収められているすべての曲が質が高く、埋め草に混ざっているような曲が一曲もない。評価の高い詞もハイレベルで、独特である。
自分の場合、CDを聞く時に、好きなように曲を並べ替えてしまうことがほとんどで、元の順序で聴くことはめったにないが、このアルバムはおとなしくそのままの曲順で聴いている。それだけ完成度が高く、ビーズの並べ方の中まで創意が含まれているということなのだろう。
タイトルのとおり「風」をテーマに、明るく透明な曲調の曲が続いていくのだが、にもかかわらず聴いているうちに深い悲しみの方向に感情がどんどん引っ張られていってそわそわし、落ち着かなくなる、そういう不思議さがある。
ちょうど原っぱに寝ころがって雲の流れる青空を眺めていると、いつのまにか天地がひっくり返って深い水の底を覗き込んでいるような気がしてきて思わず引き込まれそうに、落ちていってしまいそうになる、それに似た感覚である。
どちらかというとそういう次第で、聞き込むことで気持ちが青々と塞いでいき、心の奥が冷たく醒めるのに表面は痺れて眠り込む、そんなタイプの音楽だが、それだけ聞く側の感情を動かせるというのも、優れた作品のあかしということだろう。
彼女は抜擢されたエヴァンゲリオンの新劇場版でも、まるではじめからいるみたいに古株の面々に溶け込んで見事な演技をしていた。
このアルバムも名作だ。
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かぜよみ 坂本真綾 flying DOG |