近年、SARS(コロナウイルス科)、鳥インフルエンザ(オルソミクソウイルス科)などの新たなウイルス感染症が発生し、人々の健康を脅かす事例が増えております。シャープは、新しい技術による空気の浄化を追求し、空気を媒介とした病気の原因となる有害物質へのプラズマクラスターイオン効果を体系的に検証してまいりました。今回は、ウイルス研究で世界的な権威の社団法人 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 鈴木達夫先生、小林憲忠先生と共同で、コロナウイルス科に属するネココロナウイルスに対して、プラズマクラスターイオンによる不活化実証実験を実施しました。その結果、40分以内に99.7%を不活化、すなわちウイルスを破壊し感染力を抑える働きがあることを実証しました。
これにより、空気感染による主要な病原性ウイルスの基本的な3つの分類型においてプラズマクラスターイオンの効能を検証することができました。
「プラズマクラスターイオン技術」とは、空気中の水分子と酸素分子から生成したプラスとマイナスのイオンを空気中に大量に放出することで、浮遊カビ菌・インフルエンザウイルス・ダニアレルゲンなどを取り囲み、化学反応によって不活化する画期的な空気浄化技術です。当社は、この技術を2000年に開発し、アカデミックマーケティング※3の考えに基づいて、世界の学術研究機関と共同でその効能検証を進めています。
1m3のボックス内にプラズマクラスターイオン発生素子を設置したものとしないものを2つ用意し、両ボックスにネココロナウイルスを飛沫噴霧して、それぞれの不活化効果を比較する実験を行いました。(評価方法は、ウイルス研究分野で一般的に用いられている細胞への感染量を測定するTCID50法です。)
その結果、イオンを作用させるとウイルスは、40分以内で99.7%不活化することを実証しました。これはイオンがウイルスの細胞に感染する際の触手部 (タンパク質でできたスパイク)から、水素(H)を抜き取り破壊することによるものと考えられ、不活化したコロナウイルスは、体内に入っても感染しません。
対象物質 | 種 類 | 実 証 機 関 | |
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ウイルス | コロナウイルス | (社) 北里研究所メディカルセンター病院 | (2004年 7月) |
インフルエンザウイルス | (財) 北里環境科学センター 韓 国 ソウル大学 中 国 上海市予防医学研究院 (社) 北里研究所メディカルセンター病院 |
(2002年 9月) (2003年 9月) (2003年12月) (2004年 2月) |
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コクサッキーウイルス | (財) 北里環境科学センター | (2002年 9月) | |
ポリオウイルス | (財) 北里環境科学センター | (2002年 9月) | |
アレルゲン | ダニアレルゲン (ダニの死骸・糞による粉塵) |
広島大学大学院 先端物質科学研究科 | (2003年 9月) |
花粉アレルゲン (スギ花粉抽出アレルゲン) |
広島大学大学院 先端物質科学研究科 | (2003年 9月) | |
細 菌 | MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) |
(財) 北里環境科学センター (社) 北里研究所メディカルセンター病院 |
(2002年 9月) (2004年 2月) |
大腸菌 | (財) 石川県予防医学協会 | (2000年 9月) | |
バチルス菌 | (財) 北里環境科学センター | (2002年 9月) | |
バクテリア(大腸菌・ブドウ球菌) | 中 国 上海市予防医学研究院 | (2001年10月) | |
真 菌 | クラドスポリウム(黒かび) | (財) 石川県予防医学協会 中 国 上海市予防医学研究院 ドイツ リューベック医科大学 |
(2000年 9月) (2002年 1月) (2002年 2月) |
直径60~220nmの球形ウイルスで、RNA型核酸を蛋白からなる袋状のエンベロープが取り囲んだ構造をしており、約20nmの糖蛋白からなるスパイク状の突起を有している。
人や猫、鳥、犬、マウスなどに感染する各種ウイルスがあり、動物においては呼吸器や腸管、肝臓などの臓器に疾患を起こす。人においては一般的に呼吸器に疾患を起こし、風邪全体の10~30%の原因となっていると考えられている。
大正3年(1914年)、北里柴三郎によって、各種疾病の原因および予防治療方法の研究並びに治療施設の運営を行うことにより、国民保険の向上に寄与することを目的として創立されました。北里柴三郎は破傷風菌の純粋培養の成功に続く破傷風免疫抗体の発見により、一躍世界に盛名を馳せました。また、実学の思想を大切にし、公衆衛生の普及発達に努力しました。
北里研究所メディカルセンター病院 研究部は、高度先端医療の水先案内人として、数多くの臨床研究と基礎研究が展開されています。なかでも「院内感染対策病室」の開設に伴い、医療環境科学センターを院内に開設。総合的な見地から医療環境の充実を目指した研究開発が行われています。当院においては、医療レベルを常に高く維持するために、数多くの臨床研究と基礎研究が展開される「場」として、バイオメディカル・ラボが設置されています。当ラボは高レベルの清潔度を保持し、実験動物施設をはじめとし、細胞実験室、理学実験室、核酸実験室、細胞解析室など、基礎から臨床まで多種多彩な研究を行うことのできる施設を有しています。当ラボでは、免疫学および微生物学に精通しているスタッフによる感染症、癌、老化を中心に、高度医療を支える柱の一つとして研究を展開しています。また、当研究所の医療環境科学センターとの協力体制で、病院環境を第一に考え、化学療法剤、消毒液などの開発も行っています。
鈴木達夫先生
北里研究所メディカルセンター病院 医療環境科学センター長 兼 研究部長
兼 北里研究所病院 院長補佐 兼 北里大学客員教授
(専門)感染・免疫学
小林憲忠先生
北里研究所メディカルセンター病院 研究部 バイオメディカル・ラボ 科長補佐 医学博士
(専門)免疫学、分子免疫学、微生物学
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