注 意
この先には第一幕エピローグの内容が含まれます。



















































「少し、話をするか」

 ジャイアントパンダの声で、階段を下りる足を止めた。

 バベルの中にも似ている、乳白色に発光する素材でできた、円筒状の巨大な穴。その内側を這う螺旋階段からは、下は勿論、

上も果てが見えない。

 どれほど進んだのか、あとどれだけ残っているのか、疲労を自覚しながら振り返った先で、ミーミルは壁に背を預けていた。

 ヨレヨレの白衣や皺だらけのズボンなど、見てくれがくたびれているのはいつもの事だが、明らかに様子がおかしい。最近

顕著になってきてはいたが、もうはっきり判るほど衰弱が進んでいる。

「あん…?問題ない、最後までは保たせるさ…。少し休憩させできれば、な…」

 煙草の箱を取り出そうとしたミーミルは、懐から抜いた右手をじっと見つめる。小刻みな震えが止まらない。火をつけるど

ころではないので一服は諦め、煙草の箱を懐に戻す。

「おそらく、もうじきだ。もう少し下れば底に着く。見えているほど遠くはない」

 ジジッ…と、周囲の空間にノイズが走った。階段も穴の内壁もグニャリと歪んで、矯正されるように戻る。

「確実に居る。面白半分に歴史を滅茶苦茶にした誰かが、この底には必ず…。ここまで直接の妨害はなかったが、かけてきた

ちょっかいの数々を思えば…、まぁ、陰険な奴だろう。…いよいよ決戦、という訳だ」

 ミーミルはそう言って、「だから」と、呟いた。

「お前に、「お前が何なのか」を話しておきたい。話す余裕がある内に…」

 おかしな事に、ミーミルは気付いていないようだった。自分が壁に背中を預けたまま、ズリズリと滑って傾いている事に。

「…む」

 いよいよ倒れそうになって咄嗟に支えた瞬間に、ズッシリと重みを感じた。力が抜けてしまっており、支えかねて危うく転

げ落ちそうになる。

「問題ない。少し立ちくらみしただけだ」

 声は平静だったが、酷い弱り様は隠し通せる物ではない。誤魔化しの質も悪かった。

「…済まないな…」

 壁に寄りかかって座る格好に降ろすと、ミーミルは軽く目を閉じる。

「どこから話すべきか…。そうだな…、歪みを感知した私が、解消手段を模索し始めたところまで、遡るべきだろう」

 声はいつも通りでしっかりしていた。それが、肉体も声も思考も、バラバラに乖離してしまっているようにも感じられる。

「歪みの仕組みは何度も説明してきた通り、本来の歴史から変質した状況に現実を固着させた物になっていた。…そう、ゴム

膜のピン留め、だな…。いびつになった歴史が、その復元力で引っ張り合い、裂けて、分解して、自壊する…。それが犯人の

狙いだという事だけは、動機も素性も手段も知れないままでも判っていた」

 ふと気付く。首や腹や胸元を掻くミーミルの仕草を、最近ずっと見ていなかった事に。

「既に歪んだ歴史と現実、それに対処するために必要なのは管理者の力と権限…。満足の行く権限と力では無いが、この問題

は私自身を擬似ワールドセーバー化する事である程度解決できると判断した。問題は、その不完全さ故に世界への代償を支払

うだけで精一杯になり、実働する余裕が殆ど無くなる事だった。…私に許された僅かな余裕で事に対処しようとしても、絶対

的に時間が足りない。どうしても共闘者が、実行役としての「もうひとりの修正者」が必要だった…」

 開かれたミーミルの目は、遠くを眺めるように正面を向いている。

「とはいえ、代償を引き受ける私に代わって権限を行使する役は、まっとうな存在では担えない。それに、蓋を開けてみれば

フワやジーク、それぞれの事情で正規の歴史を認識していた者も居たが、既存のワールドセーバー達ですら歴史認識が狂わさ

れている異常事態だ。私の訴えを受け入れて協力してくれる者にも心当たりは無かった」

 ミーミルが上を仰ぐ。感慨深そうに、「たまたまだった」と呟きながら。

「運が良かったとしか思えない。私は助力が期待できるワールドセーバー、あるいは残骸となった概念である彼らの類似存在

などとコンタクトを取る手段を模索したが…、その最中に偶然、ある「回線」の存在に気付いた。ワールドセーバーとも規格

が異なる、しかし同等の高次存在とコンタクトできる回線に」

 ゆっくりと、ミーミルの目が下に向いた。数秒の沈黙は言葉を探すためか、それとも躊躇いによる物か。

「その高次存在は協力的だった。星と生命の存続に肯定的だった。そう、どれほどの確率の幸運だったのか…、何の見返りも

なく修正に助力してくれる事になった。そこまで漕ぎ付ければ解決に向かって動くだけ。私は共闘者の降臨に備えて下準備を

整えた。何せ地上で実際に活動するのだから、高次存在そのままの存在スケールや密度の希薄さで降臨させるわけにはいかな

い。その一部を借り受けて、現実に与える影響が過剰にならない「ひとの姿」にまでダウンサイジングし、活動に適した肉体

を用意する必要があった」

 また、しばしの沈黙があった。ミーミルはゆっくりと顔を上げ、こちらを見る。

「私がコンタクトできた存在は「世界中で最も多くの者から想いを馳せられながら、決まった名も姿も持たない存在」だった」

 人々は時に思う。「こんな誰かが居たなら…」と。

 死ななければ歴史が変わっていた。そう誰かが評した、歴史上の人物。

 あのひとが居てくれたら幸せだった。そう誰かが思った、離別した知人。

 もしもこんなひとが居てくれたら。そう誰かに妄想された、空想上の友人。

 こんな風になりたい。あんな生き方をしたい。そう誰かが夢見た理想の自分。

 失われて戻らない、あるいは元々実在しない、しかし確かにその存在を望まれ、願われた「現実には存在しなかった誰か」。

現実とならなかった「希望や理想や夢想の集合体」という概念的高次存在。

 それは、まさにこの異常事態に対処するには打って付けの人材だった。世界に突き刺さった無数の「可能性の乱立」とは根

源的な部分が同質でありながら、その本質的な在り方は「望まれる存在」…。人々の願いと祈りと希望でできていた。

 霧のように不定形で、密度が希薄で、ワールドセーバーのような権能を持たないソレは、しかし新旧通した人類史が続いて

きたのと同じだけの時間の、無数の願いと祈りと望みの蓄積でできているが故に、その存在力は極めて強固で、どんな物にも

なれる柔軟性を有していた。

 大元から切り離され、ダウンサイジングされたソレに、ミーミルは容姿などの要望を反映させた器…肉体を用意して…。

「…それが、お前だった」

 まっすぐに見つめてくるミーミルの瞳に、僅かな後ろめたさが見えた気がした。

「ダウンサイジングで影響があったのか、それとも大元から切り離される際に不具合があったのか、結局調べても原因は突き

止められなかったが…、お前は自分が何なのかも把握していない上に、私と契約した時の記憶を持っていなかった。説明すべ

きだとは思ったが、その内に思い出すかもしれないし、私から説明しても混乱させるかもしれないと考えて、後回しにした」

 ジャイアントパンダはしかし、「…いや、今の言い方は卑怯だな」と、すぐにかぶりを振る。

「私は、言えなくなってしまった。単に面倒くさかっただけのはずが、いつしか言い出せなくなっていた。生きている人々…

彼らと触れ合い、世界を見て新鮮な反応を見せ、ひとと変わらない振る舞いをするお前を見ている内に、言い出せなくなって

しまった。そして、訊かれないのを良い事に、今まで逃げていたわけだが…」

 ミーミルの眉が上がった。

「…もう察していたのか?自分がひとではないと…、いつから?」

 最初におかしいと思ったのは、北原でレディスノウと接触し、親近感にも似た物を覚えた時。

 それから、マーシャル諸島でシバの女王に面白い客だと珍しがられ、レディスノウと似た印象を覚えた時。

 そしてジークと話した時。世界の違和感について述べる彼が感じている物と、同様の違和感を自分も抱き続けていた事…。

彼と同じ物を感じ続けていた自分は、おそらく彼のように「本来はこの歴史にもう存在していないか、最初から居なかったの

ではないか」と思った。

「何故、問い質そうと思わなかった?」

 ジャイアントパンダの胡乱げな問いに、答える。普通に、何でもなく、思っていた通りに。

 必要な事は全て言うミーミルがその事に触れないのは、言わないか、言えない理由があるから。だったら話されるまで訊か

なくてもいい。必要なら教えてくれるはずだから。

 ジャイアントパンダは、視線を上に向け、それから下に向け、やる事を探すように懐に手を入れ…。

「今のは…」

 取り出したタバコの箱を取り落としたのは、手の震えのせいなのか、それとも動揺が原因か…。

「…これまでで一番意表を突かれた。過不足ない程度の信用はあるだろうと思ってはいたが、そこまで信頼されているとは…

まぁ、考えて…いなかったな…」

 太腿に当たって階段の上に落ちた箱を、そっと拾い上げる。

 蓋を開け、ミーミルがいつもそうするように指でトンと底を叩き、タバコを一本飛び出させて向けると、ジャイアントパン

ダは少し逡巡してから、顔を出してタバコを咥えた。

 ライターも白衣の内ポケット。もう付き合いも随分長いから判っている。襟を捲ってライターを取り、震える手に代わって

灯せば、ミーミルは観念したようにタバコを寄せて吸い点ける。

「…「一方通行」なはずは…、なかったか…」

 煙と一緒にミーミルが吐き捨てた言葉は、苦笑で揺れていた。

「ああ、私はお前を信頼している。今まではあえて言う必要もないと思っ…いや、これも誤魔化しだな…。言うのが照れ臭かっ

たというのは大きい。それに、プレッシャーをかける事にも繋がるだろうとも。…お前は、私が望み得る最高の共闘者だ。誰

かが願い誰かが祈り誰かが望んだお前の中には、きっと私の希望もあったのだろう」

 初めてかもしれないと感じた。いつも仏頂面で面倒くさそうにあしらってばかりだったミーミルが、薄々感じていた本音を、

判り易く口に出して伝えてくれたのは。

 しばらく、言葉はなかった。

 昇ってゆく、少しコーヒーの残り香にも似た匂いがする煙を、ふたりで眺め続けた。

 実感は薄かったのに、旅の終着点は本当にすぐそこなのかもしれないと、今更感じた。

「結論から言う」

 咥えタバコから昇る紫煙目を細めながら、ミーミルは沈黙を破った。

「全ての修正が完了し、歪みが解消されたなら、お前は地上を去り大元へ戻る。お前が世界と交わした契約は「修正完了まで

の期限付き滞在」…そういう物だった」

 またしばしの沈黙。やがて溜息。

「これも察していたのか…。あん?」

 珍しく、ミーミルは目を大きく、丸くする。心底驚いた様子で。

「なるほど…。修正が終わった後の事を、私は一度も話していなかったのか…。意図していなかったが、確かに、そこから先

の事を話す意味がなかったから…」

 また、長い沈黙が下りた。

 ミーミルは燃えて無くなってゆく煙草を見つめていた。減ってゆく残りの時間を見据えるように。

「まぁ、何だ…。こっちの事も勘付いたか…」

 かなり長いこと黙っていたジャイアントパンダは、諦め混じりのため息をつく。

「そうだ。私も修正後には居ない。修正が完了したら丁度「終わる」事になっている。使い切りの修正装置であると同時に、

歴史改竄許可証でもある私が消える事で、この修正は完了する。そういう内容で世界と契約した。目的は修正ではあるが、修

正手段そのものは実質的に歴史の改変だ。安くない代償と易くない制約はどうしても必要だった。それだけの権限がいつまで

も誰かの手にある事は許されない。誰が決めるでも断じるでもなく、それが摂理だ」

 ミーミルの声には後悔も悲壮感もない。最初にそう決めたから。そうする事でしか対処できなかったから。

「私は何も残らないだろう。だが、大本に還るお前は、もしかしたら旅の記憶を持ったままでいられるのかもしれない。…も

しも、そうなったなら…」

 ふっと、ミーミルの横顔に微笑が浮いた。

「お前が私を覚えている。それだけで、この行為も報われる。過分な報酬だ…」

 最後になるかもしれないから。そんな意図があるからなのか、ミーミルはいつになく表情の変化を見せる。

「感謝している。荒野に呼びかけた私の声を、お前だけは聞きつけてくれたな…」



 これは、荒野に呼ばわる獣と、応え人の物語。



 ミーミルが前方に伸ばして上に向けた右の掌に、チラチラと光の粒子が舞い踊る。

 掌から湧き出るように立ち上る粒子は、渦を巻いて少しずつ形を整え、程なくミニチュアの螺旋塔…パイルが生成された。

「あん?…ああ、そうだったか。実際に造る所は見せた事は無かったな。造った物を現場のお前に転送していたから…。最後

の一本になる、見せられて良かったのかもしれないな」

 ミーミルは出来上がったばかりのパイルをしみじみと見つめた。必要不可欠、馴染みの修正具…。ここに来て新鮮さを覚え、

感慨深くなる。

「これをポイントに打ち込めば、これまでに埋めてきたパイル群が全てパスで繋がり、一斉に修正処理が実行される。早速仕

上げにかかりたい所だが…」

 ジャイアントパンダは周囲を見回した。

「おかしい…」

 乾き切った水田のように、亀裂が全面を覆った荒地。

 見渡す限り、水平線まで、佇む自分達以外は何も無い、罅割れた大地。

「何も居ない訳が無い…。実際にこうして歪みが維持されている以上、「犯人」は健在だ。しかし何処に…」

 ミーミルがパイルを手渡そうとした瞬間…。

〔つれないな。ここに居るのに〕

 それは、違和感を覚えない声だった。

 聞き慣れて、耳に馴染んだ声だった。

 だから、ミーミルの反応が一瞬遅れた。

 動かした視界の下方で見慣れた物が蠢いた。すなわち、自分達の影が。

 ジャイアントパンダの右手がパイルを放り出して伸びる。

 突き飛ばされた直後、下から上へシャコンッ…と、黒い物が通過した。ワイパーのように弧を描いて。

 すぐさま体勢を立て直すと、目の前にドザンと黒い腕が落下し、転がったそこへ断面から赤を塗りつける。その傍に音も立

てず、輝くパイルが落ちて突き刺さった。

 咄嗟に突き飛ばして庇ったミーミルの右腕は、肘のすぐ下で切断され、バタバタと鮮血を撒いて白衣を朱に染めている。

「問題ない」

 手を貸すまでもなく、ミーミルは自分で素早くベルトを抜いて右腕に巻き、片側を噛んできつく締め上げて止血する。苦痛

もダメージも見られないが、平気なのではなく、もはやこれほどの重傷でも激痛と感じない程、痛みを知覚できなくなってい

るのだと察せられた。服を捲って目も憚らず体を掻く仕草がなくなっていたのは、痒みを感じる事も無くなったから…。

 一方…。

〔気付いてくれ。念願の対面、だろ?〕

 ふたりの影は流動体のようにヌルリと伸びて離れて行きながら、ミーミルがよく知る声を発する。延長された先で影が重なっ

て繋がって交じり合い、盛り上がって起き上がる様は、地面から噴水が湧いたようにも見えるが、しかしそれは、黒い。

 ひとの背丈まで伸びた筒状の影は、ブルブルとゼリーのように弾性をもって震え、その輪郭をひとの物に近付けてゆく。

「…どういう事だ?これは…」

 ミーミルの視線は影に向いている。自分達の影に潜んでいたソレは、いまや人の形を取っていた。

 ただし、それは黒い。色の黒というよりも、明度が限りなく低いが故の黒。輪郭はくっきりしているソレは、両目にあたる

部分と、笑みの形になっている口に当たる部分から、冷えて固まりかけた溶岩のような赤黒い光をぼんやりと発している。

 ミーミルがちらりとこちらを見る。黒いベタ塗りのような容姿でもそのシルエットと声は…、

「お前と同じ姿…、同じ声…、だと…?」

 酷似していた。気味が悪いほどに。

〔侵蝕できなかった。変わった抵抗力だな、オマエ〕

 影が首を傾げる。その、人その物にしか見えない仕草に悪寒を覚えたのは、ソレがあくまでも「ひととかけ離れた存在」で

ある事を直感していたから。

 ソレの正体は判らない。何者なのかも判らない。だが、「どういったスタンスの存在」なのかは、目にした瞬間に直感した。

 それは、「禍」だった。

 意思がある。人に近い思考がある。その上で高純度を保つ悪意…。

 憎悪によらない、憤怒によらない、負の感情を交えない悪意…。

 快楽を求め嘲笑を伴い、ひとの業を愉しむ、純然たる悪意…。

 それはまさに、「禍」だった。

 「禍」がおもむろに右手を伸ばす。跳び下がった瞬間、その手が鞭のように伸びて、落ちているミーミルの右腕を突き刺し、

持ち上げた。

 触手のように揺れ動くソレは、突き刺した部位から無数に枝分かれし、黒い腕が内側から無数の棘に貫かれる。否、正確に

は棘ではなく、手の形をしている。それは枝のように分かれ、その先がまた分かれ、さらに分かれた…指先から手が生えてそ

の指からまた生えてを繰り返すフラクタル構造。

 見えないサイズまで先端が分かれた細かな手が、ジャイアントパンダの腕から毛皮を剥ぎ取り脂肪を掻き分け筋肉を毟り骨

を削る。細やかに丁寧に執拗に。

〔これは霊子か?わざわざ物質化し、代替え素材にして構築してある体…。にも拘わらず、血肉から骨、神経まで本物同様に

再現してあるのか?いくらでも簡略化できるだろうに、見えない所の形状どころか構造まで再現するなんて、無駄な事をして

いるんだな〕

 人体模型のように内部を露出させ、ミーミルの腕を分解して構造を解析しながら、「禍」は心底不思議そうな声を発する。

 初めて気が付いた。疑いもしていなかったが、ミーミルの体は霊子で構築された物だった。

 食事も摂るし呼吸もする。出血もするし温もりもある。被毛も抜けるし爪切りもしていた。そういった生理現象まで含めて

精密に生体を模していた。思えば、怪訝そうな様子を見せていたジークとタケシ以外は、誰も気付いていなかったのだろう。

「いいや、合理的な事だ。確かにペーパークラフトのようなガワだけの体にも、粘土細工のような中身まで塊の体にもできた

が、元は肉体を持つ一個の生命だった私にとって、構造を簡略化したフィードバックが異なる体は扱い難い。認識や把握の齟

齬が生じない為の措置だ」

 冷静に言い返すミーミルだが、その発言内容が衰弱状態の深刻さを裏付けている。「生体を精密に再現した体」でありなが

ら、その恩恵たる「肉体からのフィードバック」が今のミーミルには正確に届いていない。だから疲労も苦痛も正確に把握で

きなくなり、先ほどの道中での休憩のように急に動けなくなったりしている。

「そもそも自己の把握と認識の弱化は長期の存在維持に不具合をもたらす。元からそういった存在でもない限りはな」

〔長話とは、随分余裕があるじゃないか。やせ我慢は嫌いじゃない。特にそれが徒労に終わるのはサイコーだ〕

 「禍」がせせら笑うと…、

「あん…?話が長い、だと…?」

 ミーミルはスッと半眼になった。

「面倒くさいのに長話をするのには、勿論、合理的な理由がある」

 「禍」が、ゆっくり歩いて巧みに位置を変え、視線を引き付けているミーミルとの会話に興じている一瞬の隙を突いて、パ

イルに飛びつく。

 次の瞬間には分解途中だったミーミルの腕を放り出して、枝分かれを収束させた「禍」の触手がこちらに向いた。

 だが、ジャイアントパンダが左足の爪先だけを軽く上げてトンと下ろし、召喚された無数の貨物コンテナが間に落下して即

席の防壁及び目くらましになる。

 頭が割れそうな轟音を発して落下、衝突し、転げるコンテナから逃れながら、それらが次々と鞭に刺し貫かれ、シャコンッ

と両断される様を目の当たりにする。

 アイコンタクトすら必要ない、一瞬の隙を突く行動で見事にパイルを取り戻したが…。

「アイツは引き受ける。お前はポイントを探せ。パイルさえ打ち込めばこちらの勝ちだ」

 ミーミルの手翳しに応じて、「禍」の周辺に鋼鉄の鈍い輝きが出現した。

 「禍」を取り巻いて球体状に展開し、宙に固定される三千五百八十九丁のアサルトライフル。残存備蓄を全て投入した一斉

射撃が轟音となって大地を揺らす。密集して立体的に包囲したライフル弾の密度は、音速で押し寄せる鋼の壁に等しい。が…。

「!」

 ミーミルが突如胸を押さえ、召喚が維持できなくなり、銃器が連続射撃の途中で消え去る。

 ドッと膝をついたジャイアントパンダの口からゴポリと鮮血が溢れ出て、胸と腹を染めて地に赤い水溜りを作った。

〔へえ。随分とリスクが高い手段を取っていたな〕

 無数の銃弾に蹂躙されて穴だらけになりながら、「禍」が面白がっている。繊維で構築されたような穴だらけのシルエット

になりながらもダメージは見られず、輪郭すら崩れたその状態から瞬く間に修復されてゆく。

 その反対に、跪いたミーミルは痛覚が鈍磨している状態でなお、苦痛で立っていられなくなるほどのダメージを負っていた。

〔自分という存在そのものを修正用の道具として使用する…。設置した物も自分の一部なら確かに扱い易いだろうが、それは

つまり存在の拡散と希薄化というデメリットに繋がる。限界まで膨らんだ風船と同じだ。伸びきったゴムは壊れ易い〕

 ミーミルは失敗を悟った。

 勘違いしていた。この正体不明の影は「ここで待ち構えていた」のではない。「此処こそが」この影そのものだった。

 予めこの場に伸ばしておいた、最後のパイルへ接続するだけにしておいたパスを、「存在そのものが此処」という優位性を

もって逆用されてしまった。自分という存在そのものを小分けにして引き延ばし、構築したパイルとパスは、いわばミーミル

その物。そこを突かれるのは、人体で言えば内臓を直接攻撃されるような物である。

 加えて言うなら、隙を見てパイルを打ち込むどころの話ではない。此処に限っては場そのものが敵であり、自浄作用など存

在しないのだから、この「禍」を無力化しなければ解消できない。

〔どうでもいい事なんだが一つ聞いておきたい。オマエ、何で歴史の修正に拘る?世界が滅ぼうが何だろうが別に構わないク

チだと感じるんだが。取った手段を考えると、自分の存在すら捨てられるんだろう?命が惜しいなんて理由じゃない。だった

ら何故?〕

 「禍」の背後で、背中から生えた触手が六本放射状に伸びた。その先端が花弁のように開き、空間が球体状に歪む様を見据

えて、ミーミルは口元を腕で拭って「つまらない理由だ。説明しても判らないだろうが」と応じる。白衣の袖が赤黒く染まり、

手の甲の黒に朱が添えられる。

「好き勝手に荒らされるのは面白くないから邪魔したい、とでも言っておこう」

〔本当につまらない理由だな〕

 影は触手の先端を眼前に持って来ると、空間の歪みを一つ一つ覗き込む。

〔どれが良いか…。ああ、これらなんか気に入るんじゃないか?〕

 その言葉が終わるか終わらないかの内に、空間の歪みが三つ、拡大した。

 言葉を失う。

 広がる荒地に重なって、ある景色が見えた。



 それは、屍の山。

 燃える大地が夜空を焼き、煙が雲となって立ち込める下に、無数の屍が山のように積まれている。

 その中には、ふたりが目にしてきた者達の姿もあった。

「…ダウド…!」

 ミーミルが呻く。折れた大剣を杖のようについて跪く白虎は、首の左側から腰までをごっそり抉られて丸ごと失っている。

 濁った金眼が向いた先には、腹部から下が無くなった灰色の猫。

 死屍累々、息をする者もない、一面の地獄絵図。

 岡のように盛り上がった屍の上に、一頭の獣が座していた。

 るぉおおおお…

 煙に閉ざされた夜空に、声が上がる。

 喉を垂直に立て、歌うように咆哮するのは、金色の熊。

 黄金を溶かし込んだような被毛は返り血と煤と泥にまみれ、輝きを失いくすんだ体に血染めの黒衣を纏っている。

 それは、ふたりが知っている存在でありながら、ふたりが初めて目にする存在でもある。

「クマシロ…、では、ない…?」

 ミーミルの声は掠れていた。それほどまでに、目にした光景の衝撃は大きかった。

 それは、神代熊斗に酷似していながら、神代熊斗とは大きく異なる。吼える熊の蒼い瞳は炯々と、寒々しく、煙る空を凝視

している。

 るぉおおおおおお…るるるるる…

 そこには感情が見えない。ひととして有って当然の物が見えない。種が離れた生物、昆虫や魚類のそれを見るように、その

目と顔からは何も感じられない。

「まさか、この光景は…」

 ミーミルの声を遮るように、景色が滲んで切り替わる。



 ビルが黒煙を上げている。

 火に内側から炙られ、煙が吹き出る窓という窓から、助けを求めてひとが身を乗り出している。

 しかし、ビルの下には群衆は勿論、救助者の姿も無い。

 人工の灯りが絶えた街。遺棄されて久しい建造物群。信号機は暗い目で道を見下ろし、乗り捨てられて何年も経ったのだろ

う車が、往来が途絶えた道に屍を晒し続けている。

 それは、外傷が殆どないまま打ち捨てられた廃都の様相。溢れていたはずの人工の音は既に絶え、遠い海鳴りが風に乗り、

我が物顔で闊歩する死した街。

 もう消防も警察も自衛隊も存在しない国で、社会としての構造が崩落した国家の残骸で、未だ生き延びているひとびとは怯

えて暮らす。

 ソレを見たら死ぬ。

 ソレはいつでも、自分達に迫り得る。

 燃えるビル内で逃げ場を失った人々は、窓の外にソレを見た。

 伸ばされた梯子。手を差し伸べる消防士。

 ああ。ああ。助かった。まだ機能している消防署があった。

 安堵し、感涙し、人々は窓の外へ、自ら進んで身を投げる。

 雨のように、しかし雨にあるまじき音を立てて、人が降る。

 その様を、落ちて重なり潰れてひしゃげる死体の山を、その男はビルの下…間近から見上げていた。

「この期に及んでまだ命が惜しいか…」

 その左手がぞんざいに払われ、思った以上に飛距離が出た若い女を軽々と弾き飛ばし、路面に叩き付ける。

「御館様も姫様も皆も、…トライチも死にたくなぞ無かった…。だが、貴様らほど無様に、生にしがみ付きはしなかったぞ」

 一箇所に追い込み、火を放ち、まとめて幻術で処理する。手の上で愚かしく踊った連中が降って砕ける光景には爽快感すら

あった。

「貴様等だけがのうのうと、生き永らえようなどおこがましいわ。担ぎ上げた帝共々、涅槃で道に迷うがいい」

 冷酷に、冷徹に、大狸が嗤う。ほんの少し溜飲が降りた、と…。

「あれは…、イヌガミの頭領か…!?」

 信じ難いというジャイアントパンダの口調は、しかし無理もない。

 見知った隻腕の狸とは酷く様相が異なり、静かな憎悪と甘美な憤怒に酔い痴れる、退廃的な雰囲気を纏うその男は、かつて

刑部を名乗った隠神と同じ顔でありながら別人にしか見えない。

 年若く、何より両腕がある。落ちてきた女性をゴミを扱うように雑に叩き払ったのは、彼が故郷や主君達と共に失ったはず

の左腕だった。

「先の景色も、これも、やはり…」

 ミーミルの呻きと同時に、また景色が揺れて切り替わる。



 輝く街を、二つの影が見下ろしている。

「後悔はしねェかァ?」

 軍服姿の鯱が問う。雪が降り積もる、瓦礫と廃墟となりながらも美しい、かつてニューヨークと呼ばれた街を眺めながら。

 半ばから折れてなお高いタワービルの天辺、鯱の大男の横で、白い巨躯は強風にも揺るがず立っている。

「………!」

 その光景を目にするなり絶句し、言葉も出なくなったミーミルの顔は青褪めている。

 身長2メートル半はあるだろうか、真珠色の被毛を風になぶらせる若い巨漢は、ジークフリートと瓜二つの容姿だった。

 だが違う。ジークではない。顔立ちがほんの少し違い、その瞳は金色ではない。

「後悔するのは世界の方だ」

 巨漢が口を開く。赤い瞳は冷厳に、命枯れ果てた都を眺める。

「リーダーが死んだ」

 北極熊はポツリと呟く。

「ネネさんが死んだ。タケシさんが死んだ。ユウトさんが死んだ。アンドウさんが死んだエイルさんが死んだ。トウヤさんが

死んだユウヒさんが死んだカズキさんが死んだサツキが死んだノゾムが死んだ。父ちゃんも母ちゃんも死んだ。みんな死んだ。
みんなみんな死んだ。みんなみんなみんな死んだ。殺された。殺された。殺された。…アケミも、助けられなかった…」

 抑揚の無い北極熊の声が、僅かに震えた。

「世界のためにみんなが死んだ。世界のせいでみんなが死んだ。世界にみんなが殺された」

 全ての国家に宣戦布告してから二千百九十二日目。

「答えは出た。「存続するに値しない」この世界に、オレがこの手で責任を取らせる。この決定に変更はない」

 大国から優先して既に六十一の国家が壊滅させられ、先進国連合は瓦解した。

 もう、黄昏を止められる軍はこの星に存在しない。

 黄昏の若き盟主は担いでいた白い大剣を振り上げ、前へ振り下ろす。

「現時刻をもって投降期限は過ぎた。以降の降伏は例外なく認めない。掃討戦を開始、速やかに全て殺せ」

「心得たァ。じゃァ、殲滅行動を開始するぜェ」

 軍服の裾を翻した鯱が立ち去る足音を背中で聞きながら、北極熊は首元に手をやる。

 そこには、あの頃と変わらずドックタグがある。ただし自分の物だけでなく、回収できた顔見知りの調停者、その全ての認

識票が鈴なりになっている。

 その身を覆う衣類も成長に合わせて新調してあるが、デザインその物は変わっていない。ブルーティッシュの戦闘服は、喪

服でもある。

 見下ろす廃墟のあちこちで悲鳴と銃声が上がり始めた。息を潜めて地下に潜っていた生存者が、ラグナロクに狩られてゆく。

 北極熊の顔は無表情で、赤い瞳は無感動で、踏み出す足にも躊躇いはなく…。

 無慈悲な白い死神は、神殺しの剣を人々に向ける。



 移ろう景色に垣間見る、その光景が意味する物を、ミーミルは理解した。

「異なる…歴史だと…!」

 目にした三つの光景は、歪みにより変わってしまった「こちらの歴史」とは本質から違う、「元から異なる」別の世界、別

の歴史の物だった。

 ここに至ってジャイアントパンダは確信する。

 勝てない。この状況では確実に負ける。と…。

〔さて、どの歴史を上塗りしようか…〕

 影が異史を覗きながら吟味する。

 異なる歴史の重ね塗り…、もしも実行されたなら、修正するどころの騒ぎではない。最悪の場合は歴史そのものが圧し潰さ

れて消滅する。

「…お前の目的は何だ?」

 ミーミルは「禍」に問う。

〔無意味な問いだな。「そうしたいからする」だけだ。他にやる事もない〕

「そうしたいから…?必要に迫られてでもないのに、こんな規模の大仕事をやってのけたのか?」

〔大仕事という訳でもない。ワタシには当たり前にできる事だからやるだけだ。もう一度言うが、他にやる事もない。労力は

全て傾けていい。人類が会社に勤めて毎日働きに出るのと同じだ。特別どうだという事でもない〕

「その労力で別の事をしようという私欲や欲求も無いのか?」

〔また無意味な問いだな。欲求であり私欲であり存在意義でもある。もっとも、人類のメンタリティや価値観、概念では理解

不能な物だろうが〕

「なるほど。…一応回答して貰った礼に、私からも一つ」

 ジャイアントパンダは左手を前に向け、その掌を地面に向ける。

「無意味な問いと言ったが、私にとっては実に合理的な質問だ」

 間髪入れず、地面にTNT爆薬が五十二個、整列して出現した。

「おかげで細工する時間を稼げた」

 くるりと手を上向きに返してパチンと指を鳴らせば、「禍」の頭上に出現し、落下しながらその発射口をひたりと標的に向

けるM202A1四連装ロケットランチャー五十二丁。

 直後、駆け寄る相棒に手を伸ばし、ミーミルは「影」に向かって片眉を上げる。

 不敵な笑みを目の当たりにして、やはり、と思った。

 ミーミルはまだ諦めていない。世界の消滅を回避させる…。その目的に変更はない。

Arrivederci(また会おう)」

〔抜け目が無いな!〕

 「禍」が触手を全身から生やして矢のように伸ばした瞬間、ロケットランチャーが同時に火を吹き、爆薬が一斉に炸裂して

それを阻み、刹那の隙を得たミーミルは相棒と指先が接触したタイミングで、自身への強制退去留置をオフにした。



 これは、人知れず彷徨った、修正者達の物語。



 ドサリと、ソファーに座らせる。座るというよりは落ちたともいえる勢いのまま、ミーミルは座位を維持する事もできずに

横倒しになった。

「また、面倒臭い事態になった…」

 ミーミルの力が落ちているせいだろう。拠点は照明が全て落ちており、非常灯が室内を赤く染めている。光が届かない暗が

りや物陰は、初めてここに来た時の、何も無かった空間と同じ濃藍の闇に変じていた。

「撤退もかろうじて、だったな…。済まない。見込みが甘いどころではなく…、計算を根底で間違えたようなミスだった…」

 もはやミーミルは隠す事も出来ない程衰弱していた。呼吸は乱れに乱れ、胸がハカハカと浅く速く上下している。肩を貸し

ていた間に感じた異常な熱と発汗は、容体の急変もあり得る重病人を運んでいるような不安を煽った。

「衰弱については、問題ない」

 説得力に欠けると突っ込まれ、動くのもままならない有様のジャイアントパンダは軽く目を閉じた。

「もっともだ。が、最後のパイルは当面使わない…もとい使えない以上、私に戻しておける。それに、計画通りに事が進まな

かった時に備えて、虎の子の備蓄霊子がある。本調子とは行かないまでも、体の修復には充分な量だ。もっとも、これを温存

できたのはお前が一度もしくじらずにここまでやってきてくれたお陰だがな」

 ミーミルが開けた目を向けたのは、テーブルに置かれたパイル。

「ひとまずソイツを戻す。悪いが手も満足に動かない。私の体に先端から押し込んでくれ」

 何処に?と尋ねると、ミーミルは「何処でもいい」と応じる。

「物質ではないからな。何処から押し込んでも…。む…。そこからか?いや、構わないが…」

 パイルを地面に設置する時と同じく、底面を掴んで先端をミーミルに当て、慎重に押し込むと…。

「う…!」

 ミーミルが苦しいとも痛がっているともつかない微妙な呻きを漏らし、思わず手を止める。

「い、いや問題ない…!取り込み負荷が多少あるだけだ…」

 パイルの先端はミーミルに刺さっているように見えるが、物理的に皮膚などを突き破っている訳ではない。感触としては、

ゴムと粘土の中間のような、弾力がありながらブニュリとした奇妙な抵抗が手に感じられる。

「いや、痛みなどはない。ないが…ぐっ…!?く…!と、とりあえずだな、気遣いは不要だ…!むしろジリジリやられる方が

キツい…!一息に根元まで入れてくれ…!うっ!?…んっく…!ふぅ…、ふぅ…、ぐ…、ううう…!」

 力むミーミルの体へ侵入して行ったパイルは、埋まった先端部から順に、生成された時と同じ光の粒子になって消えてゆく。

 ミーミルはしばし喘いでいたが、パイルが完全に体内に埋まって取り込みが終わると、還元されたソレからいくらか力を取

り戻せたらしく、次第に呼吸を落ち着け、眼差しにも力が戻る。

「よし、とりあえずは体の修復作業ができる程度にはなった。…さて、早速これからの事だが」

 休憩すら入れずに、ジャイアントパンダは「一つ、悪い報告がある」と、すぐさま状況の確認と情報共有を始めた。

「撤退は成功した。が、ヤツめ、嫌らしい手を打ってきた」

 ミーミルは「例えるなら上を取られた」と顔を顰める。

「この拠点は、いわば水面のすぐ下を漂う気泡のような物だと、以前説明したな?浮上する事で大気という現実に接触する、

位置を変えて浮上する事も出来る、と」

 お世辞にも上手いとは言えなかった図解を思い出しながら頷くと、ジャイアントパンダは「その接触面…、水面にあたる部

分に異物を流された」と溜息をついた。

「こちらの正確な所在は掴めなかったが、とりあえずの手段で、接触面に「異なる歴史もどき」を展開されたようだ。つまり、

浮上して接触するのはあの知らない歴史…。我々の歴史との間に広がる危険な油膜だ」

 まずいのでは?という問いに、ミーミルは大きく頷いた。「非常にまずい」と。

「膜自体も脅威な上に、その膜で接触が断たれているせいで、各所に埋めたパイルとのパス同様に、これまでに通した共闘者

達とのコネクトも切れている。だいたい例外になっていたジークとフワだが…、ジークは息子を核にして顕現してくるという

性質上接触できない。流石にフワでもバベル自体が向こうにある以上、やはりこちらを拾えないだろう。修正完遂のためには

この障害を突破し、我々の歴史とのコネクトを取り戻さなければないのだが…」

 つまり、助力が見込めない状態だがやるしかないのだろう。そう覚悟を決めると…。

「次に、良いと言って差し支えないだろう報告がある」

 ミーミルはタバコを吸いたかったのだろう、懐をまさぐろうとして右腕を上げ、肘までしかない事を思い出し、顔を顰めた。

「対峙した時は、異なる歴史を見せ付けられて酷く動揺し、吟味する余裕がなかったが…。すまない」

 内ポケットからタバコを取って咥えさせてやると、残っている左手自体はそれなりに感覚がしっかりしてるようで、ミーミ

ルはライターを自分で取り出し火をつける。

「奴が言った「歴史の上塗り」…、あれはブラフだ」

 言い切ったミーミルは、真っ直ぐ見返して「確実だ」と力強く頷いた。

「先程説明した「膜のように広げられた異なる歴史」だが、簡単に解析したところ「重み」がない。…薄いとも軽いとも言え

る。なぜなら、展開されたそれは「歴史というとんでもなく厚い本の中の、せいぜい数ページ分に過ぎない」からだ」

 発言内容について考えていると、「歴史書の中の1ページ、そのコピーと言っていい」とミーミルは補足する。

「そもそも、歴史を丸ごとどうにかできる力があったのなら、あちこちポイントで歪ませて自壊を促すなどという遣り方は合

理的ではない。それこそ、もっと楽にもっと面白い歪んだ歴史が造れたはずだが、実際はどうだ?人々の存在力の干渉により、

歪みはしていてもろくでもない歴史にはなっていなかった」

 ミーミルは根拠となる情報をつらつらと並べて説明を続け、得られた情報を元に状況の謎を暴き、自分達の足場をしっかり

と見定められるようにしてゆく。
伊達に人類史上最高最悪の頭脳と評されてはいない。ほんの少しの接触と僅かな情報を与え

られれば、そこからいくらでも暴きようがある。

「ヤツが展開したのは、「観測した異なる歴史を表面的にコピーした物」だ。1ページと例えたが、これは実に不安定な物。

窓を開けたままの部屋の机の上に紙を一枚置いているような状態だ。動かないように何らかの重しなどで押さえてはいるのだ

ろうが…」

 ミーミルは紫煙を吐き出すと、満足げに目を細める。

「そう、まさにお前の言う通りだ。その重しを取り払う事で、異なる歴史の膜は除去可能になる。手段としては、接触してそ

の歴史の重しになっている存在を実力行使で除去する。これを便宜上「アンカー」と呼称する」

 一度撤退は強いられたが、まだ失敗した訳ではない。ミーミルが提示する道筋に希望を見い出す。

「最後に、良いか悪いかまだ決まっていない報告がある」

 ミーミルはタバコを揉み消した左手を上げ、親指と人差し指と中指を立てて見せた。

 その先に小さな、ビー玉サイズの空間の揺らぎがある。それは…。

「アイツがやった、異なる歴史…便宜的に「異史」と呼称する事にするが、その「異史」とのコネクトについて少し解析し、

模倣した」

 抜け目が無い。奇しくも「禍」と同じ事を再び言われたミーミルは、「そうでなくては困るだろう?」と、口の端を上げる。

「あの時のアイツの動きは、お前も何らかの攻撃と警戒して見ていたと思うが…。その通りだ。アイツはあの時「六つ」の空

間の歪みを造り出していた。その内、私達に提示して見せたのは「三つ」だったな」

 六つの内、光景を見せたのは三つ。そこに何か理由があるとすれば…。

「アイツは覗き込んで確認していた。つまり中身を確認した上で私達に三つだけ見せた。…ああその通りだ。おそらくお前の

推測は正しい。他の三つは私達を牽制するには至らない異史だったか、…それとも「自分にとって不都合な異史」だったか…。

もしも後者だとすれば、アイツに対抗する手段を得られる可能性もある」

 ミーミルは指先に浮かぶ三つの歪みを見つめる。中が覗けている訳ではないが、そこには確かに希望がある。 

「端的に言えば、上手くやれば異史から戦力を補充できるかもしれないと私は踏んでいる」

 ジャイアントパンダは言う。「不確かでもやるしかない」と。

「異史から共闘者を拾い上げる。手順としてはお前の時と少し似ているが、不確定要素も多い。何せ宿星の鏡に「本来映るは

ずがない歴史」を無理矢理映すのだから、負荷を考えれば何度もできる事ではない。それでも…」

 ミーミルはスッと鋭く目を細めた。

「希望と呼んで差し支えないだろう」



 これは、滅びに抗い続けた全ての者達の物語。



「ヤツのように異史をコピーする手段を持たない私には、異史から本人を直接呼び込むしかない」

 修復した右腕の具合を確かめるように手をワキワキさせ、ミーミルは床から浮上するように鏡を出現させる。

 相変わらず拠点内は赤い非常灯に染まり、あちこちに濃藍の闇が溜まったままだが、維持に割く余力はなくともミーミル本

人は最低限動けるようになっており、多少しんどそうではあってもしっかり自分の足で立って歩いている。

「試算してみたが、予想どおりだ。本来存在しない「異史の別人」を呼び込むのは修正力との綱引きになる。その歴史にとっ

て重要な存在ほど修正力が強く作用する。…例えば、複数人から認知されている上に、その人物が遂行すべき役割があるよう

な者は難しい。…具体的には有名なアーティストや政治家、例え小規模でも集団のリーダーなどは難しく、有り体に言って「

居なくても問題ない」ような存在は呼び込みやすい」

 問題はだ、とジャイアントパンダは首を縮めた。

「呼び込むのが容易な「居なくても問題ない」存在では、私達が求める戦力にはまずならないという事。歴史に影響を与えず、

かつ有能な存在という、都合のいい対象を味方につける必要がある。一応、試しに鏡に映して多少覗く事は出来るが、実際に

呼び込みを実行できるのは一度限りだ」

 難易度が結構高い。しかしいつもの事。ミーミルは珍しく判り易い笑みを見せた。「頼もしいな」と。

「では、三つの異史を短時間ずつ観測する。サーチは私が行なう、お前はとにかく、世界との関わりが薄く、かつ強力な気配

をイメージしろ。あん?表現が曖昧?言うな。私もそう思うが他に指示できる事はない。準備はいいな?」

 頷くと、ミーミルは指先に出現させた空間の歪みを鏡の表面に近付けた。それに反応し、鏡の表面に何かが映り込む。


 蹲る影。

 燃える森の中、太い木の根元に座り込む、ずんぐりした人影は、元は大太刀だったと思しき折れた刀を握っている。

 煙と踊る炎でよく見えないが、衣服はボロボロで、全身が血塗れ。喘ぐように繰り返す浅い呼吸で体が小刻みに揺れている。

 満身創痍、満足に動けないほどの重傷を負っている影は、熊かと思ったが、違う。大柄な狸だろうか。

 どれほど長いこと戦闘行動を行ってきたのか、どれほどの数の戦場を渡り歩いてきたのか、遠目の印象でも、装備も体も損

傷と磨耗でガタガタになっているのが察せられた。

 体躯を覆う衣類は作務衣にも似ているが、所々に日本の甲冑を思わせる装甲が見られる。

 両肩から肘の上までは、甲冑の大袖を小型化したような、小札状の板を重ね合わせた装甲が装着されている。肘から先は籠

手で覆われ、膝から先には脛当てが見られる。動き易さを重視し装甲を少なくした和甲冑を、黒作務衣の上に縫い付けるよう

にして造られた、特異な戦装束姿…。

 声が聞こえる。切羽詰ったような呼びあう声。何かを探す無数の人影。

 項垂れている人影は口元に不敵な笑みを浮かべ、折れた刀を握る手に力を込めた。


 白壁の影。

 夜に沈んだ地平線の向こうまで伸びる長大な長城の上、スラリとした影が銃眼付きの胸壁から地面を見下ろす。

 黒々と蟠る闇の中に、チラチラと反射光が見える。夥しい数の兵士が、木々と建物…自然と人工物に潜んでいる。

 狐かと思ったが、違う。どうやら犬系の獣人らしい。サーチライトが照らす真っ白な長城の上に影は一つしかなく、夜風だ

けが耳に届く。

 体の輪郭が窺えるカーキ色の軍服を身に着け、右手には短銃を握っている。

 左腰に剣を帯びている。鞘から見るに刀身は日本刀だが、護拳がある西洋サーベル式の柄。護拳はどうやら鰐を象っている

ようで、鍔の部分にぐるりと撒き付き、柄頭まで尻尾が伸びていた。

 ブラックカーボンのライフルを左肩にベルトをかけて背負っているが、九九式狙撃銃に酷似したそれは、軍刀同様に特異な

装備…。

 おそらく三十路にもなっていないだろう若き軍人は、眼下の闇から鬨の声を聞く。

 微笑すら浮かべ、人影は右手の拳銃を自らのこめかみに向けた。


 囲まれた影。

 前後左右、全てを刑務官に囲まれて、格子窓付きのドアが並ぶ薄暗い通路を歩むのは、狸…のようで色が鮮やかな、別種の

獣人。

 囚人服を着込んだ影は囲まれているせいではっきり見えないが、比較的小柄に感じられる。

 コツコツと、硬い靴が床を踏む中に、ペタペタと、素足の足音が混じる。囚人服にはボタンもなく、この囚人に限っては履

き物もなく、素足である。

 会話は無い。囚人が脱走しないよう、通常より多く動員されている刑務官は目深に帽子を被り、一様に緊張の面持ちで、頬

は汗で湿っている。

 対して、刑務官達の隙間から見えた囚人の口元には、薄く笑みすら浮いている。

 通路を抜け、ドアの無い区画を過ぎ、やがて一団はある部屋の前で止まった。

 かくして囚人は登る。絞首台の階段を。

 後ろ手に縛られ、目隠しをかけられ、ロープが首にかかってなお、その微笑は絶えない。

 どこか妖艶な、そして空虚な、虚飾に満ちたその微笑は、死刑の執行ですら打ち消せない。

 刑務官達と死刑囚はまるで、畏れかしずく臣下と、甲斐甲斐しく世話される王のようにも見えて…。


「…見えたな?」

 ミーミルの問いに頷く。それぞれ違う異史に、該当者と思しき姿を確認できた。

「なるほど…、こうなるか…」

 ジャイアントパンダは納得したように顎を引く。

「絞り込みが上手く行ったと考えていい。「有能な存在」であり、「歴史に影響を与えない存在」…、その両条件を満たして

いる。力はあってもその後の歴史に本人が影響を及ぼす事ができない…、「歴史からの退場が確定した力ある存在」というの

が絞り込み検索の結果だ」

 三つの小さな歪みを手の上に浮かべ、ミーミルはこちらを見つめる。

「今の異史を覗いた窓を鏡にコーティングし、短時間ながら向こうへのゲートにする。チャンスは一度。現状ではひとり連れ

てくるのが限界だろうが…、お前を独りで異史コピーの膜に送り込むより遥かにマシだ」

 ずいっと、小さな空間の歪みが眼前に寄せられる。

「今見た三名からひとり選べ。お前の脇を固める「共闘者」候補だ。私があれこれ口を出すより、お前が主観で決めた方が合

理的だろう」

 迷った末に一つを選ぶと、ミーミルは深く頷いた。

「この選択に正解はない。どれを選んでも、正解にするだけだ」

 ジャイアントパンダが指先に浮かべた空間の歪みを押し付けるように、鏡に触れる。

 拒むように宿星の鏡が表面を震わせ、様々な記号や文字を明滅させながら映し出す。

 だがミーミルは構わず、低く呟いて強制実行を開始する。

「コンディションレッド、全て無視。プログラム強制実行。停止機能の代替システム起動。警告は全て消去。最終確認開始。

…承認コード「
The voice of a beast crying in The wilderness」…。異史潜望鏡、起動」

 かくして鏡は風景を映す。それは、こちらの歴史には存在しなかった風景。未だ見ぬ新たな宿星の姿…。



 そしてまた、白衣の男と旅に出る。

 世界の敵になりきれなかった、歴史の敗者を引き連れて。






          Vigilante The voice of a beast crying in The wilderness

          修正戦 第二幕






「無貌の英雄」プレイヤー

 この物語の主人公にして、この物語における「Vigilante」。

 その正体は、世界中で最も多くの者から想いを馳せられながら、決まった名も姿も持たない「誰か」。現実とならなかった

「可能性の集合体」。

 「死ななければ歴史が変わっていた」と誰かが考える歴史上の人物や、「あのひとが居てくれたら幸せだった」と誰かが思っ

た離別した知人、「こんなひとが居てくれたら」と誰かに妄想された空想上の友人や、「こんな風になりたかった」と誰かが

望んだ理想の自分…、そんな「現実には存在しなかった誰か」。

 現実には存在せず、しかしいかなる時代でも絶えず想われ続けて来た「彼」は、歪み続ける世界の影響すら受けずに漂って

いた。ミーミルはこれにアクセスし、説得の末に可能性を修正するための協力を取り付けた。協力要請に応じたのは、その本

質が「望まれる形となる存在」だったからでもあるが、「世界と契約する事による見返り」に惹かれての事でもある。

 いわば多重概念存在とも言えて、世界に突き刺さった無数の「可能性の乱立」とは根源的な部分が同質で、ポイントとパイ

ルがあれば無条件干渉が可能。ミーミルからすればまさに「現状で唯一の特効薬」だった。一面を抽出された形になっている

とはいえ「望まれた者」としての本質は残っているため、誰からもだいたい嫌われない。

 

 世界の修正が済めば大元に戻る事は了承していたのだが、実体化に際して「自分が何であったのか」を忘れてしまった(高

次存在としての記憶は現実世界に持ち込まれる物として異常極まりないため、世界にあわせる修正力が働いたせい)。そんな

プレイヤーに対してミーミルは真実を教える事ができず、話を切り出す事もできなかった。(ひととしての精神性を獲得した

状態では酷かもしれないと考えたのも原因)

 記憶を失う前に望んだ「世界と契約する事による見返り」は、「一時でいいから現実の存在になって、世界を歩き、世界に

触れ、世界を感じてみたい」というもの。つまり最初にミッションに出た時点で願いは叶っており、以後の協力は全て無償で

行なうという契約内容。それはミーミルが「報酬が安過ぎる」と呆れるほど無欲なものだった。

 ミーミルによって宿星の鏡に要望を写し取られ、実体化されているが、その体は霊子代替ボディではなく、物質としての血

肉を持つ「本物の肉体」。その願いがより良い形で叶うようにと、触れ、聞き、嗅ぎ、味わい、見る、その全てを地上に生き

る人類と同じように感じられるよう、ミーミルが持ち得た全ての知識と技術をフィードバックさせた、生命の創造に等しい奇

跡の体現。

 第二幕にて開放される専用スキル「無貌の英雄」は高次存在本来のスケールを端的に表出させた物。「物理法則はおろか因

果も無視して無限の可能性の一部を現実の物にする」という、真正ワールドセーバー級の偉業を瞬間的に起こすアウトスケー

ルエフェクトの一種。
また、ミーミルからの念話のおかげで、実質的にふたり分の注意力と、膨大な知識を持つブレインから

のリアルタイムサポートを受けられており、事情を知らない他者には「非常に物知りで良く気がつく人物」と見られる。

 

 それぞれのスタイルに特化した共闘者の中、特に習得スキルが少ない序盤は物足りない性能。しかしスキルが充実して来る

と、セッティング次第で攻略難易度を大きく変える柔軟性と発展性が持ち味になり、メインで使用する共闘者にあわせる形で

仕上げる事が可能になれば、チームのリベロとして活躍できる。ただし序盤は明確な短期的強化ビジョンをもって育てた方が

効率的(訓練等を突破できる力がつけば成長させ易くなるため)。

 専用のスキルは便利な物が多く、特に中盤以降に習得できる物は非常に強力。瞬間的にあらゆるスキルの作用を100%以

上にして確実に効果を発揮させる「無貌の英雄」や、イコンカード、キャラクターシートごとミーミルと入れ替わる「バック

ドア」など、使い方次第で戦況を引っくり返す事も可能な手段を複数所持できる数少ない存在である。



「荒野の獣」ミーミル・ヴェカティーニ

 もうひとりの主人公にして、この物語における「Vigilante」。ナビゲーターであり狂言回し。

 サブタイトルの「The voice of a beast crying in The wilderness」は、意訳すれば「荒野(あらの)に呼ばわる獣の叫び」。転

じて「誰にも届かない訴え、警告」などを意味し、世界の消滅に際しても万人にそれを告げられないミーミルの立場そのもの

を暗喩していた。なお、聖書の一節である「荒野に呼ばわる者の声」と意味は同様。

 世界の消滅を避けるために行動している動機を語ろうとはしないが、「歴史も世界も、そこに生きている者達と、そこに生

きていた者達の物であり、部外者が手出し口出しすべき物ではない」という、過去と未来を均等に見据えた理念によりこの修

正戦に挑んでいる。自らの全てを代償として支払ってでも成し遂げようとするのは、かつて世界のために、あるいは世界のせ

いで、失われた者達に報いるため。なお、この理由や気持ちを口にしないのは、合理的ではない感傷と拘りと無意味で独り善

がりな美意識による勝手な動機だと考えているから。…ようするに自分では稚拙な理由だと思っているので言うのが恥かしい。

 

 歴史の歪みが顕在化する前に世界と隔絶されていた彼は、歪みの影響を受けなかった。極めて特殊な状況におかれていたた

め、単独で事を成すのは難しかったが、その不安定な揺らぎの状況にあったが故に、異相次元(概念と想いの次元)にアクセ

スする事に成功し、高次存在「無貌の英雄」と接触、その協力を取り付ける事に成功する。そして、かつて研究と調査で得た

知識と経験、推論を元にして世界と契約。自らを「時限付きの擬似ワールドセーバー」と化し、その力をもって「無貌の英雄」

の一部を現実の存在…プレイヤーとして具現化させた。

 自らの体は霊子で構築しているが、現実の肉体と変わらないレベルで再現してあり、触れれば温かいし脂肪や被毛、筋肉の

感触も実物と変わらず、重さもある。五感もあるし生理現象もあるが、これは思念体のままだとどんどん感覚が希薄になって

ゆき、意識が薄れてしまうため、一種の防止措置としてのもの(肉体からのフィードバックがなければ、人としての自我や感

覚、思考形態などを長期間保つのは難しい。いわゆる「ボケの進行の酷いヤツ」に冒される)。

 契約の代償として拠点に定めた領域に縛り付けられており(この代償を回避して行動するためにプレイヤーと二人で一組に

ならなければいけなかった)、拠点の座標を離れても一定時間で強制的に引き戻されてしまうのだが、緊急時などには信号偽

装を行なって出撃する。また、短時間であれば備蓄霊子を拠点の代替え核に据える事で外出も可能。ただしコスト面で言えば

合理的ではないとの事。

 

 プレイヤーには隠していたが、ミーミルが世界と交わした契約は非常にリスクが大きく、純正のハイスペックワールドセー

バーですら持ち得ない歴史の修正能力…一種の改竄能力と引き換えに、最終的には「終わる」(自身の全てが完全に無くなる)

という代償を負っている。
そもそも彼が行なった擬似ワールドセーバー化自体にも無理があり、時を経る毎に徐々に弱って不

調が目につくようになってゆく。もっとも、ワールドセーバー化してもそう遠くない内に崩壊消滅する事は、彼自身も最初か

ら承知していた。
なお、「世界と契約する事による見返り」は保留という形になっているが、本人は自分を過去の亡霊と定義

しているために使う気はなく、「終わる」事で権利消失させるつもりでいる。

 

 当初はプレイヤーを目的のための協力者として扱い、そう見るよう心掛けていた。ただし、見返りに望む物がささやか過ぎ

たり、無欲だったり、本質的に誰かの願いを叶えようとする存在である事に思うところがあったため、つっけんどんではあっ

たが(職場の新しい同僚レベルで)気に掛けていた。本当はもっとビジネスライクな関係の共闘者だった方が気楽で良かった

のだが、これはこれで良い物だと、次第にまんざらでもない気分になっていく。

 共に過ごしてゆく内に信頼が深まり、情も移っていったが、仲が深まれば深まるほどプレイヤーが憶えていない真実を告げ

辛くなっていた。(ひととしての精神性を獲得した状態では酷かもしれないと考えたのも原因)

 最終的にはプレイヤーを信頼できるバディと(口に出して)認めた上で、姿を現した「禍」、広げられた異史の写し、異な

る歴史の世界の敵を相手取り、修正戦の仕切り直しに取り掛かる。

 情を表に出さないのは照れ臭いのと、人付き合いを苦手としているのが原因。言動も態度もぶっきらぼうなので判り難いが、

面倒見が良く責任感が強い性格である。親しくなるにつれ、プレイヤーにはそれとなく気遣いや思い遣りを向けるようになっ

ていった。

 本人曰く、面倒臭がりで無精との事だが、彼を良く知るジーク曰く「誰かに任せる>見ていて面倒臭い>自分がやった方が

合理的>結局誰よりも働く羽目になる」という役回りを昔からずっと繰り返しているとの事。ただし身だしなみにだらしない

という意味では無精という表現は正しい。

 

 拳闘スタイルの格闘術と各種銃火器の扱いに精通しており、召喚を駆使した範囲攻撃や大火力攻撃、リミッターカット、さ

らにオーバードライブも使用できるため戦闘性能は非常に高い。回復スキルもあって自分もパートナーも場持ちさせられるた

め、最後の砦としてバックドアでの緊急出撃のお世話になったプレイヤーも多いと思われる。

 戦闘に参加していなくとも常に出撃しているに等しい扱いのため、強化リソースが継続的に獲得できるのも強み。





      第二幕の新要素、更新内容の御紹介


1.第二幕新要素「三人のエトランゼ」

 第二幕プロローグ後に三種のメインミッションが出現し、一つだけ選んでプレイできます。選んだミッションに応じた共闘
者を仲間に加えられますが、選ばなかったミッションは消滅するため、やり直しが利きません。加えたい共闘者を慎重に選び
ましょう。

 三名の性質は大きく異なりますが、いずれの共闘者も第二幕メインミッションに登場するエネミーの多くに対して有利を取
れる特性を持ちます。

(注1・三名の共闘者にそれぞれ対応するガチャ用アイテム「世界の記憶」は、三つの異史コピー踏破後に探索などで入手可
能となります)

(注2・選択しなかったメインミッションの内容は拠点の記録室で観賞できます)


隻眼の大狸

軍服姿のコリー

囚人服のレッサーパンダ


2.第二幕新要素「三つの異史コピー」

 第二幕ではこちらの歴史と異なる歴史…三つの「異史コピー」を突破し修正を完遂するのが目的となります。「異史コピー」
のメインミッションではプレイヤーの他、特性「エトランゼ」を所持する共闘者、あるいはフレンドが設定しているヘルプ共
闘者だけが出撃選択可能です。また、「異史コピー」のメインミッションではミーミルが出撃不能となるため、プレイヤーの
スキル「バックドア」によるミーミルとの交代が不可能になります。

(注・フレンドが設定しているヘルプ共闘者には制限は適応されず、通常通りに選択できます)


・神威の異史

 神将のさる一家から、濃過ぎた血によって神威(かむい)となった赤子が生まれた歴史。

 情けをかけられ、誅殺を免れて、育った神威はしかし、所詮ひととのあらゆる意思疎通が不可能な怪物に過ぎなかった。

 本土の一角で生じたソレは、寝る間も惜しんで人類を殺し続け、阻もうと立ちはだかった調停者達も、特自の部隊も、神将

達すらも返り討ちにされた。

 国土はそのままに、人類だけが消えた日本で、彼女は今宵も夜空に歌う。

 るおぉぉぉぉぉ…

 るるるるるるぅ…

 

「神威」熊斗(「かむい」ゆうと)

 血の濃さから神威として生れ落ち、しかし誅殺されなかった神代熊斗の成れの果て。こちらの歴史の神代熊斗と同じ年齢。

 神威として誕生しているという本質に気付きながらも、結局殺せなかった父が周囲を偽り、孤島に隔離する事で素性を明か

さずに匿って育てたが、そのひととして当たり前であるはずの父の情けが、結果的に一国を滅ぼした。

 生まれた時から心を持たず、その根底に刻まれた指令(ほんのう)に従い、人類種と認めた存在を破壊する兵器として完成

された彼女は、生物の気配に反応してこれを追跡、殲滅する。

 既に神将は尽く討ち死にし、ブルーティッシュが敗れ、障害の無くなった国土。首都から全ての命を消した彼女はさらに南

下を続け、半数以下となった残りの命、この国に未だある全ての人類種を根絶した。

 国一つをくべた蠱毒を終えて、彼女は海を渡る。残りの人類全てを滅ぼすまで、その歩みが止まる事はない。

固有スキル「異聞、百花繚乱」
 こちらの歴史における神代の奥義の一つ。何の技も習得させられなかったはずの彼女の攻撃手段が神代の古式闘法に酷似し
ているのは、収斂進化か運命の皮肉か。「神威」熊斗は汎用攻撃手段として常用しており、熊撃衝に代わってこちらを多用す
る他、他の攻撃手段も奥義級となっている。


・不二守の異史

 裏帝の里が攻め滅ぼされた折、ある若者に庇われて生き延びた隠神が、復讐者となった歴史。

 主君も妻子も仲間も全て喪い、ただひとり生き残った彼は、自分の命を使い切るまで、この国に生きる全てを殺し続ける道

を選んだ。

 神将全て散り、国家の体裁も失われ、踏み入れば死ぬ魔境として諸外国も介入を見送った、孤立した島国で、彼は今日も丁

寧に、生き残りが居ないか探し回っては、極めて念入りに追い詰めて殺してゆく。

 心を重ねた若い猫が、息を引き取る寸前に発した声にならない最後の望みを、あの日の彼は聞き違えた。

 

隠神「不二守」刑部(いぬがみ「ふじもり」ぎょうぶ)

 帝勢による鏖殺から辛くも逃げ延び、復讐と徹底抗戦を選んだ隠神刑部の成れの果て。こちらの歴史の隠神刑部よりやや若

く、三十代後半の姿となっている。

 主君を、仲間を、部下を、妻を、娘を、大切なひとを奪った帝勢。自分達の主君を認めず帝を担ぎ上げていた関係者。その

事に疑いも持たなかった民草…。その全てを憎悪して復讐の対象とした彼は、全神将を暗殺し、帝を殺め、政府を手始めに国

そのものを滅ぼした。

 左袖には腕が有り、しかし傍らに控える若者の姿は無い。既に仲間も死に絶えて、なおも孤月のように地を這う民草を見下

ろし、ただ、ただ、殺し尽くす。

 その口元に、暗い愉悦の笑みすら浮かべながら…。

固有スキル「異聞、神ン前桜」
 致死性幻術最高峰の一つと言える奥義。オリジナルとは異なり、限定範囲や対象に選んだ複数名に対して自在に花弁を降ら
せる一方で、即効性が薄く、時間経過で死に至らしめる。


・黄昏の異史

 黄昏の日本侵攻時に、バベルを奪われる事を恐れた先進国政府連合軍が、列島そのものを神滅兵装で吹き飛ばした歴史。

 僅かな人数を護って生き延びた若き調停者は、自分達が公的な存在としては認められなくなった事も含め、先進国連合の非

道に激怒、世界に絶望した。

 数年後。再起したラグナロクの中に彼の姿はあった。

 全ての国家への宣戦布告。そして一方的な蹂躙。先進国連合の壊滅。

 国家の存在も国家の新興も認めない黄昏の方針により、世界の大半が無政府状態に陥った。

 交戦を続ける残存勢力、国家という枠組みにしがみ付く民、その全てを、白く無慈悲な破壊者は認めない。

 

「アル・シャイターン」

 ラグナロクが上陸中だった日本に先進国連合政府が神滅兵装を使用し、消滅した列島からからくも脱出できたアルビオン・

オールグッド。世界の全てに裏切られた彼の成れの果て。青年期の終盤にあたり、技能が成熟し肉体的にも完成を見た29歳

の姿となっている。

 被害者の生き残りを保護し、同じく壊滅的な被害を受けた黄昏と利害の一致から共闘条約を結び、あらゆる国家への報復を

誓った最後の調停者。

 かつての名を棄て、シャチ・ウェイブスナッチャーを腹心とし、黄昏の盟主となった彼は、世界にその責を問う。

 十代後半で何もかもを失った結果、かつての面影が見られないほど冷たい印象になっているが、無表情な仮面の裏で、世界

を焼き尽くすほどの憤怒が今も燃え滾っている。

固有スキル「異聞、ヴァルムンク・オールバスターシフト」
 神滅兵装であるヴァルムンクの全機能開放を伴う、霊子や魂魄はおろか、高次存在まで滅ぼし得る神殺しの一撃。拡張斬撃
となるジークのソレとは異なり、通常形態と変わらないサイズの刀身にエネルギーを集約した単体攻撃となっている。



3.特性の内容更新

 第二幕実装のアップデートにおいて以下の特性の効果が更新されます。

「修正者」
 あるべき歴史への修正力を持つ存在。プレイヤーとミーミルのみが該当する。「世界の敵」「侵蝕者」「異史」特性を所持
する対象に特攻及び特防補正を得る。

「WMD」
 World Menace Destroyer。世界にとって脅威となるものを破壊する存在。「世界の敵」「侵蝕者」特性を所持する対象に特
攻及び特防補正を得る。



4.バランス調整に伴うスキルの内容更新

 第二幕実装のアップデートと同時に、以下のスキルについてバランス調整のため内容更新を行います。

ハティ・ガルム「オーバードライブ・ホワイトアウトエグゼ」

 効果持続ターンを5ターン→4ターンへ下方修正。

 命中補正を+75%→+50%へ下方修正。

 回避補正を+75%→+50%へ下方修正。

(注・その他の効果は据え置きとなります)

 

ルディオ・ハーキュリーズ、カムタ・パエニウ「モード・ウールブヘジン」

 効果持続ターンを8ターン→5ターンへ下方修正。

 ターン開始時のHP回復効果を10%→25%に上方修正。

 「発動時に神経系状態異常をリセットし、発動中は神経系状態異常を無効化」の効果を追加。

(注・その他の効果は据え置きとなります)

 

アルビオン・サマーバカンス「打ち上げ式ヴァリスタフルファイア」

 冷却時間を3ターン→2ターンへ上方修正。

(注・その他の効果は据え置きとなります)



5.スキル修得、強化ミッションの追加

 第二幕実装のアップデートにおいて、以下のスキルの強化及び新規修得ミッションが実装されます。

 

プレイヤー専用スキル「バックドア」強化ミッション(異史コピーを全て突破後に開放されます)

 名称を「バックドアVer.2に変更。解説テキストの制限を解禁し、以下に変更。

「プレイヤーを拠点へ緊急退避させ、強制退去対象の一時偽装を行なった上でミーミルが代理出撃する。戦闘行動終了時、あ
るいはミーミルが戦闘不能となった時、プレイヤーが再出撃する。ミッション中一回限り使用可能。カットイン効果あり。」

強化内容
 プレイヤーが力尽きた際に強制発動する。
 プレイヤーの再出撃時にHPを最大値の50%分回復させる。
 この効果発動はいかなる手段でも妨げられない。


プレイヤー専用スキル「無貌の英雄」修得ミッション

 高次存在「望まれた者」としての本来の存在スケールを限定的に開放。基準スケールの差によって、通常次元スケールの存
在からのあらゆる干渉を意味消失させる。(満天の夜空にマシンガンを向けて星を全滅させようとするようなもの)

 使用時には自身の弱体効果(スタン含む)を全て解消して発動。1ターンの間あらゆる攻撃、弱体効果を受けず、全ての行
動が判定を経ず大成功となる。ミッション中一回限り使用可能。カットイン効果あり。


ミオ・アイアンハート専用スキル「オーバードライブ・ブラックアウト」強化ミッション

 名称を「オーバードライブ・ブラックアウトエヴォル」に変更。発動時の暴走判定が無くなり、効果持続ターンを3ター
ン→4ターンに延長。(他の効果は変わりません)


不破武士専用スキル「コネクトオブバベル」強化ミッション

 名称を「横並びの世界より」に変更。効果中のターン開始時供給HP及びSPが最大値の10%→20%に増加。


6.特殊ミッションの受注条件変更について

 特殊ミッション「ミーミル丸洗い」「タケシと刀鍛冶見学」「スルトとコーヒーショップ偵察」「クルージング・デュカリ
オン」について、発生条件の緩和調整を行います。詳細情報はアップデート後に公開となりますが、アップデート前にクリア
済みのアカウントには早期クリアボーナスとして該当共闘者の「世界の記憶」や「成果ポイント」が送られます。


7.新たな「魂の絆」の実装について

 第二幕より、新規参入共闘者を含めて、結びつきの強い人物同士による特殊行動がいくつか追加となります。今回はその中
から一部の組み合わせをご紹介します。

ルディオ&シャチ 「ヒュドラブレイカー」

アグリッパ&アグリッパ(旧) 「グランドメイガス」

いずれかのフィンブルヴェト所属経験者同士 「フィンブルの英雄達」



8.新たなアイテム収集要素

 拠点から選択できる、未出撃共闘者の派遣ミッションに新たな行き先が加わります。条件付きとなりますが、レアアイテム
が出現する仕様となります。

「アングラオークション」
 特性に「目利き」か、目利き効果を含む複合特性を所持している共闘者が居る場合、派遣探索「アングラオークション」が
選択可能になります。派遣前に「成果ポイント」を消費しますが、費やした「成果ポイント」が多ければ多いほどレア素材や
アイテムが入手し易くなります。

「海洋探検」
 所属が「海の一族」となっている共闘者が居る場合、派遣探索「海洋探検」が選択可能になります。主に水棲系危険生物の
素材を入手できますが、運が良ければ神話級危険生物由来の素材や、レリック、疑似レリックを見つけて来る事も…。



9.イベント景品共闘者の固有ミッション実装について

 共闘者との絆が高まった際に発生する特殊ミッションが、イベントでのポイント交換で入手できた共闘者にも実装されます。
対象となるのは以下の全共闘者です。

 なお、時期に合わせて一部イベントの復刻も開催予定です。

アルビオン・サマーバカンス
 夏祭りではしゃぐ法被でめかし込んだアル。抱え筒のように扱っているヴァリスタに花火を押し込んで打ち上げるのは完全
に仕様外の使い方なので整備班の皆さんにバレたら確実に怒られる。

ユウト(ハロウィンの魔王)
 お菓子受け取らないならお前を取って食う。

アルビオン・メリークリスマス
 トナカイカスタムを施した配達バイクに跨り、サンタコスでキメキメのアル。なおトナカイバイクは確実に車検を通らない。

ノゾム(謹賀新年)
 紋付羽織り袴を着込んだノゾム。羽子板に見えるのはドッカーが貸してくれたブルトガング。渡された時には既に羽子板仕
様になっており、謎の機能も付加されていた。全てが謎。

エイル・サン・バレンティーノ&メケメケ
 辛口(控え目な表現)チョコを配って回るバレンタインの悪夢。と、バレンタイン仕様に体色を変えたメケメケちゃん悪夢。
足止めと強制給餌のコンビネーションは正に悪夢。受け取り拒否はできない悪夢。

スルトクロース
 何かの陰謀でサンタクロースの衣装を着込みサンタクロースの真似をする羽目になったラグナロクの盟主。うっかり笑うと
燃やされるレッドベレーサンタ。



10.新たな共闘者の追加。

 ゲストでのみ参戦していた以下の共闘者が、次回アップデートよりプレイアブル実装となります。

 

「ま、乗りかかった船ってやつっスか。おまけに古馴染みの頼みとあっちゃ、無下に断るのも寝覚めが悪ぃってもんス」

 ニブルヘイムの出奔者。世界の脅威を殺す者。記録ごと消えた英雄。

「白き災厄」ジークフリート・アレスグートゥ

 

 神滅兵装「ヴァルムンク」の所有者。かつて命を賭して世界を救った英雄にして、自身が救った後の世界においては公的記

録からも抹消された男。プレイヤーとミーミル、タケシに続く四人目のイレギュラー。

 可能性の乱立の影響を受け、ヴァルムンクにこびりついた残留思念波が息子であるアルの肉体を核として一時的に出現した

存在。肉体はミーミル同様に霊子で構成されており、生前の姿が精密に復元されている。不可解な現象ではあるが、ミーミル

の推論によれば「世界の危機に対するカウンターのような現象」との事。

 容姿その物はアルと似ているが、双眸は金眼。身長も40センチほど高く体の大きさが違うので、遠目に見ても間違う事は

ない。性格は息子とだいぶ異なり、基本的に雑で大味。愛嬌もあるが飄々としている。口調もアルと似ているが、息子と違っ

てシニカルな言い回しや毒舌が目立つ。

 自身の死亡時までの記憶しか持たないため、「浦島太郎な気分」らしい。(本人の認識からすれば、いきなり妻が他界して

いたり、産まれるまでもう少しかかるはずだった息子が既に大きくなっていたりする)とはいえ神経が太いので自分が既に死

亡している事についても何とも思っておらず、出てきたら出てきたでエンジョイしており、「その内ヒルデも出て来ねぇもん

スかね」などと気楽な事を言っている。唯一不満なのは、アルを核に顕現しているせいで成長した息子と直接対面できない点。

 なお、肉体の顕現は一時的な物に限られていても精神は常駐しており、おはようからおやすみまで息子の暮らしを見つめる

ダディ。ただしアルの日常生活に影響を与え過ぎないように配慮している。…というのは方便で、睡眠中にはよく表出してき

て勝手にプラモデルを完成させたりしている。つまりアルが一幕の六章や七章などでエイルに夢遊病の相談したり睡眠の質に

ついて悩んだり記憶力が低下する疾患を疑ったりしていたのは全部この父親のせい。

 ミーミルとは元同僚であり古馴染み。お互いの事情を知った同士でもあるため、気の置けない間柄。軽口の叩き合いは絶え

ないがコンビネーションは抜群。

 プレイヤーに対しては、「気難しくてお目が高ぇミーミルが認める珍妙なヤツ」と認識しており、興味津々な様子で構って

きたり、ミーミルをからかうダシにしたり、遊びに連れて行こうとしたりする。基本的には近所の親しい世話焼きオッチャン

のようなスタンス。

 

 本来は不死身に近い英雄ではあるものの、核となっているアルに負荷がかかるため全力が出せない。…と本人は語るが充分

過ぎるほど規格外。ダウドやスレイプニルをして「何かのバグとしか思えない生き物」「桁違い」と言わしめた超戦士の手腕

は健在。純粋なニーベルンゲンであり、直接戦闘手段に加えてルーンによる真正の「魔術」も修得している。

 可変式大剣であるヴァルムンクの機能をフル活用し、白兵戦から射撃戦までこなす超高火力オールレンジアタッカー。様々

なルーンを用いた各種サポートも行なえる上に、ニブルを活用する術にも長けているため、非常に耐久力が高い。持ち得ない

物は回復手段のみ。

 なお、アルを核としているため他のバージョン違い共闘者と同様の制限があり、アルビオン・オールグッド、アルビオン・

サマーバカンス、アルビオン・メリークリスマスと同時に編成する事ができない。


所属「ヴィジランツ」

 歴史の歪みを修正する者達。

スキル
「ニブルリュストゥング・レッツターアプシュニット」
 カットイン。発散したニブルを纏う戦闘形態、その最終段階にあたる技術。ニブルを完全に物質化させた重量ゼロの強固な
装甲を創造し、身に纏う。

「巨人のルーン」
 ルーン魔術の一つ。自身の存在スケールを偽装し、高次存在と同等のものと世界に誤認させ、干渉を有効にする。かつてワー
ルドセーバーを斃すためにニーベルンゲンに与えられた、神殺しの御業の一つ。

「ヴァルムンク・オールバスターシフト」
 神滅兵装であるヴァルムンクの全機能開放にして、光子大剣としての本来の用途。霊子や魂魄はおろか、高次存在まで滅ぼ
し得る神殺しの一撃。刀身全てを光子化して拡散、柄から発散される巨大な純エネルギーの刃として振り被り、拡張した斬撃
で前方全てを押し潰す。最大出力では成層圏まで達する巨刃が生成されるが、余波が酷い事になるので普段は自粛している。

特性
「WMD」
 World Menace Destroyer(ワールドメナスデストロイヤー)。世界にとって脅威となるものを破壊する存在…すなわち世界

の敵の敵。「世界の敵」「侵蝕者」特性を所持する対象に特攻及び特防補正を得る。



11.排出率アップ、ピックアップガチャのお知らせ

 第二幕において新登場する多くのエネミーに対して優位となる特性「WMD」を所持する共闘者の一部について、出現率
が期間限定の日替わりで上昇します。

 また、該当する共闘者に対応する排出率増加アイテム、「世界の記憶」と交換できるチケットを、アップデート後最初のロ
グイン時に配布致します。

 該当する「世界の記憶」交換対象、及びピックアップ対象となる共闘者は以下の通りです。

ハティ・ガルム          ピックアップ1日目&6日目

ミオ・アイアンハート       ピックアップ2日目&7日目

ルディオ・ハーキュリーズ     ピックアップ3日目&8日目

神代勇羆             ピックアップ4日目&9日目

ジークフリート・アレスグートゥ  ピックアップ5日目&10日目

 新規参入共闘者であるジークも含む特別ガチャキャンペーン、是非ご利用ください。






「無駄を楽しめるのは生きている証拠だ。遊びの無い構造ほど脆い。ひとも同じだ」

 

「寄せ集めた借り物の憎悪で世界を焼き尽くそうなど、他人の褌で相撲を取るような動機だな。実に、度し難い」

 

      「何でも叶うなら、か…。笑うなよ?「誰も泣かなくて済む世界」…、そんな物がもしあったなら…、
ああ、そうだ…。きっとそれは、私でも心から望める世界だろうな…」

 

「…なに、一服したらすぐに追いつくさ…。
               後ろは気にせず前へ進め。
                     振り返る事なく前へ進め。
                             大丈夫だ。お前にはいつでも、私がついている」

 

                    「…私は勘違いしていた…」
「私の声が届いたのは偶然ではなかった…。
                               私がアクセスできたのは幸運ではなかった…。
             私に応えたのがお前だったのは、必然だったに違いない…」

 

「お前は、摂理が定めたカウンター。
                                       この世界の反撃そのもの」

          「「禍」にとっての、「天敵」だった」




Vigilante The voice of a beast crying in The wilderness

修正戦第二幕 近日除幕

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