ちつトレ討論 2011 後編 2

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 ただ、前半でも語るほどに損なわれるって話があって、荻原さんは語れば語るほど性欲が上がるとおっしゃいましたが、それってプレイですよね。デートの最初からセックスの話をするっていうのは、もうそこからセックスに向かってるんですから。


 プレイでの語りとプレイじゃない語りがあるんだ…


 確かにプレイでない語りは盛り下がるという辻くんの主張は非常に賛同しますよ。逆にプレイでの語りはそれは言葉の責めですもんね。


 秘すれば花。みたいなね。


 では、前半からの私の疑問で、タブーに興奮してるってそういうことじゃないの? じゃあ夫婦間のセックスが非合法になったらセックスレスの夫婦はセックスするんじゃないかと思ったんだけど。


 すると思いますよ。


 じゃあ、今は、現状で性は語ってはいけないものだ、となっているから興奮できるのに、語って明け透けにしたら興奮できないようになってしまう。それって、そこにタブーを感じているだけなのかな、と。


 確かに、古典的ですけど禁忌への侵犯は当然、興奮しますよ。だからシングルの女性がこれを買って男を漁ってもぼくは全然いいと思いますけど、セックスレスの夫婦を代表として特定のパートナーとの関係をよくしたいという動機で女性がこういう本を買うのは、それは真摯に受け止めといた方がいいのかな、と。


 でも、これ買ってもふたりで読めばいいんでしょ?


 いや、それにはぼくは反対で、この本を扱う作法みたいなものは必要になってくると思うんですけど。


 じゃあ、男性たちがおっしゃっているのは、多分こういうことだと思うんですけど、セックスひとつ取っても人によって多種多様なものなのに、それに対してこの本は一個のパターンの型にはめようとしているように見えてしまって納得できない、とそういうことですか?


 それも、ひとつありますね。オーガズムだけではないよ、と。


 ただ、実用的に、女性が関係改善を目的にして膣トレをしたり、こういう本を買うことに引いてしまう男性もいて、究極的に和姦では興奮できないという心性が確実にある、ということを理解して頂かないと、よりすれ違っていきますし、キレイごとじゃない性っていうものの存在を経て、ロールプレイしていく、遊びとしてのセックスがはじまっていくと思いますので、そういう視点が入っていけば今の時代に合ったものになるのかなと個人的には思いました。


 私は、敢てキレイごとで完結したいなと思っていて。


 確かに入り口としてはいいと思いますよ。女性はそっちの方が馴染みやすいですし。


 キレイごとじゃない性はもう商品化されてしまっている。キレイごとじゃない性を見ようと思えば映像でもなんでもいくらでも見れてしまうので、皆さんクリーンな感じの性のイメージが沸かなくなっていると思うんですね。ちつ☆トレ2で女性読者の座談会をした時に、例えば精液といえば、降射されているところ、みたいなイメージをすごい持っているみたいで。彼女たちにとって性イコール不幸だったり、汚かったり、ダーティーだったりっていうものが多いので、そこを明るくて楽しくてハッピーなものなんだって改善していかないと厳しいのかなと思ったんですね。


 その彼女たちっていうのはどういう類の女性だったんですか? 多分これを花咲さんが聞くと、またさっきみたいな方(笑)を連想されると思うんで聞いておきたかったんですけど。


 一般的だと思います。私も昔、花咲さん派だったので分かるんですが、一般的な女性です。うちのウェブマガジンのバックナンバーを見て頂くと分かると思うんですが、スワッピングをされる方やSMや複数プレイをされるような方もコネクションにいるんです。そしてそれを経て来た上でマガジンハウスの読者に会った時に思ったのが、私が持ってないコネクションだったということと、反対にこっちの方が多数派だと気付かされたんです。


 ノーマルな女性ということですか?


 多数派だということです。これがノーマルかは分からないですけど、マジョリティーである、と。国民の。


 国民のマジョリティー!(笑)


 それは、そうだと思います。確かにぼくたちは国民のマイノリティーだと思います。セックスについて造詣が深過ぎる。もっと世間一般の人は本当にセックスについて何も知らないです。例えば、ゴムを付ける時に先の空気溜まりを捻ってつけることも知らないとか、男性が女性の排卵が生理が終わって一週間くらいの時にあるんだということすら知らない、というのがマジョリティーだと思います。


 でもこのVOBOというのはそれなりに造詣が深い人が読むんじゃないんですか?


 これを読む人はもう、セックスが趣味ぐらいの人ですよ(笑)


 ただまぁ、ある種その無知な、敢て無知と言いますけど、マジョリティーに対して誤った方向に先導しているんじゃないかということですよね。


 それはちょっと怖いですよね。


 たしかに表現を綺麗にして、ハッピーなセックスっていうのを見せることは全然いいことだと思うんですけど、そこに終始しちゃうと、ある種の無知さは変わらないままになってしまうというのはあると。


 そして、ぼくの周りでもエステと同じ感覚で「えっ? 膣トレしてないの?」みたいに言う人が実際にいるんですね。カツマーみたいに。


 また実名でた(笑)


I それに関しては、例えば今、ハリウッドのセレブとかがある種の女の子の中ですっごい憧れの対象じゃないですか。セックスアンドザシティとか。アンジェリーナジョリーなんか養子も何人もいて、でも自分でも生むわよ、みたいな人もいる。だからそういう「膣トレしてないの?」みたいに女友達に性に関して話せるってことが、そういうセレブを真似る上での資格みたいなものになってるかも知れないですし、まだ女性の間でも手探り状態なんですね。


 手探り素晴らしいじゃないですか。そうやって女性間で討議を深めることは男も交えて多いにやっていくべきですよね。ただこの手探り状態の時に、いわゆるananの1989年セックスでキレイになる特集以降の展開っていうひとつの文脈があるわけじゃないですか。それ自体がすべてナンセンスだっていうふうに私はかねてから思ってたんで、これはその流れで来てる書籍で、だからこのちつ☆トレが流行る素地は元々あったわけなんですよ。だからananのセックス特集自体を早急にやめて欲しいな(笑)ということも含めての提案なんですけどね。


 その花咲さんはananのことを批判されてますけど男性のエロ本はいいんですか?


 いや、そもそもananてエロ本なんですか?


 じゃあ、おおまかなフィールドで性というものを扱った雑誌っていくらでもありますよね。その中でananのセックス特集号って女性が読む唯一の性を扱った雑誌で、一年に一回のお祭りみたいなものなんですね。それを無くしたとして、女性はどこに捌け口を求めればいいんですか?


 ananのセックス特集って一年に一回の祭りなんですか? 知らなかったです。


I 女性の中では相当盛り上がりますね。


 花咲さんはそこまでおっしゃってて、じゃあどういうものが理想なのか全然代案を示されてないですけど、じゃあ男性のエロ本はいいんですか?


 エロ本はいいんじゃないですか。


 エロ本とananはちょっと違うと思いますよ。エロ本てファンタジーですし、オナニーの為の本ですけど、ananでオナニーする方もいらっしゃるとは思いますけど、ファンタジー本ではないという点では違うと思いますよ。


 別に女性がそういう本を買えないかって言ったら、コンビニでレディコミの際どいのとか普通に買ってますよ。ただananのね、なんていうか、打ち出し方と、前半の冒頭で申し上げた様に、昔、秋田県出身の女性に取材した時に、過剰に都会にアジャストしようと田舎者コンプレックスもあって頑張っちゃう、その頑張る方向は不幸なんですよ。全然周りが見えてなくて、本来なら周りの人間関係を充実させていくべきなのに、ただ都会的になろうってことでananを一生懸命読んで、真に受けて、でも実際はあんましリア充ではない上京したOL生活、ていうのを見てきて、そこから芽生えた問題意識なんで、そういうものが根底にあるわけですよ。だから別にパステル※廃刊とかは言ってないでしょ、全然(笑)

※『恋愛白書パステル』(れんあいはくしょパステル)宙出版が発行する漫画月刊誌。コンセプトは進化する癒し系リアルラブ&Hコミック誌。コンビニで買えるレディコミ。

 パステルとは部数が全然違うじゃないですか(笑)


 そう。あと部数ですよね。これだけ社会的にも大きな影響力を持っているananセックス特集でそこは看過できないな、と。ひと言もの申したいですよね。


 でも、男性誌だって影響力強いですよね?


 ananさんが目立っちゃうのは数少ない性を扱った女性誌ってことでどうしてもヤリ玉に上がりやすい部分はあると思いますし、男性誌の場合は、色んなところで見られますし、男同士で話もしますし、リスクが分散するといったら変ですけど、責任が分散してるんだと思うんですね。


 ひとつ、ananが女性の性の方向を間違えてるって集中していて、ただし、これまで女性って性を言語化してなかったんですね。だからそれは、今模索中ってことなんですね。その点、だからもっと、女性に優しくして欲しい(笑)


 ただまぁ、ananのセックス特集っていうのはどういう感じに作られているんですか? あれは女性の編集部が女性の目線で作っているようには到底見えないんですよね。男性が作ってますよね?


 いえ、女性が中心に、実際に読者世代の20代、30代の女性編集者が、女性に危険が及ばないようにというのにかなり気を配って作ってます。毎年かなり多くのフィードバックがあるので、それを踏まえた上で次の年の特集コンテンツに活かしていっています。


 でもねえ、それだけananのセックス特集に影響力があって、女性にとって一年に一回の祭りで、それを読む多くの女性がどちらかと言うとセックスに対してあまり造詣の深くない、セックスに対してノウハウを持ってない女性が見るなら尚更、すごい影響を与えると思うんですよ。それが日本の女性全体のセックスのひとつの方向性を形づくる可能性のあるものの、延長線上にあるものだとすれば、帯の問題を言ってもしょうがないですけど(笑)マンコが感じてイッちゃう女が男にモテるという出し方は、それはマズいかな、と思いますね。それは違うから。そこが一番問題なんじゃないかな。


 では、そろそろ締めさせて頂きたいんですが、おひとりずつ今日の感想を、花咲さんからお願いします。


 ぼくとしては、最後のananセックス特集に関してもう少しお話できればよかったかな、とは思いますね。せっかく中山さんもいらっしゃることでしたし。でも、非常に勉強になりました。ありがとうございました。


 色々お話しましたが、結局は、男にモテたいということが根底にあるというのは否めないと思います。その点、実際に男が何を求めているかということも、もう少しリサーチして頂いて作って頂いた方が良かったのかなと思いますんで、今後もしそういう機会があったら、我々が協力できることは協力致しますし、共にセックスの世界を詳しくない方にも分かりやすく伝えるよう、今後ともよろしくお願いします。


 ぼくは、花咲さんとは違ってananがなくなればいいとは思いませんけど(笑)男と女がすれ違っているという状況があるとしたら、ananさんがひとつの影響を与えたというのは間違いないと思うんですね。それで、既に生まれた言論や言説をなかったことにするのではなく、よりセックス改善に繋がるように発展していけたら1番面白いんじゃないかなと思いました。ありがとうございました。


I はじめ読んだ時は荻原さんが何をいいたいのか全く伝わらなかったんですけど、それがここでお話を伺ってはじめてこういう意図で書かれてたんだな、と分かって良かったなというのと、男性と女性ってこんなにも違うんだ、と改めて感じられてすごい楽しかったです。


 そうですね…。はじめ埋めるつもりだった男女の溝が、どんどん深まっていっているのか、この場だけ離れてるのか、全く混乱している状態でして、ただ、実際にここにいる方々がマジョリティーとは全然思えないので、実体は調査してみたいと思いますが、頂いたご意見は真摯に受け止めて、前向きに邁進したいと思います。ただ、花咲さんとアリカワさんが正しい知識というようなことを何度もおっしゃいましたが、必ずしも正しい知識だけを見たいわけじゃないということを認識して欲しいというか、女性だってファンタジーは見たいですし、男性の裸も見たいですし、自分勝手な欲求も満たしたいですし、不完全な人間ですし、テクニックも知りたい、自分も気持ちよくなりたい、パートナーシップも欲しい、他の男性も見たい、ジャニーズも見たいっていう欲求があるんですね。だからananのセックス特集もすべて正しい知識だけが必要かっていうと私には疑問に思えて。


 では、ananはファンタジーでいいんですか?


 ファンタジーも含んでいる、ファンタジーも含んでもいいのではないか、ということです。なぜなら女性にとってセックスって今までタブーだったじゃないですか、そこで性的欲求を許可するという意味ではものすごく貢献をしていると思うんです。女性って性的欲求を自分では許可できない生き物だったんですね、それは今までは権利がなかったんで。


 ただ、ぼくの言っている正しい知識というのは、事実ということとはちょっと違って、その結果、男性に嫌われたら元も子もないじゃないですか。だから男性に好かれるような正しい方法論、これがファンタジーに含まれていればいいと思うんですけど。


 それで断層が拡がっちゃったら…、ってことですよね。


 では、中山さん。


 はい。この帯周りは編集や会社の意向が反映されている部分だったので反省するところがありました。受け取る人によっては間違ったメッセージが伝わってしまう可能性もあるかなと。今後の参考にさせて頂いてきたいと思います。ananの特集ではテクニックを磨くことも伝えている一方で、このちつ☆トレでは感じる体がいちばんと言っていたり矛盾も生じているんですよね。男の人を気持ちよくさせたいし、自分も気持ちよくなりたいし、でもコミュニケーション面も大事だし、で、ひとつの方向にいけないところがあるので、これからもanan特集も含め、色々考えていきたいな、と思いました。


 ありがとうございました。で、第三弾の予定はあるんですか?


 今のところは予定はないですけど。


 クリトリスとか、乳首やらないんですか。そうそうアナル拡張とか(笑)


荻: アナルは(笑)


 でも、締まるマンコより使えるアナルの方が男としては価値が高いですよ。


 そうそう。マンコって誰でも付いてて誰でも使えるでしょう。でもお尻もできる女性って希少価値もあるし、しかも締まりでいうと、全然アナルの方が締まるんですよ。しかも、マンコもアナルも両方できる女性いますよね。で、そういう女性がやってどっちが感じるかって聞くとほとんどの人がお尻って言うんですよ。


 選択肢として、私達の中に今、さんごちゃんの目を見て私が勝手に思うんですけど、アナルはない、と(笑)


 一般の女性にとっては未知の領域かも知れませんけど、そこにはすっごい可能性があるんですよ(笑)


 でもそれは自然な形ではないというか、女性を傷付ける可能性もあるのでは…。


 コンドームだって自然じゃないですよ。でもゲイの人はみんなアナルでするんですよ。世界的にみたら、アナル人口はかなり多いですよ。だってゲイの人は全員ですからね。


 蓄積ありますよ(笑)


 そんな、今、私達にアナル啓蒙されても(笑)私達二人が知らなかったら書けないじゃないですか。


 では、ぜひ経験して頂いて。


 それは今、口説いてるんですか(笑)


 拡張はお手伝いしますよ。しかも完全無痛で(笑)


 では、第三弾はアナルということで(笑)







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