特別養子縁組で養親を希望する夫婦に「100万円を払えば優先的にあっせんする」などと申し向けて現金を受け取っていたなどとして、千葉県は27日、社会福祉法に基づき民間養子縁組あっせん事業者「一般社団法人・赤ちゃんの未来を救う会」(四街道市物井、伊勢田裕代表理事)に事業停止命令を出した。厚労省によると、民間養子縁組あっせん事業者に対する同命令は全国で初めてという。
児童福祉法では、営利目的の養子縁組あっせんを禁じている。
県児童家庭課によると、同会は6月に男児を出産した神奈川県内の母親(23)から養子縁組の同意を受け、母親の承諾を得ていると思った養親を希望していた東京都内の50代の夫婦が、同県内のクリニックから男児を引き取った。その後、母親は同会の不誠実な対応に不信感を抱き、自分で育てようと同意を撤回したが、男児はすでに夫婦宅にいたことが判明。県職員が夫婦宅を訪問、安全を確認し、7月2日に男児は母親に戻された。
同会は5月16日、県に事業開始を届け出たが、収支計画書や看護師・社会福祉士の勤務形態など書類が不足していたため、同課で5回にわたり提出を指示。男児が引き渡された後も文書による調査や事業実施場所の現地確認、同会の看護師の任意調査などを実施してきたが、8月8日に不十分な報告の一部が提出され、弁明書の提出も求めたが提出されなかったため、事業停止命令を発出した。
同法では、養親希望者から受け取ることができるのは「交通費、通信費等に要する実費またはそれ以下の額」としている。同課によると、同会は「100万円を払えば優先的にあっせんする」として夫婦から100万円を受け取り、母親が出産した直後に再び夫婦から125万円を受け取っていたという。
また、国の通知では、実親は原則として、養子縁組成立の審判が確定するまで、養子縁組の同意を撤回できるとされているが、同会は男児を夫婦に引き渡す時に、母親の意向を確認していない上、同意撤回を行ったにも関わらず男児を母親の下に帰さなかったとしている。
同課の聴取に対し伊勢田代表理事は「自分たちは社会の役に立つことをしている」などと説明。同課によると、県内で養子縁組あっせん事業者として届け出ているのは同会のみだが、伊勢田代表理事は廃業を検討する意向を示したという。