ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ(小狐丸 役)や、MANKAI STAGE『A3!』(高遠 丞 役)をはじめ、これまでに数々の舞台に出演し、役者としてステップアップをし続けている、北園 涼。今年2月にインデーズよりリリースした1stシングル「Long way to Go」を機に、“北園 涼”名義で音楽活動を本格的にスタートさせた彼が、10月2日に1stアルバム『Ark』でメジャーデビューを果たした。
北園がこの記念すべき1stアルバムに“Ark”(箱舟)と名付けたのは、今も自分自身が夢を追い続けているからこそ、みんなと一緒に夢に向かって進んでいきたい、そして夢に向かっている人を応援したい思いがあるからだという。
“北園 涼”という人間が伝え続けたい思いがまっすぐに伝わってくるアルバム『Ark』。今作がリリースされた5日後の10月6日(日)に、東京・一ツ橋ホールで行われた初のワンマンライブ(1部)をレポートする。
取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 冨田望
俺が音楽活動を始めるのって奇跡だと思う。これからも夢を追い求めていたい
初ワンマンライブの会場である一ツ橋ホールに足を踏み入れると、ステージ後方に大きな黒い幕が掲げられていた。その幕に白抜きの文字で“Ryo Kitazono”と描かれてあるのを見て、そうか、今日、北園 涼は自分の名前を背負ってライブをやるんだなと思った。
客電が落ちると同時に、まだ誰もいないステージにカラフルな照明がいくつも点滅し、「Into The Ark」が場内に響いた。アルバム『Ark』の1曲目を飾っていたこの曲は、この日はライブの幕明けを告げるSEになり、観客を北園 涼の1stワンマンライブへと導く役割をしっかりと担っていた。
観客たちの高揚した気持ちをより加速させた「Into The Ark」が鳴り終わると、いよいよ北園 涼の登場だ。彼が1stワンマンライブの1曲目に選んだのは「Ark」。
「待たせたな、おまえら~!」と黒のライダースジャケットを羽織った北園が叫ぶと、800人の観客からひときわ大きな歓声が上がった。
ワンマンライブは初めてなだけに、発売されたばかりのアルバム『Ark』を聴いてあれこれ想像していたとしても、彼がいったいどんなステージを見せてくれるのかなんて誰もわからない。イントロだけでその期待感がマックスに煽られる。
ステージ上には北園とギタリストのふたりだけが立っている。生のエレキギターが、打ち込まれているサウンドに印象的に絡みながら大音量で音を響かせる。そのなかで北園 涼の生の歌声をみんなに届けるんだという強い覚悟が伝わってきた。
北園が「声を出してくれ!」「声を聞かせてくれ!」と客席に向かって叫ぶ姿は、舞台などで何度も彼の姿を観てきたファンにとってはかなり新鮮だったはずだ。
2曲目「ALIVE」でも「叫んで、跳んで、拳を掲げて!」と何度も観客を煽っていたのも、ステージからみんなの姿は見えているけれど、目の前にいるみんなと一緒に今日のライブをつくっていきたいという思い、この日にしかないライブでみんなの思いを生で確かめ合いたかったからだろう。
最初のMCで「ありがとう。ようこそ、北園 涼の1stワンマンライブへ! 皆さん調子はどうですか? いい感じ?」と明るく話しつつ、自分の左隣りにいるギタリストを紹介。
「ふたり対800人だけど、かかってこいよ~! いいかーっ!!」と笑顔を見せ、「歌える方がいたら、ぜひ一緒に歌って」と、英語詞の「HERO」を。スタンドマイクの前に立ち、<You’re my hero>と歌いながら両手を大きく広げて、みんなの歌声を受け止めている姿がとても印象的だった。
続く「Lowlight」ではマイクスタンドを客席に向ける。俳優として立つ舞台ではなかなか観る機会がないロック魂溢れる姿にも観客は素直に応え、広がりのある大合唱を生む。
また、アルバム『Ark』の最後に収録されているラブソング「キミのそばで」は、ライブの場面を変えてくれる曲として、これからライブをやるたびに育っていく曲になるはずだ。
「初ワンマンライブ、どうですか? いい感じでできてますか? 自分も緊張してるけど、みんなも緊張していると思います。早いもので(ライブも)折り返しです」と笑う。すると、客席のあちこちから上がる「え~っ!!」の声を受けて、「だってアルバム一枚しか出してないからね(苦笑)。全部通してやっても、すぐ終わるんです(笑)。短いけれど、皆さんに楽しんでもらえるように一生懸命練習しました。ここからはぶち上げていくよ~! 声を出して、飛び跳ねて、騒ぐ準備はできてますか? 次の曲で暴れてください!!」と、スピード感溢れる「Drive」を披露。
歌詞には“どんなときもチャンスがないときはない”“不可能を可能にしていく”“俺は俺の道を行けばいい”と、北園 涼自身の強い意志が刻まれている。ステージから力強く放たれる彼の声を受け止めた観客たちは、一緒に歌いながら拳を突き上げその思い受け止めていたに違いない。
間髪入れず演奏された「Be Bright」では、曲の途中でギタリストに近づき、お互いに笑顔を交わす光景も。そしてなによりも驚かされたのは、この曲で北園や観客が重低音に合わせて、ヘッドバンキングをしていたこと。これもライブでしか見ることができない光景だろう。
「早いもので」と言っただけなのに観客からは「えーっ!」「もう一回最初から」の声が飛ぶ。「また来てよ。またやるからさ」と返した彼の声はとても優しかった。
そして「こうやって、俺が音楽活動を始めるのって奇跡だと思う。鹿児島から20歳で出てきて、俳優になって。今、27歳になっても、こうしてまだ新しいことができている。これからも夢を追い求めていたいし、皆さんがまたここに来たいと思ってもらえるように、皆さんを引っ張ってあげられるように、これからもライブをしていくので、これからもよろしくお願いします」と言葉を続けたあと、北園 涼の音楽活動の始まりを告げた1stシングル曲「Long way to Go」を届けた。
ライブの本編ラストは「ヒカリアレ」。伸びやかなハイトーンボイスで何度も<ヒカリアレ>というフレーズが繰り返される曲の中で彼は「もっと明るい未来になる」と言葉を発して客席に手をさし伸ばし、<掴めるはず><そばにいるから>と歌いながら、左の掌をギュッと自分の胸に押し当てた。その姿が強く印象に残った「ヒカリアレ」は、未来を信じている歌だと思った。
余韻を残しながら静かにステージを去った北園を、観客たちの大きな「アンコール」の声と拍手が呼び戻す。
「大きな声と拍手は、皆さんがここに来て良かったなって心から思ってくれたからだと思っています。これからもライブを続けるので、そのときは足を運んでください」
そう言ったあと北園がアンコールの曲に繋げようとすると、ギタリストがゆっくりと北園に近づき、白い封筒を手渡す。「えっ何? サプライズ!?」と言いながら、白い封筒から一枚の紙を取り出し、文面を読み始める……と、そこには「北園 涼 2ndワンマンライブ決定!」の詳細が書かれており、緊急告知が発表された。
観客からは大きな拍手と「おめでとう」の声が起こったが、北園は「いやぁ、ビビるよね。だって皆さんと同じタイミングで俺も知ったんだから」と、本当にこのことを事前に知らなかったようで「良かった。次が決まって」とホッとしつつ嬉しそうな表情を見せた。
そして本編で1stアルバム『Ark』に収録した9曲をすべてやり終えた彼が、アンコール曲に選んだのは、今日のライブの1曲目に歌った「Ark」だった。北園 涼が経験した初めてだらけの初ワンマンライブは、ほんの1時間ほどだったけれど、このライブで見えたことや、この場所に立つことでしか感じることができなかったことが、いくつもあったのだろう。1曲目の「Ark」とアンコールで歌った「Ark」は同じ曲とは思えないほど表情が変化していたことに驚かされた。
ギタリストを送り出したあと、客電がついても北園はステージに残り、「1stワンマンライブという大事なステージに立たせてもらって光栄です。みんなのエナジーを感じることができました。後ろにいる皆さんもめっちゃ見えてました! すごく幸せで、楽しい時間を過ごすことができたのは、本当に皆さんのおかげです。ありがとう。また会いましょう!」と感謝の言葉を述べ、何度も何度も笑顔で手を振り、最後に深く一礼してステージをあとにした。
そういえば、アンコール曲に入る前、北園はこんなことを話していた。
「ペンライトを振らないライブを知らないお客さんもいると思うし、そのせいでノリにくいなって戸惑いもあったかもしれないけれど、自分のわがままで、俺のやりたいことをやらせてもらってます。それでもついてきてくれる皆さんが大好きです!」と。
自分の意志で音楽活動を続けていくと覚悟を決めた北園 涼の次のワンマンライブは、2020年2月23日(日)・24日(月・祝)に神田明神ホールで行われる。来年2月に音楽活動2年目に突入する北園 涼に、“2DAYSライブ”というまたひとつ新たな目標ができた。
北園 涼 1stワンマンライブ
2019年10月6日(日)@一ツ橋ホール SET LIST
M01. Ark
M02. ALIVE
M03. HERO
M04. Lowlight
M05. キミのそばで
M06. Drive
M07. Be Bright
M08. Long way to Go
M09. ヒカリアレ
ENCORE
EN01. Ark
北園 涼 2ndワンマンライブ
2020年2月23日(日)神田明神ホール
2020年2月24日(月・祝)神田明神ホール
※1部:LIVE/2部:アフターパーティー(詳細は後日発表)
北園 涼(きたぞの・りょう)
1992年2月9日生まれ、鹿児島県出身。2014年に俳優デビュー。2017年に『乱歩奇譚 Game of Laplace』にて初主演を務め、2018年には『BLOOD-VLUB DOLLS1』で映画デビューも。ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ(小狐丸 役)、MANKAI STAGE『A3!』(高遠 丞 役)、ミュージカル『忍たま乱太郎』シリーズ(中在家長次 役)など多くの人気作品に出演。アーティストとして、2019年2月に1stシングル「Long way to Go」でCDデビューを果たす。近年の主な出演作品には【舞台】『乱歩奇譚 Game of Laplace ~怪人二十面相~』、舞台『魍魎の匣』、MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN & WINTER 2019~などがある。11月〜ミュージカル『刀剣乱舞』 歌合乱舞狂乱 2019、2020年4月〜MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020〜への出演を控える。
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