学習と健康・成長

「服育」を通して学ぶ社会とのつながり 国際意識を学ぶきっかけにも

2021.04.06

author
阿部 花恵
Main Image

生活の土台となる衣食住の一つでありながら、おしゃれの観点以外では語られる機会が少ない「衣服」。しかし、衣服が果たす役割はそれだけではありません。健康や安全を守ることはもちろん、社会性、環境意識、さらには国際意識を学ぶきっかけにもなります。今回は、そんな衣服の学びについて、服育net研究所の有吉直美さんにお話を聞きました。

保護者の服の価値観は子どもにも影響する

――家庭でも実践できる「服育」はありますか。

多くの子どもは、保護者の普段の服装や着こなしを無意識のうちによく見ています。だから、保護者はその日に選んだ服装について、話をする機会を持つといいですね。「今日はなぜジャケットで出かけたんだと思う?」、「コロナ禍で在宅勤務が始まってから、スーツを着なくなったのはなぜ?」、「山登りで着た防寒着の意味は?」など。そんなふうに問いかけてみることで、TPOに合わせた服の選び方を学んでいくでしょう。

服育_2

また、保護者が値段だけで服を選ぶ様子を見せていると、子どもも値段でしか選ばなくなる傾向が見られます。購入時の基準が価格だけになると「安ければ何でもいい」「ワンシーズンしか着ないし」と思考停止になりがちに。結果として、TPOに合った服の選び方や着こなしの工夫、サステナブルなどを自発的に考える機会は減ってしまいます。

もちろん、経済的な都合もあるので価格を軸にした考え方も大事ですが、服にはそれ以外にも大切な要素があります。そうした多様な要素があることを踏まえつつ、衣服が持つ役割や価値を伝え、「服を大切にしたい」という気持ちを育めるといいですね。

――服を選ぶ際のさまざまな視点を、きちんと子どもと共有することが大事なんですね。

思春期はおしゃれに関心が高まる時期です。けれども「自分をよく見せる」一点だけにとらわれると、寒い日に薄着したり、授業に邪魔になるヒラヒラした袖の服を着たり、といった失敗も引き起こしてしまいがちです。

流行や世間の常識はどんどん変わっていきます。保護者は「この服を着なさい」、あるいは「こんな服は着ちゃだめ」と子どもに強制するのではなく、声掛けをしながら一緒に適切な着こなしを考える場面を持ちましょう。

子どもがミニスカートで出かけようとしたときは後ろ姿を鏡で見せたり、スマホで撮影したりして「この角度だと下着が見えそうだよ」と工夫を促す。卒業式・入学式といった晴れの場で着る服を一緒に選ぶことも、TPOについて考えるよい機会になるでしょう。

そういう小さな体験の積み重ねによって、衣服を選ぶ目や、自分なりのおしゃれの価値観が徐々に形成されていくはずです。

(編集:ゆきどっぐ+ノオト)

新着記事