SPITZ 15th album『醒めない』リリース特集  vol. 3

Review

3人の音楽ライターによる醒めることないアルバムレビュー vol.3 SPITZ 15th album『醒めない』リリース特集

3人の音楽ライターによる醒めることないアルバムレビュー vol.3  SPITZ 15th album『醒めない』リリース特集

アルバム・タイトルであり、1曲目のタイトルでもある「醒めない」。これがもうすべてを表している。本当にスピッツだなあ、というか。つくづくスピッツだ、というか。なんてスピッツなんだ、というか。
 ♪まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が 最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる♪という一節を聴くと、最初にロックに出会った時の衝撃が今でも醒めない、ということをテーマにしている曲だと捉えることもできるが、それがロックであろうがなかろうが、そもそも「醒めない」ということは、スピッツにおいてきわめて重要なテーマだ。
「夢から醒めない」でも「妄想から醒めない」でも、合わせて「夢想から醒めない」でもいいが、とにかく、「いつか醒める」「やがて現実に戻る」ことを前提にしない。現実をそういう妄想とか夢想とかの上位概念に置かない。夢は夢、現実は現実、というふうに分けない。「アタマん中のもの」と「アタマん外のもの」を区別しない。それでいいのか。いい。なんで。音楽だから。ということだ。

という姿勢が正しいのかそうでないのかは、デビューして数年間(つまりブレイクするまで)は微妙だった。が、その自分の「アタマん中のもの」はあくまでそのままで、それを感覚的にパッと共有することが難しい聴き手でも入ってこれるフックになるようなメロディや言葉やアレンジを生めるようになった、『Crispy!』から『空の飛び方』にかけて。だからその次の「ロビンソン」と『ハチミツ』でブレイクした。
で、いったんその入口を作ってしまったあとは、作品によってそのフックがあったりなかったり、強くなったり弱くなったりしながら進んできたのがスピッツである──。

というとちょっと雑に決めつけすぎだが、でもそのような観点で聴くと、ニューアルバム『醒めない』は、ヘタするとブレイク前のファースト・アルバム『スピッツ』やセカンド・アルバム『名前をつけてやる』の頃と同じくらい、「フックとか知りません」「みんな入ってこれるはずです、俺がこう感じてるんだから」という無防備さ、あるいは傲慢さに満ちている気がする(そういえば「ナサケモノ」には「君の名前 つけた人は すごくセンスがいい」というラインがある)。

基本的にやっていることは同じ、サウンドスタイルや歌詞の世界をガラッと変えることなくずっと続けている、でも飽きられないし飽きないところがすばらしい、というのは、スピッツに関して一貫して言われ続けてきたことだが、やはり時期によって多少の違いはある。で、その多少の違いの中でいうと、今作はそのように強気な作品であると感じる。

もちろん曲による違いもあって、たとえば前述の「醒めない」や「グリーン」や「こんにちは」あたりは、まだ共有されやすい部類で、「子グマ!子グマ!」や「コメット」や「SJ」や「ハチの針」や「モニャモニャ」や……要はそれ以外の曲はだいたい「アタマん中」どっぷりの曲だ、と言っていいと思う。
「子グマ!子グマ!」の♪仕事じゃなく 少しサイケな夜 バイバイ僕の分身♪とか、なんのことなんだかわけがわからないし。「モニャモニャ」の♪モニャモニャが一番の友達♪、♪モニャモニャは撫でるとあったかい♪に至っては、「大丈夫か、来年50になる男が」とか言いたくなるし。

で。ファンにとっては言うまでもないだろうが、まさにそこが、そここそが、このアルバムのすばらしさだと思う。というか、スピッツのすばらしさであり、もっといえば音楽というもののすばらしさである、とすら思う。

具体的でないもの、現実的でないものを、そのままの形で投げつけて、それが受け手に共有され愛されていく、そんなことを可能にするツールとしての音楽。理不尽や意味不明の洪水、それが「あり」になる音楽。
 それは音楽だけに限ったことではないかもしれない。絵画でも映画でも文学でも、つまりそもそもアートなら可能なことなのかもしれないが、いずれにせよ、なんにせよ、そういう音楽に触れた時の、心が一気に自由になる感覚。ほかでも得られないことはないんだろうけど、でもそれを最大・最速で食らわせてくれる存在。スピッツがそういうものであることなど、25年くらい前から知っているつもりだったが、改めてそんなことを考えたりする、このアルバムを聴いていると。

で、だからこそ自分は、『名前をつけてやる』のアドバンス・テープを聴いて、びっくりして、すぐ渋谷のWAVEまで行ってファースト・アルバムを買ったあの日から今日に至るまで、ずーーーーっとスピッツを好きなままなんだろうし、飽きないんだろうし、新しいアルバムを心待ちにしているんだろうと思う。

文 / 兵庫慎司


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リリース情報

New Album 『醒めない』

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【初回限定盤】(2 Disc)
■SHM-CD+Blu-ray:UPCH-7166 ¥5,537+税
■SHM-CD+DVD:UPCH-7167 ¥4,611+税
【期間限定盤の2大特典】
☆4月発売シングル「みなと」のミュージックビデオ+「醒めない」「ヒビスクス」ミュージックビデオ+撮影オフショットを収録した映像DISC付き
☆初回限定盤 オリジナルスリーブケースパッケージ仕様

【収録曲】
Disc-1(SHM-CD)

01.醒めない
02.みなと
03.子グマ!子グマ!
04.コメット
05.ナサケモノ
06.グリーン
07.SJ
08.ハチの針
09.モニャモニャ
10.ガラクタ
11.ヒビスクス
12.ブチ
13.雪風
14.こんにちは

Disc-2(Blu-ray, DVD)
・醒めない – Music Video-
・みなと –Music Video-
・ヒビスクス –Music Video-
・オフショットムービー in HAWAII

spitz_samenaiJK_nomal

【通常盤】(1 Disc)
■CD:UPCH-2086 ¥3,000+税

【収録曲】
Disc-1(CD)

01.醒めない
02.みなと
03.子グマ!子グマ!
04.コメット
05.ナサケモノ
06.グリーン
07.SJ
08.ハチの針
09.モニャモニャ
10.ガラクタ
11.ヒビスクス
12.ブチ
13.雪風
14.こんにちは

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【アナログ盤】(完全受注限定生産盤)
■LP:UPJH-9017/8 ¥3,685+税

※アナログ盤のみの毎回好評なジャケット封入漫画、今回はヤマザキマリ氏による描き下し漫画『テルマエ・スピッツ』!
※取扱いに関しましては店舗・オンラインショップによって異なります。各店でご確認ください。

ライブ情報

SPITZ JAMBOREE TOUR 2016 “醒 め な い”開催決定!
詳細はこちら・・・ http://spitz.r-s.co.jp/tour/2016/

SPITZ

草野マサムネ :1967年12月21日 福岡県 O型 ヴォーカル&ギター
三輪テツヤ :1967年5月17日 静岡県 B型 ギター
田村明浩 :1967年5月31日 静岡県 A型 ベースギター
﨑山龍男 :1967年10月25日 栃木県 B型 ドラムス
草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人 組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル「ヒバリのこころ」、アルバム「スピッツ」でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル「ロビンソン」、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。 そして今夏、15thアルバム『醒めない』を発売、全国ツアーも決定。
公式サイト:http://spitz.r-s.co.jp/

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