いが起きていることから、日程通り進むかには不透明感がある。

ドイツも第3波に見舞われている。2月中旬の感染者数は1日当たり7千人台だったが、現在は約1万6千人となっている。同じく英国型変異ウイルスが増えているのが要因とみられている。

英国では国民の半数に相当する回数のワクチン接種が終わり、感染者や死者数が減る傾向にある。4月には飲食店の再開も予定し、6月に経済の正常化を目指すなど、大陸欧州とは対照的になっている。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 鈴木一人のアバター
    鈴木一人東京大学 公共政策大学院 教授
    分析・考察

    欧州大陸ではワクチン接種のスピードよりも変異株による感染拡大のスピードの方が上回り、ロックダウンを実施せざるを得ない状況となっている。アメリカやイギリス、イスラエルなどワクチン接種が進んだ国と比較すると、政府やEUの失敗がより際立つ状態になっている。ワクチン接種のスピードが上がらない理由がEUの失敗となると、EUに対する遠心力が働くのではないかと思われる。

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  • 伊藤さゆりのアバター
    伊藤さゆりニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
    別の視点

    フランスが制限を厳格化、イギリスが緩和と対照的な動きになっている理由はワクチン接種のスピードの違いだけではありません。 イギリスでは、年末からの変異ウィルス急拡大に対応して厳しい制限を継続してきました。フランスでは、感染の緩やかな拡大が続いていましたが、制限を抑えてきたことで、行動が緩み、感染加速を許してしまいました。 国際的な世論調査では、フランスは主要国でワクチン忌避の傾向が強いことも確認されています。仮に、供給が十分でも、フランスでは、主要国で最もワクチンに前向きな英国のようなスピードでは接種は進まなかったかもしれません。

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