ミッション・インポッシブル フォール・アウト 注・ネタバレ

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 血液検査の結果、血栓の数値は下がっておりまして。
 とりあえず即死は免れている次第であります。
 しかし、一方で膝の具合はまだ完治しておらず、身動きには相変わらず不自由している次第であります。
 となると日曜日に踊りに行くのも難しい。
 なので結果やってくるこのコーナー!
 太平天国系師父にしてフェンシング・マスタルが陰陽思想とハロハロ文化に基づいてネタバレ全開で映画の感想文を書いてゆく「シネマ・ハッスル」!
 今回のお題は「ミッション・インポッシブル フォール・アウト」です。
 これねえ、実は結構難しい作品でして。
 というのも、事前にこれは聞いていたんですけど、制作時にほとんどシナリオが無かったそうなのね。
 まず、トム・クルーズがやりたいっていうアクション・シーンを撮って、そのあとでそれを使う形でストーリーを作ったって言う物らしい。
 いつの時代の映画だって感じでしょ。昔の香港映画よりひどい。
 しかもスパイものだから、演じてる本人も自分がやってる役がどういう設定なのかが分からないまま演技してるらしくてね。
 なにそれ、そんな映画面白いの? と思っちゃっていささか食指が迷ったのだけど、いや見てきましたよ。
 そしたら、事前に恐れていた以上にこれが複雑目のストーリでね。
 てまぁ分かるじゃない。ミッション・インポッシブルっていつも実はこいつが裏切り物でした、とかこいつと見せかけて実はゴムのマスクつけててべりべりはがしてルパーン三世とか。
 そういう割に複雑な騙し要素の多い映画で後からでっち上げのストーリーをやってるから、もうなんだかでさ。
 でも、全部見終わった後でいうと、結果ちゃんとわかりやすいようにしていてね。
 途中で揺さぶりがあっても、基本最初に感じ悪い奴は最後悪者で、いい奴は結局いい奴です。
 今回は二作目の時から継続している愛情第一タイプの作風です。
 かなり前半の段階で「多くの人を救うために一人を犠牲にしないから君は特別なんだ」とスパイというものの根本を揺るがすような発言がトムに対してされます。
 このセリフがあることで、スパイ大作戦でおなじみの「君、および君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しない」という決まり文句がまったく違う意味に聞こえてくる。
 トムは仲間たちをまったく犠牲にさらすことなく、常に自分が走り回って自体に立ち向かい、メンバーがドジばかりやらかしても次々に鎮火して回りつつ愛する女性たちとのロマンスを貫くというものすごい超人的な活躍をしている。
 スパイっていうよりキャプテン・アメリカかクラーク・ケントって感じ。
 スパイ的な非常さや酷薄さはかけらもない。
 そういうシビアなものは今回一切スポイルされた甘々ヒーロー映画を目指している。
 今回の本人スタントでのうりの一つとなっているスカイ・ダイビングでのアクションでも、空中で気を失った仲間を蘇生させつつ共に無事着地できるようにすう、というサスペンスがあるのだけれど、それだけの危険を払って行う目的は、パーリー会場への侵入。
 スタッフTシャツみたいの着たアホそうなチケット係の目をかいくぐって中に入るためだけにそんなことしてんのね。
 中、二十歳くらいのパリピみたいな奴らがチャラチャラいるだけなんだよ。そんなん偽造なりなんなり他の方法でいくらでも入れるだろ。わざわざ危険な上に証拠の残るパラシュート降下して上空から侵入する必要まったくないだろ。
 この映画、ずっとその調子なのね。
 時限爆弾のコードを切らないと解除できないっていう現実には絶対にないシチュエーションがいまだにクライマックスなのは仕方ないにしても、それがなぜかカウントダウンがギリギリになってから切断しないと解除できないことになってるとか、もうマッチポンプもいいところだよ。
 まさに先にアクションありきで作ってるってストーリーだから、エモい感じ意外に見せ方が無かったんじゃないのかなあ。
 それでも一応、ダダ甘の少年マンガンの主人公みたいな奴の映画としてまぁまぁ見せる感じになってるからね。
 ただ、シリーズの中でのゴージャスな方のヴァイブスは無いんだ。
 だから、大人のセクシーな危険さとかみたいのは味わえない。
 今回のトムってほとんど、ジャッキー・チェンかキン肉マンみたいなんだもん。
 あ、本人が免許取って頑張ったっていうヘリのアクションもまったく意味ないからね。
 数少ない攻撃手段を使って戦うってアクションがあるんだけど、それ別にストーリーに関係ないから。
 攻撃が成功すると結果奪還しないといけない物が爆発して取り返しがつかなくなるので、なんのためにやってるんやらわからない。
 まぁそういう映画でした。
 小道具も情報戦もおざなりで結局はすべて体力と暴力で解決っていう、スパイでも何でもない特殊部隊になっていた。
 それでもそれなりに見れるようにチャチャッと仕上げる勢作の手腕には関心するけど、でもこの作りじゃシリーズはもう持たないと思うよ。
 そりゃ確かに、作品を延命させるには何のジャンルで始まってもとりあえずバトルものにっていうジャンプのパターンをやってれば、どんな馬鹿でもわかる映画にはなりますよ。
 でもね、それだと後に残る芸術的な精度の美しい映画は作れないと思うし、トムがどっかで死ぬだろうから。
 足ぶっけて折ったジャンプのシーン以後、ちょいちょい足引きずってるんだもん。
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