紅白出場の男が再び性犯罪
上着を被り顔が映らないように頭を抱えながら警察署を出ていく1人の男。
男は過去にNHKの紅白歌合戦にも出場し、人気バンドのメンバーだった二階堂直樹被告(41)。
二階堂被告は2020年9月、埼玉県朝霞市の路上で帰宅途中の20代女性に対して後ろから近づき、わいせつな行為をしようとしたが、女性が抵抗したことから逃走。その後、弁護士と警察署に自首した。
事件に関わった捜査幹部は「深夜の女性の一人歩きを狙った悪質な犯行で、決して偶発的に起きたものではない。過去の犯罪歴なども考慮し、任意捜査ではなく身柄を拘束する逮捕に踏み切った」と話している。
その後、さいたま地検は二階堂被告を「強制わいせつ未遂」の罪で起訴した。
過去に同様の性犯罪で10年以上服役
捜査関係者が語った過去の犯罪歴とは一体何なのか。
二階堂被告は「ヒステリックブルー」というバンド名でNHKの紅白歌合戦にも出場するなどしていたが2003年に活動を休止。その年の11月から翌年2月までの3カ月の間に、女子高校生を含む9人の女性らを襲った婦女暴行や強制わいせつ事件などを起こし逮捕され、2004年に東京地方裁判所から懲役14年の実刑判決を言い渡されていた。
当時の所属事務所は、「仕事に情熱を持っている真面目なタイプで、犯罪をおこすとは考えられない」とコメントしたが、二階堂被告は警察の調べに対して、「活動を休止してから何をしたらいいのか分からずイライラしてやった」と供述していた。
近隣住民「昔の写真見ても面影ない」
二階堂被告は10年以上の懲役刑を終え、出所後、内縁の妻の支えを受けながら生活をしていた。その2人の生活を見ていた近隣住民は次のように語った。
--二階堂被告はどんな感じの人だった?
「普通の人だった。過去の犯罪があるように見える人ではなかった。一緒に住んでいた女性がこの辺の子供の髪の毛を切ってあげていた。2人でこの地域に溶け込もうとしている感じだった。(二階堂被告は)屋根を修理するのが仕事と言っていた。近所の人にも屋根が壊れていたら直してあげるよと言っていた。いつも2人で行動していて優しい人だった」
--昔バンドをやっているイメージはあった?
「今の見た感じは昔のバンドをやっていた当時の雰囲気とは全く変わっている。昔の写真を見ても面影がない」
再び性衝動を抑えることができず
自らを支えてくれる内縁の妻と一緒に、日常を手に入れていたはずの二階堂被告は、なぜ再び性犯罪をおこしてしまったのか。
あすなろ法律事務所の國田武二郎弁護士は次のように説明する。
「二階堂被告は、今回の事件を起こした後、自らの意思で自首していることから規範意識は少なからずあったと言える。これは刑務所の中で行われた更生教育の成果があったと言える。しかし頭の中に規範意識があるのに、今回のように性衝動が出てきてしまった場合、抑える事ができておらず、これは病的な面があると言わざるを得ない。
また二階堂被告には行動を共にするパートナーがいたにも関わらず、別の見知らぬ女性に対して性的な快楽を求めるというのは、残念ながら更生プログラムが抜本的な治療にならなかったと言わざるを得ない。諸外国では犯罪者にGPSを付けることもあるが、今の日本ではそういったことはできない。このため、今回再犯を起こしてしまったが、それでも現時点で出来ることは再度、更生プログラムをおこなっていくしか方法はない」
服役中に「未来の被害者」へ償いの言葉
二階堂被告は刑務所に服役中、「創 2016年8月号」に手記を掲載している。その手記では、自分の起こした性犯罪に対して次のように語っている。
「逮捕から12年、受刑者としてはちょうど10年の節目を迎える。償いとは何か。被害者の方々に罪を償うにはどうすればよいのか。それをずっと考えてきた。いや、ちょっと待てよ。その問いの背景には、何らかの方法によって償うことができるとの前提が隠れているのではないか。「償える」と思うことが被害者の苦しみを過小評価した加害者側の傲慢さの表れではないのか。
そもそも、加害者(しかも性犯罪)が被害者に対し償うこと自体可能なのか。答えは否である。たとえ死んでお詫びしたところで被害者の傷が癒えるわけでもない。ならば私は償うことさえ叶わない大きな罪を犯したのだという自覚を持ち、一生それを背負って生き続けなければならないのだ。懲役刑に服するということはあくまで社会治安を乱したことに対する国家への償いでしかなく、むしろ服役を終え自由を手にした後こそが真の償いの始まりである。
自分の被害者に対して償えないのであれば誰に対して償うのか。まずは「未来の被害者」なのだと思う。今はまだ被害に遭っていないが将来何らかの事件に巻き込まれるかも知れない存在。つまり私自身が再犯に至らないことを大前提として、その上でなお、新たな犯罪を防ぐことができないだろうか」
「罪を償ってちゃんとした生活がしたい」
2020年9月に自首し逮捕された二階堂被告は警察に対して、「これで終わりにしたい。罪を償ってちゃんとした生活がしたい」と供述した。
今後行われる二階堂被告の裁判。法廷で何を語るのか注目される。
執筆:フジテレビ報道局 埼玉県警担当 河村忠徳