今川義元は、群雄割拠の戦国の世にあって、“海道一の弓取り(東海道一の大名)”の異名を持ち、天下統一に一番近いといわれた武将です。今回の作品でも、より力強い義元像が描かれています。桶狭間の戦いの殺陣(たて)のシーンでも、その真骨頂を表現すべく演出家や殺陣武術指導の久世先生とご相談しながら、最後まで屈強な義元を演じられるように心がけました。義元が強ければ強いほど、その今川軍を破った信長の存在がさらに際立つと考えたからです。絶命のその瞬間まで戦う武将であることを意識しました。
またロケでは、撮影の前日に雨が降り、本番当日は地面がぬかるんでいました。現代なら多少地面がぬかるんでいても靴があるので「たかが雨」なのですが、義元の時代は草履なので「されど雨」。思いどおりに動けない。当時は雨が降れば状況は一変するということを、身をもって感じることができました。これは、本作品の撮影の中でも特に忘れられない体験になりました。
(片岡愛之助)