「地震酔い」の簡単な緩和法

震災以降、東日本の全域でいまも余震が続き、いわゆる「地震酔い」の状態を多くの人が経験している。これについて人から即効性のある対処法なるものを教えてもらった。特に費用や手間もかからない簡単なやり方で、実際に試した人に聞くと、この方法がいちばん効果が高かったそうである。

その方法とは、「目の届くところになにか揺れやすいものをぶら下げておいて、揺れているように感じたら、そのたびにいちいちそれを目で確認する」、というものである。ぶら下げるのは、自宅であれば風鈴程度のものか、あるいはなにか手近なもので自作してもいいし、職場であれば机の上や身の回りのどこかひっかかるところにキーホルダーなどをぶら下げておいてもよい。これだけである。

地震酔いは、舟釣りをした人が船から下りたときになる「下船酔い」と同じもので、絶え間ない余震の揺れで体の中の平衡感覚が狂ってしまって、揺れていなくてもいつも揺れているように感じてふらふらする症状のことであるが、この方法は、感覚の狂いを目からの視覚情報で打ち消して、補正を早める、というのがポイントである。そこからすれば、ぶらさげておくものは、ちょっとの揺れでも揺れやすい、感度の高いものの方が逆にいい。揺れの感度の高いものがまったく揺れていない、という視覚からの入力情報は、それだけ強く感覚の訂正に働きかける。

ネットの資料でみると、対策として、深呼吸するとか音楽を聴いたり体を軽く動かしてリラックスするというようなものが書いてあるが、いずれも間接的で受忍型の対処であり、それらに比べると、こちらは症状そのものに直接働きかけて解消しようとする、より積極的な方法である。気晴らしによってストレス源から身を遠ざけるというやり方も、それが可能であるなら一法であるが、地震はそういうものとは違う。逃げようとしても簡単に逃げられるものではないし、そういう中でそうせよと言われて無理にリラックスしようとすると、それができないことがストレスになってますます辛く感じる。地震酔いになるのは、一面においては、自分の生存を脅かす危険に対して、その予兆を細大漏らさずとらえようとわれわれの体の中の原始的、生理的な警戒感が高まり、感覚がそれだけ過敏になって、興奮状態が続いているからである。その神経の高ぶり自体は、危険から身を守ろうと欲するまったくもって健全かつ正常なものであるのだから、それに刃向かって無理に抑えつけるのではなくてむしろ積極的に協力・協働し、乱れたフィードバックがあれば手を添えてただしてやる、という構えの方が、かえって緊張にめりはりがついてストレスも小さくなる。

そういう意味では簡便ではあるが、理にかなった、よい方法だろう。




2011/04/29 | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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