まもなく始まる東京オリンピックの聖火リレーでは、環境に優しい次世代燃料・水素を使ったトーチが五輪史上初めて登場します。JNNは今回、「水素トーチ」の開発現場をメディアで初めて取材しました。
20日、日本に到着する東京オリンピックの聖火。来週26日からは福島県でいよいよ聖火リレーがスタートします。
時代にあわせ、数々の話題を提供してきた聖火リレー。東京大会も史上初の取り組みがあります。JNNは、その聖火トーチの開発現場にメディアで初めて入りました。
トーチから燃え上がる炎。燃料は次世代燃料として注目されている水素です。二酸化炭素を排出せず、環境に優しい次世代燃料が初めて聖火をともす燃料に使われます。
水素トーチ製造チームの代表企業であるトヨタ自動車の山岸典生さん(56)。最大の課題は、小型化でした。
「水素はこの容器の中に150リットルくらい入っている」(東京2020水素トーチ製造チーム・山岸典生さん)
東京オリンピックのトーチは、日本人になじみの深い桜がモチーフになっています。このデザインのまま、水素を十分に貯め安定的に炎を出すにはどうすればいいのか。
「設計を6回くらい変えました。一時はこの容器も丸じゃなくて五角形にしたり、いろいろ試作トライをしてきた」(山岸典生さん)
さらに、一般的なガスの炎とは違い水素の炎は無色透明。その炎の色づけにも工夫をこらしました。使ったのは重曹です。
「塩みたいなのが付いている、これが重曹。この重曹が炎色反応を起こしてオレンジ色の光が出てくる」(山岸典生さん)
完成したのは、わずか3か月ほど前のこと。水素トーチはまだ大量生産ができないため、実際に使われるのは福島・愛知・東京の3都県でごく一部のランナーだけです。
「ギリギリ、ギリギリです。リミットいっぱいまで使わせていただいて、最後の最後までできるかどうか分からなかった」(山岸典生さん)
今月7日には、福島県浪江町に水素燃料の製造拠点が完成。水素燃料は、聖火台や選手村の宿泊棟の一部電力、大会関係車両の一部にも使われます。東京大会は、低炭素社会に向けた日本のアピールの場にもなっています。
「クリーンなエネルギーで、今までとは違う観点のトーチだと思っています。第一歩として水素トーチで東京オリンピックに臨めるのは非常にうれしい」(山岸典生さん)
このトーチが、水素社会実現の最初の一歩になればと、山岸さんは話しています。