ベトナム

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今回は春休みにベトナム ホーチミンの児童養護施設で、重度障害のある子どもをサポートするボランティアに参加した大学生の体験談です。現地の子供・先生たちと過ごした施設での出来事、ゲストハウス、観光情報まで、詳しくご紹介します。

  • 笹井 萌さん / 大学2年生 (参加当時) / 創価大学 経済学部 経済学科 / 2月に2週間参加

笹井さんが参加したベトナム ホーチミン「児童福祉」

1960年から1975年まで続いたベトナム戦争では、アメリカ軍が使用した枯葉剤が人体と自然に多大な影響を与えました。ベトナムでは今でも心身に様々な障がいを抱えた子供が生まれてきます。そして、貧しい家庭では十分な治療が受けさせられないため、子どもを捨てたり、孤児院や施設に預ける親は、後を絶ちません。このベトナム「児童福祉」プログラムは、過酷な状況の中でも一生懸命に生きる子どもたちの生活のお世話や一緒に遊ぶ活動を通じて、愛情を与えるプログラムです。>>詳細はこちら


参加を決めた理由

私がこのボランィアの参加を決めたのは、高校生の時フィリピン研修で訪れた孤児院での出来事がきっかけでした。フィリピン研修では特に経済的な格差を痛感し、この格差社会を是正したいと強く思いました。当時の経験をもとにさらに深い知識を身につける為、大学で東南アジアにおける貧困開発経済学をゼミで専攻しています。大学での学びの中で、フィリピンだけでなく様々な国の孤児院で子供たちと触れ合いながら「なぜ子供を捨てなければいけなくなったのか」などの社会的理由や、ベトナム戦争の名残を受け、障がいを持って生まれた子たちの歴史的背景を学びたいと思い参加を決意しました。

実は、私自身今回のベトナム渡航は3回目で、一度目は大学一年生の時にインターンシップで1ヶ月滞在し、ベトナムの文化や生活がとても大好きだったことも参加を決めた理由の一つです。ベトナムインターンシップでは、日本とは違う文化、違う環境で社会人として生活していましたが、今回はボランティアスタッフとして、別の視点で同じ国を見ることができることを渡航前からとても楽しみにしていました。そんなベトナム大好きな私が、今回のボランティアを通して学んだこと、これから渡航される皆さんに是非知っておいて欲しいことを、わたしの経験を含めいくつか紹介します。

現地の生活

言語について

現地の言語はベトナム語です。場所や人によっては、英語が通じるところもありますが、スーパー、コンビニ、個人経営のレストランなど、いわゆる「ローカル」な場所では英語が通じません。しかし、google翻訳機やジェスチャーを使って伝えることも可能です。観光地にあるお店やチェーン店など、特に若い店員さんは比較的に英語が通じる方が多いので一度英語で話してみて、通じなかったらジェスチャーを使うのがいいと思います。

私自身、現地であまりコミュニケーションで悩んだことはありませんでしたが、場合によっては全く通じないところもあるので、不安であれば観光地にあるレストランやカフェに行き、ローカルなレストランやお店に行くときはその土地をよく知る人と一緒に行く方がいいと思います。しかし、観光地では日本語表記もたくさんあり、店員さんも日本語が話せる方が多いのでお土産を買う際などは安心してください!

衛生面について

衛生面は日本に比べ、とても良いとは言えません。私自身今回の渡航の際、微生物系の急性胃腸炎にかかりました。水は飲んでいい水と、飲んではいけない水があり、記載を無視して水道水を飲むとかなりの確率でお腹を壊します。少し値段の高いカフェやレストランに行ったとしてもプレートにアリがいたり、ハエがいるのはほぼ当たり前です。ローカル食堂では大きいポリバケツのようなものに食べた食器を入れてホースの水で洗うところもあります。

歩道や住宅街、どこでも構わずゴミが落ちています。果物の食べた後や、ジュースが入っていたコップ、タバコの空き箱、食べ残し、様々なものが何日もそのまま放置してあるので、昼はラット(大きめのネズミ)、夜になるとゴキブリが大量発生します。ひどいときは2メートル間隔くらいでゴキブリがいることもあります。日本のゴキブリよりも大きくて、日本のゴキブリのように素早いです。叩いても死にません。幾度となく叫んで逃げ回ったことを昨日のことのように思い出します。しかし、そういうところもベトナムのいいところなので存分に楽しんでくれると幸いです。

治安について

ボランティア説明会の時にお話があるかとは思いますが、スリやひったくりに注意してくださいとよく言われます。実際、ベトナムの治安は良くて、言ってしまえば夜の渋谷や新宿の方が治安は悪いと思います。私は、Grab(バイクタクシーや車が呼べる配車アプリ、Uberみたいなものです)バイクを乗っている時に、ポケットに50万vnd(ベトナムで一番大きい額のお札)を入れていて、それがポケットから落ちかけていたことがありました。にもかかわらず、赤信号で停車している時に、知らない現地の人が「落ちかかっているよ」と教えてくれた経験があります。たまたま運がよく、その人が優しかっただけかもしれませんが、このように三度ベトナムに渡航していますが盗難などの事件に巻き込まれたことは一度もありませんし、夜中でなければ夜一人で出歩いてもある程度は大丈夫です。しかし、土地勘は日本に比べないと思うし、観光客とわかれば狙われる可能性は高くなるので夜街を歩くのはある程度どの道に何があるのかを分かってからの方がいいと思います。しかし、万が一のことがあるので女の子は特に21時以降一人では出歩かない方がいいと思います。

食文化について

ベトナム料理は、本当に外れがなくどの料理を食べても本当に美味しいです。日本食のようにあっさりしていて食べやすく、どれもベースに鶏ガラスープ?を使っているような感じです。私のお勧めは、バインミーというベトナム流のサンドウィッチ(中に照り焼きチキン、ミンチ状になったパテ、にんじん、キャベツ、きゅうりなどが入っています)、ソイガー(餅米の上にカリカリに焼いたガーリックと塩、胡椒がかかっているおやつ感覚で食べられるものです)、そしてなんと言っても空芯菜のガーリックソテーがたまらなく美味しいです。バインミーは、路上で売っているものもありますが、専門店もたくさんあるのでいろいろなところで食べ比べをしてみてください!路上で買ったバインミーの中に蟻が6匹くらいいたことがあったので衛生面も気をつけながら楽しんでくださいね!

持ち物について

今回のベトナム渡航で絶対に日本から持参した方がいいものをいくつか紹介します。

ポケットティッシュ、ウェットティッシュ
必須です。レストランに入った時、子供と触れ合った後、いろいろな場面で絶対必要なアイテムです。レストランではおしぼりの代わりにウェットティッシュが出てきますが、一枚ずつお金を取られるので持参した方がいいでしょう。孤児院でのお昼ご飯前にウェットティッシュは必須になります。

マスク
この時期だったからかもしれませんが、孤児院ではマスクの着用が義務付けられていました。暑いのですぐに蒸れましたが、持って行って損はないと思います。街は交通量が多く、排気ガスがすごいのでそのためにも持参していいかと思います。

常備薬
胃腸薬、風邪薬、自分がよくかかりやすい病気の薬などは絶対に持っていった方がいいと思います。私自身、ベトナムで膀胱炎になったことがあるのと、貧血で2回ほど病院に搬送されているのでその時に常備していた膀胱炎の薬と貧血の薬は大変役に立ちました。

Grab
Grabというアプリはベトナムを楽しむのには必須のアイテムです。最近日本でも導入されているタクシー配車アプリと同じようなもので、行き先と現在地を入力するとそこまでの料金が表示され配車できるuberのようなものです。料金はすごく安く、高くても500円未満くらいです。また、デリバリーもしてくれるのでとても便利です。携帯から無料ダウンロードできますが、はじめにSMS認証が必要なので日本にいる時に設定をして、現地で使うのが賢明でしょう。

*シャンプー、ボディソープ、洗顔などはパンテーンやLUXなど日本と全く同じものが現地のスーパーに売っているので私は日本から持っていかず現地で揃えました。服も、活動する時に使う汚れてもいい服と遊ぶに行く用何着かのみで、最低限でいいと思います。

強い刺激をたくさん受けた2週間

ある1日のスケジュール

7:00 起床
8:10 ボランティアハウス出発
8:30 Pagoda(施設)到着、活動開始
10:30~11:00 子供たちのお昼ご飯、お昼寝の準備
11:00~11:30 ボランティアスタッフのお昼ご飯
食べ終わり次第~14:00 活動再開
14:00~15:30 English class (小学生頃の子供たちと一緒に英語の勉強)
15:00~16:00 ダンス(子供たちが踊ります。とってもかわいいです)
16:00~17:00 子供たちの晩ご飯、就寝準備
17:30 終了、施設出発 自由時間


平日の過ごし方について

Pagoda(施設)の近くにカフェがあり、ボランティアメンバーと一緒に毎日通っていました。店主のおじさんがとても気さくで、疲れている私たちを見てソファで寝かせてくれたり、歌を披露してくれたり、枕を貸してくれたり、サービスで生春巻きを作って下さったりしました。カフェの中にはたくさんギターやマイクがあり、みんなでギターを弾いたり、歌って踊ったりして過ごしていました。ボランティアが終わり帰宅してからはボランティアメンバーのみんなでスーパーに行き晩ご飯を買い一緒に食べていました。帰りが遅くなりスーパーのお惣菜がなくなってしまった日はボランティアハウスの近くにあるフォーのお店に行って食べたりもしました。ラウンジでみんなとご飯を食べる時も笑いが絶えず本当に楽しい時間を過ごしました。

ご飯を食べてからは各自自由に過ごしていて、現地の友達と遊びに行く人やメンバー同士で遊びに行ったり、夜市に出向く人もいました。私はシャワーを浴びてからシティセンター(繁華街)に行き、オペラハウスの前の階段で音楽を聴きながら1日の自分なりの総括をするのが日課でした。夜はラウンジに集まって夜遅くまでウノやベトナムオリジナルのゲームをして遊びました。

週末の過ごし方について

第1週目にはcity tour があり、現地のスタッフの方がシティセンター(繁華街)を案内してくれました。それ以外の休日は各自で過ごすことになりますが、私が行った週の週末にはcultural night と言われるパーティーがあり、各国のボランティアスタッフが自国の伝統的なご飯を作りみんなで食べたり、カラオケをしてボランティアメンバー同士の絆を深めました。金曜日頃になると仲のいいメンバーで土日の使い方を決めて、買い物に行ったり観光地を回ったり満喫しました。

今回のボランティアを通して考察

去年の同じ日に、同じように同じ国の同じ都市に滞在していたけど別の国にいたように感じました。孤児院での活動は思ったよりハードで、1日目は本当に辛かったです。初めはお世辞でも決して「楽しい」とは言えるような環境ではなかったし、毎日メンタルと体力勝負。ご飯の時間は、孤児院のスタッフの人が一人一人に口いっぱいになるまで詰め込んで、当たり前に喉に詰まって戻す。戻すと罵声が飛んで、戻したものも口に入れられる。1日中手首を壁に繋がれている子、起きている間ずっと自分の頭を机に打ちつけ続ける子、傷だらけ、青タンだらけの身体、泣き喚く子供たち、薬飲まされて永遠に寝ている子、女の子も構わず髪の毛刈り上げ、入口には鎖。

このような状況から、「人は皆平等」などと、一定の側面に焦点を当てれば例え口が裂けても言えないと思ったし、「時間だけはみんな平等にある」って言葉も2度と信じないって思いました。自分とは血の繋がらない他人に決められた自分の人生の時間、ほぼ24時間365日縛られた身体。とても自由とか、平等が似合うような場所や状況ではない、しかしそこに生じる「でも、その“他人”がいないと確実に死んでしまう」というジレンマ。

しかし彼らはここに来たどの国のボランティアメンバー、現地のスタッフよりも明るく、私の苦難葛藤を太陽の光の如く吹き飛ばしてくれました。彼らの笑顔をみているとくよくよしている自分が恥ずかしく思えたし、彼らが楽しそうに、幸せそうに笑っていてくれる、その笑顔だけでどんなことも乗り越えていける、彼らの幸せが私の幸せに直結していることを痛感しました。

一生に一度しかない今この時間に、一生に一度しかない今この時間の彼らに出会えて心から良かったと思うし、彼らはわたしのこと覚えてなくても、私は彼らのことを絶対に忘れないと決意しました。愛おしい子供たちに出会い、最後に私が思うのは、君たちの大切な時間を私に分けてくれて本当にありがとう。1番大切な時間を分けてくれてありがとう。沢山の笑顔をくれて本当にありがとう。生きる希望をくれてありがとう。出会ってくれてありがとう。沢山遊んでくれてありがとう。一生忘れられない思い出を作ってくれてありがとう。幸せにしてくれて本当にありがとう。ということです。

小さな体で、他国の、言葉すら通じない、年齢も10歳以上離れている私に、夢を持つこと、明るく一生懸命に生きることを教えてくれました。これらの、「夢を持ち、明るく生きていくこと」は、例え先進国の人間でも、たとえそれが学生だろうと、大の大人だろうと当たり前には出来ないこと。それらを出来る彼らを心から尊敬したし、彼らは絶対にこの先も大人になっても、歳をとって寿命尽きるまで絶対に幸せになるんだ、と思いました。彼らが思っていることは誰がどう言おうと絶対叶うし、私は彼らのことをずっと応援していこうと改めて決意しました。

私自身を変えてくれた、多くのことを学ばせてくれたベトナム、孤児院の子供たち、現地で出会ったボランティアメンバー、現地のスタッフの肩を含め全ての人に感謝です。また機会があれば絶対に施設を訪れ、こどもたちの成長を現地のスタッフの方と一緒に見守っていけたらいいなと考えています。

旅メモ

使ったお金の総額

往復航空券 : Viet jet air (LCC) / 4万2千円(関西空港〜ホーチミン直通)
現地で使用した金額:15000円(25000円換金しました)
総額:プログラム料金 (約10万)、生活用品(日焼け止め、化粧品など)などを含み17万くらい

ベトナムの物価は日本の1/200なのでとても安い分、観光やお土産にお金をかけず楽しむことができます。心配でしたらvisaがついたクレジットカードを持って行くか、海外用の銀行口座などを作るのもいいと思います。町の中に換金所がたくさんありますので、現金で多めに持っていって、足りなくなったら現地でベトナムドンに換金するのもオススメです。


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