約100年前のスペイン風邪の流行をテーマにした、志賀直哉原作の「流行感冒」が4月10日夜、NHKBSプレミアムで放送される。主役の作家を本木雅弘が務める。NHKはコロナ禍の今、1世紀前の危機と重ねて描くことで、希望と指針を示したいという。
スペイン風邪により、日本では1918(大正7)年から3年間で、関東大震災の4倍に当たる約40万人が死亡した。
小説の神様・志賀は、ウイルス禍におびえて生きる自身の経験や心情を作品にした。理性を失い人間不信に陥った主人公が、世の中への信頼を回復し、日常を取り戻すまでの心の動きを、軽妙かつ鋭い観察眼で見つめる。
小説家の私(本木)は妻の春子(安藤サクラ)と4歳の娘・左枝子、お手伝いと共に暮らす。左枝子の健康に臆病なほど神経質な私。夏でも風邪をひかぬようにと厚着をさせ、腹痛を起こさないようにと、外で他人からの物を食べさせない。左枝子の前の子をはやり病で亡くしているためだ。
1918年秋。スペイン風邪が流行する中、村人が集まる芝居をお手伝いが見に行ったのではないかと、疑念を持つ私。お手伝いは否定したが、私は辞めさせようとして、騒動となる。
コロナ禍で、あらためて注目をあびるスペイン風邪の流行。病が生む猜疑心(さいぎしん)を深くえぐる原作を、本木、安藤の演技派コンビがどう演じるか。注目したい。(金井恒幸)