<1><3><4><参加者紹介>
辻 そもそもこの本は男性の欲望というものも意識されて書かれてるんですか?
荻 男性と女性の誤解にどういうふうにブリッジを掛けていくかにフォーカスしているので、男性を喜ばそうというよりは、お互い誤解してますよ、というところです。
辻 女性にとってもイクってことが強迫観念としてあると思うんですけど、男性側にもイカせなきゃっていう強迫観念があると思うんですね。それはどうなんでしょう?
五 それはAVとか見て学んでるから、最終的には男性がイッたり、女性がイッたりしないとセックスが終わらないと思い込んでるっていうのがあるんじゃないですか。だからこういうのを見て、そういうことに気付かせてあげるっていうのはすごく大事なことだと思う。
ア ちょっと待って下さい。今のお話だと、今の10代、20代はAVを見て学んでるから、女性がイカないと終わらない、イカせないといけないと勘違いを犯してるってことですよね。
辻 そう、だからちゃんとした性教育をしていかないといけない…
花 って、これ逆じゃないですか(笑)だって「オーガズム革命」ですよ(笑)イケ! イケ! って言ってるじゃん。
ア じゃあ、このアンケートもフェラチオのうまい女性よりイクことが素晴らしいって言うことで、イクってことにさらに強迫観念を植え付けてるじゃないですか。
荻 そこは、分からなかった。それは、書き手も完璧じゃないので、カメラマンさんも完璧ではないように、編集も完璧じゃない、マガジンハウスさんも完璧ではないので、これを書いてしまうと強迫観念になるんだ、と思ってしまうと何も創作できないじゃないですか。まずひとつこのアンケートを出したのは、単純にフェラチオに対する強迫観念を取るためだったんです。フェラチオ強迫観念って女性にはもの凄くあるんですね。
花 では、フェラチオに対する強迫観念は取り除いて、イク強迫観念はどんどん植え付けようと(笑)
I そんなことはないと思いますけど(笑)確かにイク強迫観念というのがあって、こういうふうにオーガズム革命って本屋さんに並んでたら、バーッと取っちゃう子も中にはいると思いますけど…
花 中には、って結構多いですよ。ただ、楽しみ方としては色々あるわけじゃないですか、イカなくたってセックスの多様性としては。どうも単一の価値観というか、オーガズム至上主義というか。
ア ぼくはお話聞いてると花咲さんと立場は非常に近いと思うんですけど、ただ、女性が勝手にこういうイクためのノウハウ本を買って、自分でイクために努力することは逃げ道としては非常にいいきっかけを与えてると思うんですよ。ぼくも仕事柄、オーガズムに関して男性から彼女がイカないんだけどという悩みはよくされますし、女性からも私イカないんですけどどっか身体が変なんじゃないですか、と聞かれます。で、その時ぼくは決まって、イクことを目的にしないでくれとアドバイスしているんですね。イカせようと男性が一生懸命になることは女性の負担になるし、女性もイカないことで自分は不完全な人間だと思い込むのは間違っているからです。でも、この本自体の最終目的地はイクことになってしまっている。
荻 でも、よく読んでもらうと分かるんですが、たとえイカなくても気持ちよければそれがあなたにとってのオーガズムです。って何回も入れてるんですね。定義ってものがないので。そこを読んでもらって…、今、話してて気付いたんですけど、強迫観念を感じてるのは実は男性なんじゃないですか? 女性がイクことの強迫観念を感じてることに強迫観念を感じてません?
ア いや、僕自身はもちろん感じてませんけど(笑)
荻 なんか女性のイクことの強迫観念にすごい脅迫されてるように感じるのは何故? なんでそんなに怒ってるの?
ア 全然怒ってませんよ(笑)
荻 女性にイクことへの強迫観念がある、ということに異議を唱えてるわけですよね?
花 いや、実際既に強迫観念はあるわけですよね。だからこの本は売れるわけで。ただ、膣を鍛えてトレーニングするってことに着目しなくてもいいじゃないか、ってことですよね。
荻 じゃあ、どこが良かったの?(笑)なんか個人的な質問になっちゃうんだけど、どこを着地点にすればぼくとしては良かったの?
花 まぁ、それはこの本が出ない(笑)着地点と言われればそこですよ。ただあと、ぼくも今日の為に実際読んだ女性に聞いて、ぜひこれは聞いといてくれと言われたんですけど、科学的なことはあまり書いてませんよね? だからこれはトンデモ本なんじゃないか、疑似科学なんじゃないか、と。春山茂雄の脳内革命的な本じゃないかと。
I ヨガの世界でも、ちらほら批判的な意見もありますね。
荻 それはちょっと時間もらっていいですか。…女性って自分に膣があるということですごく深いところで罪悪感があると思うんですね。
ア えっ!? そうなんですか?
荻 それが私が13年間セックスショップをやってきて思ったことなんですね。それは、自分というものと膣を分離した状態でセックスしてる女性っていうのがものすごく多い。これは頭の意識がですよ。膣というものが置き去りで、ハートと身体と膣というものを分離した状態でセックスをしても、オーガズムはおろかセックスも成り立たないんじゃないかなと思ったんです。これは例えば、手と同じ様に膣が自分の身体の一部位であると受容しないといけないんですけど、膣はものすごく神秘化され過ぎてもいるし、逆に卑しいものだとも思われて、どちらの意味でも特別視され過ぎている部位なんですね。で、これを統合するために色々電話でセッションしてみたり、グループワークをしてみたりしたんですけど、受け入れるのが遅かった。それよりも膣を動かしている方が意識が統合するのが早かったんですね。
ア それは、膣というものを認識すると統合されるんですか?
荻 膣というものを受け入れている状態にいつのまにかなってる。自分で動かせるというのが分かって自分と膣というものの関係性がひとつになる、というか。
ア それは男の場合は逆なんですよ。チンポを意識するとセックスが成り立たなくなる。例えばAVの現場で男優さんが、チンポ立たせなきゃって思ってチンポに意識を向けると、とたんに使い物にならなくなる。女性を目の前に雄としてチンポと一体化していると、興奮材料が目から入ってくるか匂いかは分かりませんが勝手に立つんです。もしも、荻原さんのおっしゃったことが正しいとすると男性は全く逆ということになる。
荻 それは私は男性として生きたことがないから分からないけど、でも、思うのは男性ってなにかにつけて男性器を触るでしょ? こう、ちょこちょこ色々、おしっこする時も。
ア 皮剥いたり、戻したりとか(笑)
荻 そういう男性器の話とかも男性同士するでしょ? 女性は膣の中までなんてほとんどの人が自分では触らないし、女性同士ではそんな会話って絶対しないから。だから子宮筋腫が多くなるんだよね。病院に行きたくないから。私も行きたくないけど(笑)
辻 ちょっといいですか? 今のお話聞いてて思ったんですが、強迫観念うんぬんはリテラシーの問題もあると思うんですけど、ひとまずこれって女性向けの本ですよね。ただ、セックスって対男性との、他者との行為ですよね。さきほど、男性を喜ばそうとする女性の気持ちって嬉しくないですか? というお話がありましたけど、実際はそんなに単純じゃないと思うんです。セックスってどこまでいってもどこか強姦的と言うか…、性的に興奮する上でも実際は完全な和姦ってダメだと思うんですよ。
荻 お互い「シタイ」同士だと男性はあんまり興奮しないの?
ア それはでも、女性からもそういったことってよく聞くじゃないですか。実際、女性から聞くオナニーの妄想は輪姦、強姦、痴漢、いわゆる三カンという本当にされたら多分、嫌なことであったりするんですよ。
辻 それで、膣トレをしてる女性とするセックスってどうなのかな、と。まぁ、作法というか、電車の中で化粧する女性っていうのと大差ない問題かもしれないですけど。
ア でも、確かに女性の部屋に行ってこの本があったらテンション下がるかもな。
荻 私も男性の家に行って、ペニストレーニングとかの本が置いてあって、中国三千年のなんとかで今鍛えてんだとか言われたら、半分盛り下がって、半分試してみたい気にもなって、でもセクシーさは70パーセントくらい落ちるかも。だからそれは分かった。でも和姦がダメというのが分からない。
辻 完全にダメとまでは言いませんけど、例えば今男性が弱体化してるなんて言われてますけど、その風潮を助長するものになる可能性もありますよね。セックスの対象としての男性が想定されていないのではないかと。
荻 でも、他者との関係性って自己との対話が出来てない人にできますか?
辻 そこは考え方それぞれあるとは思うんですけど、ぼくもVOBOみたいなウェブマガ作っててなんなんですが、個人としては、ぼんやりさせといた方がいいことってぼんやりのままがいいとも思うんです。性って語れば語る程ダメになっていく気がするんです。
編 では、ここで一度、膣の締まりのお話に戻して、女性側、男性側でお互い理想的な膣っていうのはどういうものだと思いますか?
荻 自分で自分の膣の感覚が掴めるってことですよね。膣の形とか色とかではなくて、今自分の膣がどういう状態になっているかが自分で分かるってことです。繊細なフィーリングを感じられる膣。
ア 男は多分、締まりがいいかどうかなんてほとんど気にしていないんですけど、話のネタとして、あの女締まり良かったなんて嘘で言ってるんですね。だってそれって自分のチンポが小さいって言ってるようなもんですから、真剣に言ってる人なんてほとんどいないですね。でも、女性はそのことを異常に気にしててぼくの付き合った18歳の若い女性でも、通販で締まりをよくする薬とか買ってて、バカじゃないの、って言った記憶とかありますよ。で、それよりも、この本の中で書かれてることで、アソコの匂いが原因で別れたなんて話一度も聞いたことがありません、って書かれてますけど、正直に言いますよ、ぼくはいっぱいあります。
女性陣 ふーん。
ア 実際、何パーセントがそうである、とかちゃんとしたデータはありませんけど、ぼくの感覚では、ほとんどの男性がマンコの匂いはかなり気にしてます。
荻 こちら側の体験とあちら側の体験が別の国みたい…
ア それはもしかしたら皆さんのマンコが無臭だからかも。匂いのあるマンコを積極的に舐めたいという男性もいると思いますが、かなりフェチの部類ですよね。こんなことは絶対女性には言いませんよ(笑)お前マンコ臭いなんて言うと、こいつ死んじゃうんじゃないかって思うんで絶対言いませんけど、ほとんどの男性は匂いが残るのが嫌で何度も手を洗ったり、そういう男性ってどうしてると思います? 手マンした後に抱き締めるフリして、首から回した手を鼻に持ってきてクンクンってしてるんですよ(笑)
I たしかに私も女性との経験があるんですけど、匂いがあったり、見た目の清潔感でその人への愛情がガッツリ減っちゃったりしましたね。
ア 事実として、それで差別するのはよくないというのは男は分かってますけど、やっぱりありますよ。大陰唇ならともかく、小陰唇のギリギリのところまで固いチリチリの毛がビッチリ生えてたら舐めたくないと思う人は多いと思うし、ビラビラもね、形が歪だったりすると気持ち悪いな、と思うことはあります。
編 では、かなり幅広く議論がでておりますが、ここで、誌面の関係上、前半戦終了とさせて頂きます。この前半で出た発言に対しての疑問、反論から後半ははじめさせて頂きたいと思います。
『ちつ☆トレ』1260円
(マガジンハウス刊)
ちつトレとは、3週間で“感じるカラダ”になるトレーニング。
セックスで感じない、痛い、濡れにくい、などの自分自身について
の悩み、そして、パートナーが求めてこない、彼とのセックスが苦
手など相手との悩みを抱えている女性たちへ贈るトレーニング本です。
基本のエクササイズから、オーガズムを得るための特別レッスン、
究極の体位“ヌレポジ”まで完全ガイド。セックスに関するココロ
と体の悩みの答えが詰まっています。
はじめた人からは、「感じやすくなった!」「セックスに対して前
向きになれた!」「彼ともっと一体感を感じられるようになっ
た!」「セックスレスが解消された!」と、ハッピー報告が続出。
『ちつ☆トレ2 オーガズム革命』1260円
(マガジンハウス刊)
3週間で“イク”喜びを体験できる革命的メイクラブBOOK。
快感やオーガズムの仕組みをより詳しく解説すると共に、
“セルフプレジャー”を通してオーガズムを得る方法を教えます。
さらに、思い込みに捕われたセックスを変える、
目からウロコのアイディアも満載!