ちつトレ討論会2011 前編
構成/福田信哉
2010年7月に上梓された「ちつ☆トレ」
著者荻原かおる氏が掲げた性の美旗の元には多数の女性賛同者がハッピー報告を携え寄り集まった。
そして2011年7月。続編となる「オーガズム革命」が上梓。
もはや常識の「膣トレ」は、
男性と女性の決して埋まることのないとされて来た溝に橋渡すことが出来るのか。
性の再考を標榜するVOBO主催、男3女3討論会。
全編下ネタの為、開始時刻は16時ーー
編 では、はじめに今回の討論会の趣旨をご説明させて頂きますと、この、今日もお越し頂いているマガジンハウスさんから出た「ちつ☆トレ」という書籍によって、世間に広く浸透したと思われる「膣トレ」というキーワード。これは単に言葉だけではなく性を謳歌する女性、立ち上がる女性を端的に現わしている重要な思想である、と我々は読み取りまして、そこから男性と女性の性に関する相互理解を深める為に、今回の列席者の皆様を選ばせて頂き、大いに男女間の溝を埋めたいと考えております。
では、皆様の膣トレに対する立ち位置と自己紹介からはじめていきたいんですが、まずは、その内容をざっと著者の荻原さんからご説明頂けますか。
荻原かおる(以下、荻) 最初は、マガジンハウスさんに膣トレというものがあると企画を出させて頂いて、その企画が通り、ananの方で12ページの特集を組んでもらったら反響があったので、では書籍にしようということになりまして。
中山サンゴ(以下、中) 最初、かおるさんから「手を使わずに膣の収縮だけでイケる」というお話を伺いまして、それはなんだ!? ということで、そこから感じる身体というテーマに落とし込んで頂いたという。
辻陽介(以下、辻) 企画段階から男女の問題であったりセックスレスの問題みたいなものは意識されてたんですか?
中 その時は意識してなかったですね。最初は単純に、感じる身体を作るトレーニングということではじめたんですけど、実践した人の声や色々な人の声を聞くにつれてセックスレスに効果があるなどの報告が出てきたので、そこからさらに内容を膨らませたという感じです。
荻 具体的には、一号目は女性の肉体にフォーカスをして、肉体的な悩みであるとか、女性特有の恋愛パターンなんかを取り上げてみて、その一号目の反響としてオーガズム自体がなにか分からないという反応が多かったので、オーガズムを焦点にちつトレを作ったらどうかというので、どっちかというと観念であったり、メンタルのケアであったり、マインドチェンジをしてみるというが第二号で語っていることなんですけど。思い込みの取払いですよね。
編 なるほど、ありがとうございます。では、これを受けて、五十嵐さんから順に自己紹介と簡単にご自身の考えをお願いします。
Iさん(以下、I) ライターをしています。私はヨガのインストラクターをしているんですが、最初のananの特集では骨盤を締め過ぎるのはよくないんじゃないかと思って読ませてもらったんですが、書籍の方ではそこらへん健康面にも言及してあったので、締め過ぎない膣トレというのであればいいのではないかと思っております。
辻 VOBOを代表しております、辻と申します。これからのお話次第ですが、ぼくとしては、もし対立構造が生まれるのであればなるべく中立という立場を取らせて頂きたいと思っております。個人的に膣トレに思ったことは、まさに時代を象徴しているな、ということでして、ジェンダーの擦れ違いやセックスレスの問題に対してほとんど男性側からアクションが起せていない中、こういった形で女性の側からそういった動きが出てきたということは、ともすれば痛烈な男性への批判とも受け取れるのではないかということがひとつ。あと気になる点としては膣を強化するという発想が、古くは中国の纏足なんかに代表される、男性主体による膣強化とどう異なるのかということ。男女の主客体の問題も含め、そういったお話も今日は伺いたいなと思っております。よろしくお願いします。
アリカワ(以下、ア) 写真家をしております、アリカワです。ぼくの写真のテーマで、今、主に撮っているのがセックスを趣味とするカップルの「セックスの現場写真」なんですね。で、約20年くらい取材を続けておりまして、700組程のカップルの写真を撮っています。自分個人でも2800人から3000人ほどの性交経験がありまして、直接マンコを見てチンポを挿れてますので、女性がオーガズムを得たらどうなるかとか、オーガズムの経験のない女性がどういった方なのかというのは実体験として分かるんですね。ですので、そういった男性の立場から発言させて頂きたいと思います。
花咲政之輔(以下、花) 花咲と申します。バンドやってます。あのー、はじめは、こちらのVOBOさんのインタビューに出させて頂いて、その中で膣トレ最高みたいなことを言ったんですが、こちらとしては、揶揄するというか、批判的な意味合いで言ったつもりなんですが…
荻 ちょっと嫌みで?
花 そう、嫌み的に言ったんですが、その後に友人知人の印象がなにやら膣トレを伝道してるみたいに思われたらしくてそれは否定しておきたいと思ったのと、私がちょっと社会批評的なバンドをやっているもんで、以前、秋田から上京した女性に取材した機会があって、その娘はanan、nonnoを熟読して、特にananさんの89年「セックスできれいになる」特集以降、それで都会的な主体になれると思っているというケースがありまして、それはどうなのかな、と。それで今回の会に出させてもらうにあたって、身の回りの女性にも聞いてきたんですが、結構ね、「膣活」みたいな感じで、膣トレを頑張ることでいい男をゲットしようみたいな感じに受け取ってる方が多かったんですね。それでカツマーじゃないですけど、膣を鍛えることで自らの資本価値を高めていく、みたいな風に受け取られるのは社会への伝播の仕方としてどうなのかな、と。
荻 膣の資産運用(笑)
花 そう、膣資本。まぁ安上がりじゃないですか、みんな資本家だ、みたいに言うのは、カツマーみたいにやろうと思うとレッツノートとか色々買わなきゃいけないけど。
編 ちなみにそういう伝わり方は本意でないですか?
荻 それはどちらでもいいと思います。私達の提案してることを違うふうに受け止められたとしても読者はこちらではコントロールできないので。例えば、そういうふうに受け取る人は何を読んでも何をやっても自らの女性“性“というものには商品価値があると認識するんだと思うんですよ。
花 ただまぁ、そういう考え方がスタンダードだと思いますよ。でもぼくの知り合いとかで、男が喜ぶからって膣トレ頑張って、それを合コンとかで直接言わないまでも、分かるように言ったりする人が実際いるみたいなんで、あんまりいい方には行ってないんじゃないかと思います。
I でも、男性を気持ちよくさせてあげようとする女性の気持ちって嬉しくないですか?
花 いや、そんなにピュアなものは感じないですけどねぇ(笑)
荻 ただ、あれじゃない? 喜ばせようというより搾取されるみたいな感覚なんだと思うんですよ。花咲さんが思ってるのは、喜ばせようとするように見せた裏に、何かを搾取しようとするそのためのツールでしょ? ってことなんだと思う。
花 搾取っていうか、婚活と一緒でよりよい資本を持ってる人がいい男をゲットできて、たいした事ない資本だとこの程度、この場合の膣の締まりが、というそういう流れですよね。
I ただ、女性器って男性器と違って体の中にあるから触ってもよく分からないですよね。だからこういう本があることはすごく嬉しいですよ。で、膣トレしていい男性をゲットっていうのはその後の話で、でも膣トレに成功したらそういう欲もやっぱり出てきちゃうのはしょうがないですよ。
荻 でも、いい男を捕まえたいっていうので始めちゃうと、最高のオーガズムは得られないですよ。
女性陣 うん、うん。
ア あの、この第二弾の「ちつ☆トレ2 オーガズム革命」で一番気になったことがあって、それをはじめに言わせてもらいたいんですけど、この男性に採られたというアンケートのクエスチョン1「イカないけど、フェラチオがすごくうまい女性と、フェラチオはダメだけど何回もイク女性どちらがいいですか」というものですが、これが最終的にイク女性の方が価値があると結論付けたい為の、かなり恣意的な質問設定になっていると感じたので、この一点については強く批判したいと思ってるんですよ。
荻 面白いですね。こちらの意図したのと全然違う方に受け止めてるということですね。なんでそう思ったのー? 気になる、なんで?
ア こちらには荻原さんのコメントで「本書のテーマ、オーガズムがいかに男性を喜ばせるか一目瞭然」と書いてありますよね、で、テーマと言った上でいかにこれが恣意的かというと、これでアンケートもイク女性の方がいいとなってますが、この結果が出るのが当たり前な質問なんですよ。
荻 そうですよね。
ア でも、男性にとってフェラチオがうまいなんてセックスに求めるもののおそらく10位以下、どうでもいいことなんですよ。そういうどういういいものと比べてイク女性が最高であると結論付けられるのは違うな、と思うわけです。
中 比べるものが低過ぎる?
ア そう。例えばですね、これは男性の身勝手な願望ですけど、この比べる対象を、いつでもナマでヤラせてくれて好きな時に中出しさせてくれる女性、とか、いつでもアナルを潤滑油なしで使える女性、とか、男性の変態性欲を理解した上でスワッピングやスカトロなどを一緒に楽しんでくれる女性、とか、マンコが全く無臭の女性、なんかに変えると結果はどうなると思います?
荻 それは、今はそんなに女性に性的な嗜好が幅広い、ということは認知されてないと思います。
ア 多分、荻原さんの認識ではそうだと思いますが、男性としては、今ぼくが述べたことの方が、重要なんですよ。だから、本当に男性を幸せにするというのであれば、ナマでハメさせて中で出されてもいいようにピルを飲みましょう、という本になると思うんです。
荻 そうなるとだれかが傷つくことになりますよ。そこまでいくと二元論になっちゃいますよ。ちょっと、最初の質問から答えていいですか。確かにこのアンケートは恣意的だと思います。でもそれは女性のメジャーなイメージで、セックスがうまい女性イコール、フェラチオのうまい女性という認識があるんですよ。まずそれを取払いたかったので、極端な例を出してフェラチオが全くできなくてもオーガズムでイク方がいいと、女性に気付かせたかったんです。
『ちつ☆トレ』1260円
(マガジンハウス刊)
ちつトレとは、3週間で“感じるカラダ”になるトレーニング。
セックスで感じない、痛い、濡れにくい、などの自分自身について
の悩み、そして、パートナーが求めてこない、彼とのセックスが苦
手など相手との悩みを抱えている女性たちへ贈るトレーニング本です。
基本のエクササイズから、オーガズムを得るための特別レッスン、
究極の体位“ヌレポジ”まで完全ガイド。セックスに関するココロ
と体の悩みの答えが詰まっています。
はじめた人からは、「感じやすくなった!」「セックスに対して前
向きになれた!」「彼ともっと一体感を感じられるようになっ
た!」「セックスレスが解消された!」と、ハッピー報告が続出。
『ちつ☆トレ2 オーガズム革命』1260円
(マガジンハウス刊)
3週間で“イク”喜びを体験できる革命的メイクラブBOOK。
快感やオーガズムの仕組みをより詳しく解説すると共に、
“セルフプレジャー”を通してオーガズムを得る方法を教えます。
さらに、思い込みに捕われたセックスを変える、
目からウロコのアイディアも満載!