住宅ローン減税

麻生政権が緊急経済対策の中で、住宅ローン減税というのをやろうとしている。これについてはいろいろな観点からの評価がありうるだろうが、ここでは以下の点を指摘しておきたい。

これは減税の分を政府が肩代わりする大規模な財政出動の一つであるが、そもそもこういうことをしなければならなくなったのは、例の耐震偽装騒動を受けて、立法者が建築規制を経済への視点をまったく欠いたまま乱暴に締め上げすぎ、行政運用の段取りも不備をきわめたため、建築・不動産市場が全崩壊といっていいほど異常に落ち込んだからである。あおりをくらったマンションデベロッパーも、老舗やせっかく創業して軌道にのった新興事業者もバタバタと潰れた。元をただせば「官製不況」といわれるような立法と行政の失政であり、制度変更の失敗で不景気になったのを大規模な財政出動で取り戻そうとしているのである。

私としては、政府にはなんとかこの逆をやって欲しいのである。法令一本で人をこれほど不況のどん底に突き落とすことができるなら、逆に法令一本で事業意欲と需要を喚起し、景気を刺激することだってできるはずである。鉛筆で紙に書くだけでいいのであるから極端にいえば一円も要らない。政府にはそれだけの力があるのだ、政府にだけできることというのはそういうことなのだ、ということが、今回の住宅ローン減税に至る経緯で反面教師として逆に示されたと思う。今回のような金融パニックでは財政出動もやむをえないとしても、基本的には政府が金を出して景気を何とかしようというのは前回書いたように反則であり、愚策である。ましてや制度変更の失敗をどさくさ紛れに財政措置で取り戻そうなどというのは論外である。

同じく今回の緊急対策で予定されている金融機関への資本支援措置の中に、破綻しかけている新銀行東京への支援を紛れ込ませようとして政府は批判されている。政治がかき回して目茶苦茶にした後始末を国民の資金で埋め合わせようとしているという点では、住宅減税もそう変わらない。





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2008/12/18 | TrackBack(0) | 政治経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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