電車の乗車マナーでよく問題にされる多くのことがほとんど気にならないが、一つだけ不快なのが、この車内での飲食、特に酒を飲む客である。書いているだけで馬鹿みたいだが、都内の夕方から夜にかけての帰宅ラッシュの時間にはこういうとんでもない客がものすごくたくさんいて、むしろありふれた姿になってしまっている。
彼らはビールとつまみを買ってきてホームの待ち行列や車内で手を持ち替えながら立ったまま器用に飲み食いする(男性だけでなく女性もいる。電車に乗らない人は信じられないかもしれないが)。ラッシュ時の乗客が密集した車内でアルコールとスナック菓子の匂いを周りに撒き散らしながら同じことをやる者も少なくなく、何を考えているのか神経を疑う。子供や学生の乗車マナーの悪さが言われるが、塾帰りの子供もたくさん同乗している中、大人がこれでは示しがつかない。
情けないのは、彼らはなぜ家に帰るまでのわずかな時間を待てないのかということだ。そんな曲芸のようなことをするくらいなら家に帰って好きなだけ飲めばいいではないか。それとも家ではビール一本飲ませてもらえないのか。
さらに不快さを増しているのが、こういう客が多いことを前提に、ホームで缶ビールと携帯用のつまみを売っている鉄道会社の姿勢だ。この件でいちばん罪過があるのは本当は彼らである。売っているのは売れるからで、売店の貴重な収入源の一つなのだろう。が、明らかにそれらはその場で買って飲み食いする客を目当てにしたものであり、現にそうなっている。店に行って飲むならなおさらそれらは不要である。自分で原因を作り出して奨励しておいて、片方でやめてくれというのでは話にならない。人に店に行って飲めというくらいなら自分たちが先にすべきことがあるだろう。